ぽぴれあの大学入試数学解説ブログ

2014年度東大数学113点のぽぴれあちゃんが受験数学を解いてイキるためのブログです

【検証】京大整数はmod3でどれだけ解けるのか?

京大数学の整数問題はmod3で解ける。

大受験生で知らない人は相当な情弱と言っていいレベルに浸透している京大数学攻略法の一つです。京大は論証を重視するため初等幾何や整数問題などの論証重視の題材を好みますが、京大の整数問題はマジでmod3を考えれば一瞬で片付くため、世の「高校数学において整数分野は難しい」という風潮に反して京都大学の整数問題は30点がタダ取りできるボーナス問題と言われていたりもします。

でも実際受験生の方々はこういう不安があるのではないでしょうか。
ホントにそんなにmod3で全部解けるんか???
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case1 2022年度理系第3問


2024年現在、最新の京都大学の整数問題です。京都大学らしいシンプルな1行問題です。もちろん京都大学なのでmod3を疑います。
事実、nが3の倍数でない場合は偶数乗すると1と合同となるため、+2すると3の倍数になります。というわけで最大公約数は3なのでは? という予想が立ちます。
しかし簡単なnについてこの予想はさっそく打ち砕かれます。n=2のとき3つの数はそれぞれ6、18、66となりこれらの最大公約数は6なのです。
もう1度3つの数を観察してみると、nの偶奇によって全て奇数or全て偶数が違ってくることが容易に分かります。何故そう感じるのかというと、定数項が+2であるからです。

(参考)

popirea-vol2.hatenablog.com


ということでmod2も重要になってきそうです。
mod3とmod2が重要ということで最終的に6で割った余りで分類するのが良いのではないか? という結論が得られます。

事実、n^4+2=(n^2+2)(n^2-2)+6であることから、最大公約数は6の約数に限られることがわかります。あとは3で割れるか2で割れるかを分類してやればよいのです。

さすが対策が進んだ現代においてはmod3だけではなく一ひねり加えているようです。
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case2 2021年度理系第6問(1)


どうやらmod3の出る幕はなさそうです。
そのまま考えると何すりゃいいかわからなさすぎるので、対偶命題「nが合成数⇒3^n-2^nが合成数」を考えましょう。これはn=pqと置けたとして、3^pq-2^pqが3^p-2^pで括れそう (というか括れなかったらもはやどうすればいいのかわからない) という決め打ちをもとに話を進めていきます。
実際


因数分解できるため、p>1から各項は2以上なので素数ではありません。
考えづらい人は、3^p=A、2^p=Bとでもおいて、A^n-B^nと考えてやればA-Bで括れるのがすぐわかるかと思います。

結局mod3の出る幕はありませんでした。
これで1勝1敗です (何が) 。
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case3 2021年度文系第5問

2021年度はこちらにmod3がありました。もうあまりにもmod3すぎて目の肥えた京大受験生なら問題文を読み終わる前に証明できます。具体的にはpが3の倍数でないならばp^4が3で割って1余るので、3で割って2余る数である14を加えると3で割れるようになるということです。p=3は別途考えて終わりです。

2勝1敗。
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case4 2020年度理系第4問


これまでの約12倍という圧倒的文章量により問題文を読むだけで多大な労力を要するので捨て問に見えます。京都大学の数学は見開き1ページですべての問題を収めることが法律により義務付けられていますが、2020年度はそれに違反したため入試問題として不適切な難易度であると批判されたことは一部界隈で有名です。

問題文の言っている意味がよくわかりませんが、要するに「m^3+n^2+n+3は3で最大何回割り切れるか」と言っております。
最大値を問われているので、とりあえず1回じゃなさそうで、2回となる場合をまず考えてみます。ということは9で割り切れるということなのでmod9を考えてやると、m^3部分は0、±1としか合同になりません。ところが後ろにくっついているn^2+n+3は±1と合同になり得ず、またnが3の倍数でないという条件付きだと9で割って2余る場合にのみ9で割り切れるため、「mが3の倍数かつ、nが9で割って2余る数」であるときにのみf(m,n)が9で割り切れることがわかります。これはだいぶ絞れました。

次に3回となる場合、mod27を考えましょう。当たり前ですが27で割り切れるにはまず9で割り切れないと話にならないので先ほど求めたm,nに関する条件は生きています。
mが3の倍数なのでもうそこは27で割り切れるでよくて、後ろにくっついている部分を考えます。もうnは2と11と20と29しかないのですぐ調べ終わりますが、n=11の場合のみ27で割り切れます。

どんどん行きます。n=11のときに後ろの部分は81で割って54余ります。ということはm^3部分が81で割って27余ればよいのですが、そのようなmは3、12、21、30の4つのみ。ちなみに調べ方はm=3m'として27m'^3=81n+27なのでm'^3=3n+1となるにはm'≡1 (mod3) とすればよろしい。

次、243。n=11のときに後ろは135余る。というわけでm^3を243で割って108余る。
27m'^3=243n+108
m'^3=9n+4
m'=1,4,7,10を代入して遂にどれを代入しても満たさなくなりました。ここで打ち止めです。

というわけで最大値は4で (81ではない) 、(m,n)=(3,11)、(12,11)、(21,11)、(30,11)

難しいですが、mod3を活用したのは事実です。これで3勝1敗。
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case5 2020年度文系第3問

16で割ると書いてあるのでmod3だとダメそうです。恐らくこれはパターン暗記だけで数学に取り組もうとしている我々に対する京都大学からの警鐘でしょう。

このままだとよくわからないのでf(m,n)=(m+1)n^2+am^2+8とでも変形してやりましょう。aが奇数とあるため、mが奇数だとam^2が奇数、(m+1)n^2が偶数となりアウト。mが偶数であることが必要です。同様にnが奇数だと全体が奇数になるのでnも偶数であることが必要。
続いて、mやnが4の倍数であるならば2乗したら16の倍数になるということ&4の倍数でないならば2乗したら16で割って4余る数になるということに気付く必要があります。何が言いたいかというとm^2、n^2の係数である(m+1)やaは奇数であることを踏まえると、mod16で4+4+8の形にならないと16で割り切れなくなるため、mとnは両方4の倍数でないことが必要である。
そこでm=4m'+2、n=4n'+2とでもして実際に計算し、16で括ってやると

となるのでaが4で割って3余る数なら16で割り切れるらしい。

3勝2敗。
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case6 2019年度理系第2問

定数項が2なのでこちらはmod3ではなくmod2 (偶奇) に注目するのが第一感です。今回はmod3でないため当然この問題は捨て問レベルの超難問です。大数評価Bらしいですが、そんなはずはありません。

連続2整数を代入するとどちらかが偶数になりますから、素数という条件からf(x)=±2を解いてx=0,-2。これの周囲であるx=-3,-2,-1,0,1を調べ上げましょう。驚くべきことに全部素数となるのでn=-3,-2,-1,0の全部が答えです。

3勝3敗。
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case7 2018年度理系第2問、文系第3問

方針立てにかける時間は問題を一瞥する0.5秒で十分でしょう。
n^3-7n+9=3を解いてn=1,2,-3。
この年度は他の問題がなかなか難易度が高いものの、実質150分で5問を解く回であり時間の余裕があるため、落ち着いて取り組むことができたのではないかと予想されます。

4勝3敗
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case8 2016年度理系第2問

p,qが奇数だと全体が偶数になるので少なくとも一方が2であることが必要で、とりあえずp=2とすると2^q+q^2となりmod3を考えると以下略。ちなみに57は素数であるため(p,q)=(2,5)、(5,2)で得られるこれも正解になるはずですが、そう書いた受験生が軒並み自己採点より30点低かったらしいです。これにより京都大学に問い合わせが殺到したことは有名ですが、未だに大学当局からの公式声明はありません。

5勝3敗
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case9 2014年度第5問

もう出てくる数字が3の累乗しかないので仮に(出典:京都大学)の表示がなくともmod3の活用を思いつけそうです。
a,bが3で割り切れないという条件が無ければ243=3^3+6^3が割とすぐに思いついて、あとはそれ以下の数値を全部しらみ潰せば最小性が示せてしまって問題にならないのでバランス調整のために条件がついています。ほんとか?

a^3+b^3=(a+b)(a^2-ab+b^2)としてやると、a^2-ab+b^2が9の倍数にならないのでa+bが27の倍数であることが必要で、最小をきかれてるのでとりあえずa+b=27を考えたらど真ん中の14,13のときに最小値365が出ます。

しかし使ったのはmod9であってmod3ではなかったため敗北です。
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実はもっと遡ると「nとn^2+2がともに素数になるのはn=3に限るのを示せ」とかの簡単すぎるmod3問題が結構出てくるのですが、そろそろ飽きてきたので10年分遡ったところで終わりにします。

最終的に9問中、mod3を活用する問題が5問でした。5割強の問題がmod3で解けましたが、当然一発勝負の大学入試において5割強程度の確率に全てを委ねるのは非常に危険であるため、mod3以外の手法も積極的に学んでいかなければならなさそうです。まずはmod2を使いこなせるようになろう!