ぽぴれあの大学入試数学解説ブログ

2014年度東大数学113点のぽぴれあちゃんが受験数学を解いてイキるためのブログです

東大数学2024 やってみた

今年も遂にこの季節がやってきた。
2日目が終わり、受験生を煽っても良くなったまあそろそろ好き勝手書いてもいいだろうということで好き勝手に書きます。

総合的に見て、2012よりは難しいが2014よりは簡単。2017並みとか言ってるエアプがなんかいたけどさすがにそこまで簡単ではない。

第1問

かかった時間:14分19秒

まずxy平面上のというワードを見落とし、P(X,Y,Z)とでも置いてしまうとこの世の終わり。
方針は内積を用いて存在条件を絞るというのは誰でも分かると思う。浮かばない人はさすがに勉強不足なので本番補正がどうとか言ってないで勉強してください。

条件は2つあるが、片方を引っ張り出すと例えばこういう式が出てくる。
もちろん分子に√を持ってきて2乗するのだが、ここでまず負の数が絡む不等式を2乗すると符号が変わってしまうという怖さがあるため、先に

まず両辺のマイナスを外して不等号の向きを変えてやり、正の数同士の比較とすることで事故を減らすのがケアレスミスを防ぐテクニックの1つだ。
そしてまあこれを2乗するのだが、2乗して不等号がそのまま同値性を保つ条件として y≧0 があることに気をつけなければならない。これを見落として、最終的な領域にy<0の部分が含まれている答案をTwitterで3個くらい観測した。家でのんびり解いてる大人ですらこの程度なのでまあ平均的受験生なんて結構間違えてるよ。

この罠にさえかからなければ簡単な問題。

第2問

かかった時間:12分19秒

1992年度東工大後期で見たぞこれw と思いきや分母が2乗だった。

(1)
tanαを求めさせる問題があり、具体値が求まるんだからπ/8かπ/12なのだろうというメタ読みをしたクレバーな方もいたかもしれない。

絶対値がついている関数は中身の正負で場合分けするのは大原則。当然、積分区間がxで分かれることになる。
あとは微分してやると∫1/(1+t^2)dtが残ってくるのだが、これの積分Arctanを知っているかどうかで見た瞬間分かるかそうでないかがハッキリ分かれてくる。
まあ、有名すぎるので知らないほうに問題があるといえばそうかもしれない。

(2)
半角公式使うとか、直角二等辺三角形書いて角の2等分定理を使うとかで適当に出してください。

(3)
f'(x)=0なるxがもう求まっているので、あとは端点と停留点の数値を計算し、比較をするのみ。
f(0)とf(1)はさすがに出せないと恥ずかしいので、問題はf(tanα)を正確に出せるかどうか。
あとf(0)=log2/2で、f(1)=π/4-log2/2になるのだが、ここでf(0)とf(1)の大小比較に与えられた0.69<log2<0.7を使うことになる。そう考えるとπの評価もしないといけないのだが、値が違いすぎるのでπ>3程度の評価でOK。どうしても不安なら適当に正六角形でも書いとけ。

引っかかりやすい罠があった第1問と違い特に詰まりそうなポイントが見当たらないし、計算も煩雑ではない (まあArctan知らないとめんどくさいけど) ためこの問題は間違えようがないので、正直大数評価Aでもおかしくないと思っている。

第3問

かかった時間:28分37秒

(1)
解けない人は日本語の勉強でもしておいてください

(2)
2つの点が同じ漸化式で表されるということで等しいことがいえる。確かにこの問題を解くためだけならそれでよい。
ただし力のある人ならば、(3)を見据えて少し実験してみるとnが奇数か偶数かで、行く可能性のある点が綺麗に4:4で分かれることに気付くはずだし、そうなるとnが偶数の時に辿り着くもう2つの点である点(-1,2)にいる確率と点(1,-2)にいる確率もそれぞれ等しいということがなんとなく予想がつくはずで、(3)にスムーズに繋げることができる。
(2)をホントに答えを出すだけで終わらせてしまうとこれらの情報を得るための思考作業がすべて(3)に取り組むタイミングに偏ってしまい、完答のハードルがむしろ上がってしまう。

最初から部分点狙いではなく完答を意識して、(3)を解くためにどのような情報が必要か? まで考えつつ状況を順次捉えていくことでスムーズに次に繋げることができる。
強者は目先の小問の解答のみにはこだわらないものなのだ。

(3)
とりあえずnが奇数の時に0なのは自明なので、nが偶数だけを考えればよく、また求める確率をP_nとしたとして、点(-1,2)にいる確率をQ_nとしたときに確率P_(n+2)とQ_(n+2)をP_nとQ_nで表せそうだということに行き着ければしめたもの。
結構大変だが、最終的に以下の連立漸化式に行き着く。


ただし注意しなければいけないのは、P_nやQ_nは同確率の2点のうちの片方だけの確率であるから普段と違いPn+Qn=1/2である。
また、n=0のときは初期位置の関係で(2,1)にいる確率と(-2,-1)にいる確率が全然等しくないため、初期条件としてはP_2=5/18とP_4=41/162を使わなければならないことに注意が必要だ。
なかなか罠が仕掛けられているため、連立漸化式を解くこと自体は容易ではあるものの、完答に至るのは少々厳しい。当たり前だが答えが出たらn=2、4で実験しよう。

第4問

かかった時間:21分32秒

計算するだけの問題で、そこまでダルくもない。第3問のほうがよっぽどダルい。

(1)
接点+単位法線ベクトル×半径=円の中心であることを利用し、

これを解けばよい。r(t)のほうが先に出るが、問題文よく見たら2乗しろと書いてあった。整式で揃えるためか。めんどくさいなw
なお、法線の傾きが√2/tではなく√2としてしまうミスはありがち。というか僕がミスったw 定義域外とはいえ簡単に検算できるt=0,4で予想と違う半径や中心が出たためおかしいということに気付いて事なきを得る。

(2)
要は円の中心と(3,a)のと距離が半径と一致する… すなわち(c(t)-3)^2+a^2=r(t)^2となるtの個数を求めよということであるため、定数分離して微分してグラフを描く問題だなということは分かるはず。
6次の項が消えて4次式となるため、微分して因数分解できればおk。僕は3t^3/2の微分を3t^2にしてて因数分解できずに「単調増加? いやさすがにおかしいだろ」となっていたw


第5問

かかった時間:11分31秒

回転体の断面積=(最も遠い点)^2-(最も近い点)^2なのは大常識で、ではそれらの点はどこであるのかを突き止めるため、辺AD、辺AB、辺BDのx=tにおける座標を求めればよい。

要はx=tによって
辺BAはt:1-tに内分されるから(t,1-t,0)
辺CAも同じで(t.0,1-t)。ただしこちらは1/2≦t≦1
辺BDは(0,1,0)と(1/2,0,1/2)を結んでいるため2t:1-2tに内分されるから(t、1-2t、t)となる。こちらは0≦t≦1/2。

つまり断面は



こうなる。
一番遠い点までの距離は自明に1-tだが、一番近い点は線分が縮んでいくと本当に垂線が線分と交わるかが怪しいところ。
実際、1-2t≦tとなるt≦1/3では最近点が端点の(1-2t、t)となる。

あとは積分するだけ。∫(1-t)^2dtはわざわざ展開せずに-(1-t)^3/3にしたほうが計算が楽です。

第6問

かかった時間:31分39秒

唯一難しい。

(1)
x(x^2+10x+20)と因数分解出来て、x=±1もしくはx^2+10x+20=±1が必要。ちなみにnは自然数ではなく整数なので、マイナスもあり。

f(1)=31、f(-1)=-11
そして、x^2+10x+20=-1の解x=-3,-7がともに-素数であるため、f(-3)=3、f(-7)=7となり、答えはn=1,-3,-7

(2)
これが結構難しい。個人的には10段階評価で難易度★9 (捨て問に片足突っ込んでる) 。

まず、解の候補は(1)で述べたように、x=±1もしくは、x^2+ax+b=±1の4つの解の全6個。しかし最大6個とはならず、どんなに多くても3個になるということを示せ、と。
(1)の解がちょうど3個なので誘導になっているのかもしれない…?

以下、思考時間20分&答案を書く時間7分で至った流れを列挙してみる。

まず、候補を絞りたい。x=±1のどちらもあり得ないことを示すのか? ((1)では片方が負になって不適だった) と思ったが、これは例えばf(x)=x^3+7x^2+3xとかで簡単に両方満たしてしまう。ここは同時に起きるらしい。ならばこの状況で2次方程式のほうが素数の整数解を持たないことを示す???? なんか無理そう。没。

次に2つの2次方程式x^2+ax+b=1とx^2+ax+b=-1の両方が素数解を持つことはないということを示すという方針に至るのに時間はかからなかった。
冷静に考えたら、この2つの方程式の解がすべて素数ならその時点で4つあるわけで、まずはここを潰すのが先決だったのだ。

さて。x^2+ax+b=1の解の1つをp、x^2+ax+b=-1の解の1つをqとおこう。当然、pとqは素数でないとf(x)が素数にならない。qのほうにマイナスが付くことに注意。

ということは次の連立方程式が成り立つはずだ。

お、これいけるんじゃないか?

とりあえず両辺足して0にしてみたがうまくいかず。そこで両辺引いてbを消してみたら…。

お、いいぞ。

pと-qが素数より、p-q≠0が明らかなのでこれで割ってやると

もう勝ち。左辺が明らかに整数であるため、p-qが±1、±2が必要であり、p-q≧4より矛盾するのだ。
ということで、2つの2次方程式がともに素数解を持つことは無いことが示された。


さて、これにて解の最大数は4となった。しかしここからが苦労した。何とかしてもう1つの可能性を潰さねばならない。ここまでの答案を書きながら考えるも、正直ここで10分くらい詰まってしまった。

4つの候補というのは±1と、2次方程式の2解である。ここで(1)の解がそういえば3つだったなということに気付き、これらの解を観察してみると!

f(1)=31 素数
f(-3)=3、f(-7)=7 2次方程式の2解。素数
f(-1)=-11 素数っぽいが負の数なのでアウト。

これだ!!!

そう。ここからわかることは以下である。
まず、1つが合成数になるので矛盾という方針で行くことはできない。何故なら(1)での例は素数ではないが、マイナス素数ではあるためここに反例が生じてしまっているからだ。
では何故(1)の例では4つ目の解が潰れているのだろう? それは当然この数値が負であるからだ。つまり少なくとも1つ負の数があることを示すというのが目指すべき方向性であるということを(1)は教えてくれている。やはり(1)は誘導であったのだ。

ならば示すべき命題は以下だ。

2次方程式が2つの同符号の解を持つ⇒f(1)とf(-1)のどちらかが負になる

これを言うことができれば解の候補が必然的に1個消滅し、最大数が3となり証明が完了する!

正直、ここに気付いたときの脳汁の出方が半端なかった。この瞬間のために我々は受験数学を解いていると言っても過言ではない。

方針が定まったところで証明していこう。

まず、x^2+ax+b=1の場合を考えよう。2解を素数p、qとするとこれらは素数で、解と係数の関係よりp+q=-a、pq=b-1となる。つまりaは負の数であり、bは正の数である。
しかしf(-1)=-1+a-b<0が明らかなので矛盾する…。

続いてx^2+ax+b=-1の場合。このとき2解は-p、-qとおけてp+q=a、pq=b+1である。
この場合はf(-1)=-1+a-b=p+q-pq=p(1-q)+q≦2(1-q)+q=2-q≦0となる。
負の数ではなく≦0という結果になり、当初の命題とは多少ズレてしまったが、いずれにせよf(-1)は正の素数にはなりえない。

以上より、2次方程式素数解を2つ持つとき、f(-1)が潰れるため解の最大数は3となる……。


正直かなり難しかった。しかしその分解けた時の達成感がひとしおである。

ところで他の解答を見てみたら、ぼくの方針は駿台と同じであった。各予備校で方針が割れていたのが面白い。

それよりも河合塾様が放物線が4格子点を通らないという条件に書き換えることで秒殺できるという別解を紹介していた。やはりプロは格が違う。ぼくはまだこの域には行けていない。いつか行ける日は来るのだろうか…。

個人的難易度は
1 ★3
2 (1) ★3 (2) ★1 (3) ★3
3 (1) ★1 (2) ★3 (3) ★6
4 (1) ★4 (2) ★5
5 ★5
6 (1) ★3 (2) ★9