ぽぴれあの大学入試数学解説ブログ

2014年度東大数学113点のぽぴれあちゃんが受験数学を解いてイキるためのブログです

2014年度東大数学の問題を振り返ってみる

僕は2014年度東大受験なのだが、実は2014年度は問題がそんなに面白くないので受験数学マニアが東大数学について語る際に全くと言っていいほど話題に挙がらない。当時解いてて本当につまらないばかりか、僕は典型題みたいなのに結構弱いところがあるのでむしろワンチャン落ちるんじゃないかと焦っていたのを今でもうっすらとながら覚えている。
ただ、今思い返してみるとあの問題群は選抜試験として秀逸だったのではないか?と感じることがある。というのも、東大数学の問題を★1~★10までランク付けしたときに2014年度は★1~★8までの問題が満遍なく並んでいるからだ。満遍なくレベル別の問題があるため、ボリューム層の数学力差が点数に反映されやすい。そして最高でも★8レベルまでしか用意されていないため、いわゆる「捨て問」が存在せず、あらゆる受験生が各々の得意な問題に取り組むことで多様な数学力を測ることができる。東大は大抵1問くらいは捨て問レベルの問題が用意されていて、普通の受験生はそれ以外の問題で得点していくところなのだが、2014年度は珍しくそれがなかったのだ。

実際合格者の開示得点も下は20点から上は115点まで、本当に色々な得点の人がいて良く分布していたような気がする。少なくとも特定の範囲に団子になっているという印象は受けなかった。もしかすると2014年度の入試は数学で決まったと言えるのかもしれない。

ではどんな問題が出たのか? というのを暇なので振り返ってみます。

なお難易度は10段階評価で、
★1=共通テスト数学7割無いような人でも解けるようなレベル
★2=解けないと恥ずかしいレベル
★3=標準的な問題で、基本問題集の演習問題にありそうなレベル
★4=標準的な問題で、東大志望なら解けないとまずいレベル
★5=簡単ではないが難しくもない、いわゆる差がつく問題
★6=同じく差がつく問題だが、少し難しく勝負所の問題。
★7=取れなくてもいいが、頑張って取れればアドバンテージが取れるくらいの問題
★8=ここまで取れる人なら本番で100点超えを目指せるだろうレベル。
★9=半分捨て問。正直5完安定するような人でも安定して解けるか怪しい。
★10=捨て問。よっぽど時間が余ってない限り手つけちゃダメ

くらいのイメージ。


第1問 大数評価:B
個人的評価:(1)★3 (2)★3

第1問にして意外な伏兵。(1)は座標でも置いて、平行四辺形の面積をベクトルの√(絶対値)^2-(内積)^2で求めればよく、(2)は基本対称式の処理で簡単に解くことができる。
いかにも基本的な難易度で絶対に落とせないといったところ。
しかし、冷静になってみるとこういう形での出題は珍しい。例えば2012年度の第1問を見てみよう。

こういう問題を見た時に、「問題演習の時に何度も見たような、非常に典型的なものだな」という印象を受けると思う。実際この問題は結構簡単で落とせないし、方針にも迷いがない。というか方針を迷うようなら正直言って勉強不足である。

そう考えると2014年度の第1問は微妙に典型的な形を外してきているため、ワンチャンドツボにハマる可能性がある。つーか僕自身が実はドツボにハマって、最初の10分間解けなくて出鼻を挫かれたという思い出があるw OPとORの長さを出して「間のsinθは…!?」とかやってたw
60分後に戻ってきたらアッサリ解けたので気の迷いのようなものだったのだが、とりあえず初っ端から形式を少し外されるのは意外と怖いものだ。というわけで★2と言いたいところだが★3レベルだと考えている。

ちなみにこの問題は「四角形」と書いてあるので「平行四辺形であることを示さなければならないのでは?」という議論がたまにあるが、平面で切ったら平行な面の切り口が平行ってあまりに自明すぎるので正直証明しなくていい気がする。僕は証明書いてなかったけど開示見る限り減点された気がしない。


第2問 大数評価:B
個人的評価:(1)★1 (2)★4 (3)★2


(1)は★1レベルで、落としたら恥ずかしくて生きていけないレベル。(3)も(2)が出来たなら解けないとおかしいので、実質(2)だけの勝負であり、東大の確率の中では簡単なほう。
恐らくこれを落とす人はそういないのでどれだけ早く解けるかの勝負。文字aを扱うので式処理に慣れてないとかはあるかもしれないが…w

第3問 大数評価:C
個人的評価:(1)★1 (2)★2 (3)★6

(1)は解けなかったら本当に恥ずかしい。
(2)は★2か★3か微妙なレベルでこれも解けないとまずい。
やはり(3)だけが勝負で、単純定積分計算の中でもなかなか面倒な部類。この手の問題は答えを合わせないと意味がなく、これの答えの合う合わないは2014年度最大の勝負所だ。他の問題との兼ね合いも考えるとあまりにも重要度が高すぎるため絶対に合わさなければならない。緊張感も考えて難易度は★7レベルとしたいが、問題の難易度のみを公平に評価するなら★6だと思う。

第4問 大数評価:C
個人的評価:(1)★4 (2)★5 (3)★8

実は僕が本番で唯一完答できなかった大問で、そうだから言うわけではないが客観的に見ても2014年度再難問。
しかし理不尽な難易度ではなく、これを完答する人も数多くいただろうと思われる。
(1)は微分すると詰む。気付けば一瞬だがこれがなかなか気づかないw 僕はこれに30分かけた。
(2)は逆に典型でこっちのほうが楽だったかもしれない。
(3)はどう見ても中間値の定理を使うのだが、道中いろいろな発想が必要で、最典型の発想しか出てこないとどうにもうまくいかない。そもそも関数自体がキモいのと求積とかではなく抽象的なほうの数Ⅲで苦手な人も多かろうということで難易度はかなり高いと思う。


第5問 大数評価:C
個人的評価:(1)★3 (2)★1 (3)★5 (4)★7


実はこの時期は高校数学の学習指導要領に「整数」の分野がなく、みんなが当たり前のように使っている「mod」は知らないことになっている。(1)は合同式を知るものにとっては自明すぎてお話にならないのだが、modを使うと書くことがなさすぎて「証明すべきことを使っている」扱いで0点になるだろうと僕は考えている。
(2)はもはや書くだけで、解くとか解かないとかそれ以前の問題なので正直★0をつけてやりたい。
(3)はそう難しいことを問うているわけではないのだが、この手の問題特有の論証のしづらさがあり、案外「減点されない」答案を書くのは難しい。
(4)はいわゆる鳩ノ巣論法を使うのだが、高校で習わない発想なので、半分知識問題。正直言って知らない人にとっては★9レベルだと思う。
2023年度京大の大問6がチェビシェフ多項式と有理根定理の証明を知っているかどうかの知識問題と揶揄されており、あれは知っている人にとっては★6レベルだが知らない人にとっては★10レベルの超難問だ。
この問題もそこまでではないが、鳩ノ巣論法を知っている (=頭の引き出しに入っている) かどうかで難易度が大きく変わってしまう。使い慣れているなら正直★3~★4レベルだ。

第6問 大数評価:C
個人的評価:★6

通過領域の問題。いわゆる順像法のやり方を誘導で与えられているため、方針が浮かばないという事態になることはまずあり得ない。東大は例年、発想力が全くいらないが面倒で泥臭い作業を要求させてくる問題を出題してくるが、2014年度はこの問題がその枠である。
正直言ってあまりに典型問題すぎるため、2014年度の「発想が全く要らなくてつまらない」という風潮を加速させた主要因だと思っている。僕も試験中、この問題を見て心底がっかりした記憶がある。

とはいえここはさすが東大で、実際解いてみると直線ではなく線分なので変数に範囲が生じたり場合分けが生じたりとなかなか面倒くさいが、詰まるかと言われるとそうではないレベル。発想力という観点だと何も考えることは無いが、作業量が結構多いので総合的に見て★6レベルだと考えていいんじゃないだろうかと思う。


まとめると
1 (1)★3 (2)★3
2 (1)★1 (2)★4 (3)★2
3 (1)★1 (2)★2 (3)★6
4 (1)★4 (2)★5 (3)★8
5 (1)★3 (2)★1 (3)★5 (4)★7
6 ★6

というわけで★1~8が満遍なく並んでいて、こういうのが得点が分散していくよねって感じ。そして★6レベルまでなら何の障壁もなく解けるような人にとってはめちゃくちゃ簡単に思えるというのもなんとなくわかるんじゃないかなと思う。 (というのも★6枠がただの計算で発想力要素ゼロなのもあり…) 

なお、このレベル分布なら満点続出じゃないの? と思うかもしれないが、実は全然そんなことはなく、むしろ100点超えてる人のほうがかなり珍しかった。なんていうか無駄な小問が多くて1つの小問だけ難しいって大問が多いので、解き切った時の「点数稼いだ感」っていうのが薄くて心理的焦燥感が凄いんだよねコレ。大問1個丸々溶けたら20点稼いだ気になるが、これは1問難問を解いても7点くらいしか稼げた気がしない。そういう視点でこのセットを見てみると、問題自体の単純な難易度とはまた違った嫌らしさを感じないだろうか? 僕だけなのかなw

正直僕は記憶を消してもう一度このセットを解かされても、6完出来る気は全くしない。2022年度とかのほうがよっぽど出来る気がする。問題の相性ってのはあると思う。