ぽぴれあの大学入試数学解説ブログ

2014年度東大数学113点のぽぴれあちゃんが受験数学を解いてイキるためのブログです

東大入試の数学立ち回り方 サンプルn=1

数学の試験はめちゃくちゃ点数が安定しないとよく言われ、上振れをお祈りするのではなく、下振れを回避すること (or 下振れても合格できる点を確保すること) が重要だとよく言われます。
そのため数学を武器にすることは避けるべきだといわれますが、一定以上の実力があれば数学でアドバンテージを安定して取ること自体は可能です。ただし、アドバンテージの度合いや点数そのものが安定するとは言ってません。
どういうことかというと、例えば難化したらそりゃ僕だって点数は下がります。ただしその場合ふつうはほかのみんなも下がるので、差をつけることには成功しているわけです。ここがほかの教科と異なる数学特有の現象で、いまいち認識しづらいところ。

それでは、安定して差をつけるためにはどのようにすればいいのだろうか?


まずやってはいけないことを列挙してみよう。

・目標点数を厳密に決める
・東大数学は1問25分という計画を立てる
・最高の出来を安定させようとする

1つずつ見ていきましょう。

①目標点数を厳密に決める。
目標点数を決めるのは当たり前だろという反論があると思います。そりゃそうです。僕だって受験生当時は最低90点を目標にしてましたし、あわよくば120点が取れれば最高だとも思ってました。

しかし、特に東大入試の数学は年度によって難易度差が激しすぎます。極端な例でいうと、2023年度の数学で70点取れたらめちゃくちゃアドですが、2017年度で70点だとむしろビハインドです。つまり問題の難易度によってとるべき点数は変わるということです。
例えば目標点数60点の人がいたとして、劇的に難化して60点が取れなさそうな回や、逆に簡単すぎて60点だとビハインドになるような回を引いてしまった場合、目標点数に拘りすぎると本来取れていた点数が取れなくなってしまいます。
というわけで事前に立てる目標はあくまで目安で、真の目標点数は試験中に定めるのが安定化のコツその1です。これは点数そのものの安定化ではない。ボリューム層との「点差」の安定化です。

②1問25分という計画を立てる
正直そもそも1問25分とか言ってるやつがエアプ甚だしいです。大真面目にこんなこと言ってるアホがいたらもうその人に東大対策なんて聞かないほうがいいと僕は本気で思います。
まず問題演習で数学でアドをとるためにいわゆるC上位やD問題を25分で解こうとする人がたまにいるのですが、あんなの25分で解けるわけないです。例えばBBCCCDみたいなセットで6完する人がいるとして、1問ごとにかける時間は15-15-25-25-30-40とかです。当たり前ですが難しい問題にはそれなりの時間がかかるわけです。

いや6完するような人間は外れ値だろといわれそうなので、では2完くらいの人のことを考えると、これは2問解けばいいんだから、1問45分くらいかけてよくて残り60分でほかの取れそうな小問をかき集めていくという感じになりますよね。そもそも解かない問題がある人間のほうが多いのですから、25分で終わらせようという前提そのものがおかしいわけです。
英語や理科は分量が多かろうがなんだろうが、捨て問というのはあまり発生せず、とりあえず解答欄を埋めることはすることが多いですが、数学というのは手を付けてはいけない問題というのがあって、解かない問題があることが前提ですから単純な割り算で時間配分が決まるということにはならないのです。

③最高の出来を安定させようとする
もちろん最高の出来とは私にとっては6完です。しかし僕は5完は実力、6完は運ということを常に念頭に入れていました。6完は上振れで取るものなのです。
これは1問あたりにかけられる時間を考えてみればわかります。さっきはそういう単純化はよくないと言ったばかりですが、これは今から述べる事実がぼやけてしまうからという危険性も込みです。

例年易しめの問題が2問あるとして、40分で2完できる人がここから6完するには1問あたり何分かけられるだろう。
10分は見直しに使うとして、100分を4で割り、1問あたり平均25分ですね。
では40分2完から5完するには?
100分を3で割り、1問あたり平均33分です。

なんと! 1問にかけられる時間が平均して8分も違うのです! しかも残り4問の中にも難易度の傾斜があるでしょうから、5完狙いと6完狙いとで、以降1問あたりにかけられる時間の差はどんどん広がっていきます!
例えばその後100分で4問解き終わったとしたら、6完したいなら40分で2問という無理ゲーですが、5完なら1問を40分かけてのんびり取り組めばよく、幾分か心の余裕が出てきます。試験が終盤に近付くにつれ、「最終的に何完を目指すのか」によるその後の時間計画が著しく違うことがわかるでしょう。

これが先ほど②で挙げたような単純な割り算勘定で見積もってしまうと、6完は1問25分、5完は1問30分という計画になり、そんなに大差なのか…? という印象が先行してしまい、正しい判断ができなくなってしまいます。


以上のことから導いた、僕が東大数学の出来を安定させるための必勝戦法がこちらです。

60分経過時点での出来×2=目標点数 とする!

これが本質です。本当にこれだけで秋模試以降点数も順位も急激に安定しました。高3の10月以降も150分6問を解くタイプのテストを20回くらいは受けてきましたが、90点を切ったのは1回あったかどうかだった気がします。その中でも大きなイベントである冠模試は102,90,115で本試は113でした。

つまり、まず何も考えずに60分間取り組んでみる。そしてその時点での出来が

3完以上なら → 6完を目標に取り組み
2完半なら → 5完を目標に取り組み、1問は捨てる。欲は出さない。
2完なら → 4完を目標にし、崩れないことを最優先。60分2完の時点でもう負け。挽回は狙わない。

と目標を定め、後半の90分に取り組むのです。
もちろん、60分時点で2完でも、その後順調に問題を解くことができ、110分時点4完になったということも考えられます。そしたらまたその時に「残り40分だからもう1完狙えるか…」と計画を上向きに修正するのみです。
60分時点で最低ラインを定め、それを下回らないことを最優先にし、以降の目標修正は順調に行った場合の上向きの修正のみ。

これを意識すれば、僕は5完が安定しました。
なぜ60分経過時点なのかというと、とりあえず問題を見ないことには難易度感がわからず、60分もたてば大体わかっているから。そして以降の得点計画により、1問にかけられる時間が大きく変化する節目のタイミングであるから。もう1つはまだ90分もありいくらでも調子の修正が効くタイミングで「何問捨てるか」を決意することによるメンタル安定化の処世術という面も大きいです。


……とか言って、これは僕の場合なので「そもそも60分で2完できねーよ!」という方もいるかもしれません。そういう人は自分なりにこの考え方をアレンジしてみてください。


さて、これを取り入れて最も重要な「2014年度本試験」でどのように立ち回ってみたかを (10年前なのでうろ覚えですが) 振り返ってみます。皆様のご参考になればと思います。

--開始--

まず1に取り組む。ちなみに僕は1から順番に解きます。基本どうせ全部やるので。
ただし走り出しで空間の三角形なのになぜか1/2・absinΘで求めようとしてしまい、5分くらい詰まる。ちょっと冷静さを欠いていると自覚があったので飛ばして2へ。

2に取り組む。aが含まれててめんどくさいが、(2)を出した時点で(3)が問題になってなさ過ぎて焦る。これは(2)間違えてる…?
ここで小テクニック「置き完」を使います。

---置き完とは---
何分か取り組めば完答できる問題をあえて途中のまま放置しておき、その問題を完答するために要する時間を予約しつつ気分を変えてほかの問題に取り組むテクニック。

今回(3)は簡単すぎて3分もあれば答案が書けます。ただし(2)が間違えていたら(3)も書き直しになるため、その場合(3)を書いた時間が無駄になります。
今回(3)が区分求積チックな形になっていたことに若干心が惑わされたのもあり、後々(2)を丁寧に見直すことにしたので、見直して間違いがないことを確認したあとに(3)を書けば済む話です。

というわけで2の見直しに10分かかることを想定し、2(3)を飛ばして3に入る (この時点で20分程度)

3に取り組み、3(2)までを解く。
3(3)は積分計算で面倒そうだ。これを解くのに(2)までの見直し含めて (式が間違ってると積分が合うわけないので、ここまでの見直しは必須) 15分程度かかるため、15分予約して4に移る。めんどくさい計算は後回しにして、頭がまだフレッシュなうちに他の問題を考える。

4。(1)からわからない。10分経過。あきらめて5へ。

5。(3)まで書き終わる。この時点で確か試験開始から55分くらいだと思う。(4)は鳩ノ巣論法っぽいというところまではわかったが、ちょっと頭がごちゃごちゃして整理がつかなくなったので、一旦頭の整理も兼ねて10分置いて6へ。

6。典型問題すぎて逆に焦る。これもしかしてみんな80点くらい取るセットなのでは…!? 2次方程式が出てきたところで場合分けがめんどくさいなと感じる。とはいえ20分かければいけそうだ。

ところで60分が経過した。なんと完答している問題が1問もなく、この時点で0完である。60分時点での出来×2に則ればめちゃくちゃ危機的状況だし、実際60分時点で0完なんて今まで1度もなかったので死ぬほど冷汗が出たが、ここで焦りを消して状況をよく整理してみた。

1:白紙
2:あと10分で完答可
3:あと15分で完答可
4:白紙
5:あと10分で完答可
6:あと20分で完答可

答案だけ見れば確かに0完である。しかしよく見るとあと55分あれば4完が確定しているのだ。ということは今の状況は実質115分4完で、35分余っている。その35分で何ができるか?
もちろん、1か4のうち解けなかったほうに取り組むことができる。少々変則的だが回は60分経過時点で「最終的に5完する」ということで計画が固まった。
最初1に取り組んだときは「とにかくスタートダッシュを切らないと」という焦りもあったのか思考が固定化されていたように思えたが、35分もかけていいというのなら冷静に取り組める。
答案用紙は全然埋まっていないのに、再び1番に取り組むときの自分に焦りは不思議となかった。落ち着いた精神が功を奏したのか、20秒で方針が浮かび、10分程度で答案が書き終わる。 最初の10分詰んだのはなんだったんだwと拍子抜けしてしまった。

さて、これで75分1完だが、実質5完である。正直今回よく考えたら発想がいるような問題がなさそうで、合格者平均点が80点くらいだと思って結構怖かったのだが、ここまでの出来が芳しくない以上もう4番は白紙でもいいと腹を括っていた。一気に不合格の可能性が高まってしまったが2日目の理科に賭けるのみだ。というわけであとは空いている穴を埋める作業だ。
途中何度か4番に寄って考えるも名案は思い付かず。1番があっさりすぎたおかげで時間が余りまくったので、この余った時間で4番…… ではなく論証不足で引かれそうなところをチェックして減点を徹底的に避ける方針にシフトした。

それでも最終的に15分余ったので、最後の望みを賭けて4番に最終チャレンジ。すると他の雑念がすべて消えたからなのか(1)の解き方をようやく閃き、累計30分程度かけてようやく4(1)を攻略。この時点で残り5分。

4(2)、4(3)は典型問題すぎて逆に方針自体は一瞬で立つので、あとは書ききれるかどうかの勝負。しかし5分で間に合うわけもなく、(2)を書き終わった時点で無情にもチャイムが鳴った。(3)でワンチャン1点くらい貰えないかなと「f(x)-x」と「中間値の定理」と殴り書きして数学の試験は終わった。

正直最初の躓きによるミスを広げることなく、さらにリカバリーするために全力を出し切ったので各問題最終的に何を書いたかまでは全く覚えていない。しかしふたを開けてみると113点と書いてあったので、どうやら非常に上手くやれたようだ。
本当に一歩間違えれば数学で爆死して負け組の烙印を押されていた未来もあったということを考えると、本当に東大数学特化の試験対策作戦を考えていてよかったと感じた。150分の試験とはいえ勝負は最初の60分で決まっている。
正直スタートダッシュが切れなかったのは戦略ミスもあったのかもしれない。しかし再序盤のミスはいくらでも巻き返しが効く。この時のためにその巻き返し方を考えていたことが勝因だったのかなと思う。

というわけで参考になるかどうか知りませんが、本番って想定外のことが起こりまくるから本当に怖いねってことで締めさせていただきます。