ぽぴれあの大学入試数学解説ブログ

2014年度東大数学113点のぽぴれあちゃんが受験数学を解いてイキるためのブログです

定数分離は1次式を残したほうがいい場合がある 【1997年度東大数学 第2問】

文字定数を含む方程式の解の個数を調べるために、定数分離というテクニックを使うことがある。最近だとまさに東大2024の第4問(2)で定数分離を用いる典型的な問題が出た。

(方程式)=aの形にしたあと、y=(方程式) と y=aのグラフを描き、共有点の個数が解の個数になるということでグラフさえ描ければ楽勝で解の個数を求めることができるという強いテクニックだ。

さて、そんな強力な定数分離だが、実は定数を分離しきらなくてもいい場合というのがある。それはどういう場合だろうか?

今回は1997年度東大数学第2問がおあつらえ向きだったので簡単に説明してみる。

この問題は、2次関数という分野で最強の難易度を誇る問題として有名だ。
2次関数として処理するならD<0で1/(2n+1)<a<2n+1という十分条件を出したあと、a≧2n+1が条件を満たさないことと、0<a≦1/(2n+1)が条件を満たすことを別途考えなければならない。 (a>0が必要なのはm=0代入で割とすぐ分かる)

しかし、見方を変えてこの問題を定数分離を用いて解くと比較的簡単に解ける。

こうするのだ。

不等式から分かる通り、整数のmについて、この放物線が直線より上にあればよいということになる。そしていつもは定数aに応じて直線が上下に動いていくのだが、今回はaに応じて直線の傾きが変わるのだ。
まずy<0の部分は-1<m<0であるためここで交わろうが関係なく、またa≦0だとm=-1で不等式が満たされないことが自明であるためa>0が必要で、このあと直線の傾きを0から増やしていく際に放物線に接するまでずっと条件が満たされるということがわかる (そもそも交わらないため) 。

では放物線に接するaとは何だろうか? 判別式D=0を解くとa=1/(2n+1)、2n+1と出てくるが、1/(2n+1)のほうはy<0で接する場合であるため、関係なく、a=2n+1のときに接するためこれより傾くと直線が放物線の上側に来る時が訪れてしまうということになる。
そして、a=2n+1のときの接点は(n、n^2+n)であることに気付くと、a≧2n+1の場合はm=nで条件を満たさず不適であることがすぐわかる。

よって、答えは0<a<2n+1と出た。

実はやっていることは2次関数の問題として考えた時と一緒で、あくまで今回はそれをグラフで視覚的に捉えたにすぎない。ただし、式だけで処理したときに0<a<1/(2n+1)のときは-1<m<0の範囲でしか不等式が崩れないため適するという本問最大のポイントの分かりやすさに天地の差がある。やはりグラフは強い。

さて、もう気付いたと思うが今回定数を分離しきっていない。やろうと思えばこうすることもできた。


定数は分離せよという掟(?)に忠実に則るとこうなる。だがこうすると解くことは非常に困難になることはなんとなくわかるかと思う。何故ならこれは難しい微分をしないと書けないからだ。
そもそも定数分離をする動機は何かというと、曲線が動くと交点が分かりづらすぎるからである。なのでいつもはy=aという超分かりやすい直線にしてから動かすのだ。
しかしy=(1次式)×aもまた直線なのだ。これは定点を通りつつ傾きが変わることになるので接する条件を考えなければならないという面倒さはあるが、様子を追うこと自体は容易なので、相方の方程式部分の形によってはこちらを採用したほうが楽ということが往々にしてある。

そしてこの「定数を分離しきらず、1次式部分を残したままグラフを描く」というパターンは文系はみんな気付くが、理系は気付かない人も多い。何故なら文系はそもそも微分ができないのでこうするしか解く方法が無いのだが、理系はあらゆるグラフを微分で描けてしまうから最悪それで押し切ってしまえるためである。

今回はグラフがキモすぎるのでさすがにみんな気付くだろうが、たとえば
x^2-2ax+2a+3=0
というのを
x^2+3=2(x-1)a
ではなく
(x^2+3)/(2x-2)=a
にして微分してグラフ描く人は大勢いる。まあこれくらいなら別にそれでもいいんだけど。

ここから得られる教訓に以下がある。

使える手法が増えると以前に学んだことを忘れてしまう事態に陥りがちである

皆さんは中学受験の算数の問題を解くときに、三角関数やベクトルに頼ろうとして逆に解法が分からないという経験はないだろうか? これも武器を増やした結果、幼い頃に学んだ考え方を忘れてしまったということだ。
もちろんそれを克服するのは簡単ではなく、時間の限られた高校生に要求するのは無理筋かもしれない。しかし機械的な処理に疑問を抱き一歩立ち止まって考えることができるようになれば、またひとつ強くなれるのかもしれない。知らんけど。