ぽぴれあの大学入試数学解説ブログ

2014年度東大数学113点のぽぴれあちゃんが受験数学を解いてイキるためのブログです

東大数学 簡単な年度の問題を解いてみた① 1995年度

東大数学は難しい難しいと言われているが、10年に1回くらいの頻度で異常に簡単なときがある。
実は僕みたいな数学で稼ごうとしていた者にとっては難化するよりも易化するほうが恐ろしい。というのも簡単な問題はみんな解けるから差がつけられないばかりが、凡ミスをすると自分のほうが差をつけられてしまう。難しくなるとみんな解けなくなるが、俺だけは解けるのでむしろ差が広がっていくのだ。
僕は2014年度受験なわけだが、直前の2013年度が10年に1度レベルの鬼畜セットで「今年はさすがに易化するだろう」と言われていた。正直僕は「裏をかいてもっと難しくなって欲しい」と考えていた。僕は当時どんなセットが来ても80点は絶対に切らない自信があったため、平均が20点台クラスにまで難化してくれたらもはや合格したも同然だと思っていた。
蓋を開けてみると2014年度は発想力不要の淡々と作業するだけセットで、僕が最も苦手とするタイプのものだったためメタられたと感じながらなんとか9割取ったわけだが…。

そんなことはさておき、読者の皆様の中には「いやいや仮にも東大なんだから簡単になったとはいっても一般的には難しいんでしょ?」と思う人もいるのかもしれない。
というわけで本当にそうなのかというのを、過去30年間の東大数学で特に簡単と言われる1995年、2002年、2017年の3年分について軽く見ていこうかと思う。

というわけで1回目の今回は1995年度を見ていこう。
この年は東大数学で最も難しい時期と言われる1989~2001の中、何故か突如として出現した特異点で、恐らくこの年を受験した方々は誰もが面食らったであろう。

第1問

受験数学界隈で無限に擦られている超有名問題で、コーシー・シュワルツの不等式を適用すれば秒殺できることなどをはじめとした何通りもの解法が先駆者の方々によって編み出されている。

が、一番オーソドックスな解法であろう「同次式はy/x=tとおいて処理」として最大最小問題に帰着させても5分くらいで終わるので、本当に簡単な問題。正直コーシー・シュワルツを適用するための変形を思いつくほうが遅いまである。

略解。本当に簡単。
なおこの問題は文理共通で、文系は√の微分を習ってないので使わない縛りを導入するとちょっと難しくなる。√y/x=tとでもおいて、両辺2乗して根号を消してやり、2次不等式に帰着するのが王道か?

第2問

積分が絡んでいると見て一瞬ビビること必至かもしれないが、よく関数を見てみよう。なんとこのg(x)、実際に求めることができる。
なので分からなければ実際に求めて代入してやれば解けてしまう。

ちなみに普通はこうする。

問われている不等式は、凸不等式の形そのまんまなので、これでほぼ終わりです。
具体的には

1個目の矢印は半分自明。2個目の矢印はx=a1,a2を、a=(a1+a2)/2を代入していじれば示せる。
a1=x+y、a2=x-yを代入したものが題意の不等式です。

ただ今の基準で言うとそりゃ簡単だけど、当時は今ほど受験テクニックが広まっていたわけではないため、もしかしたら凸不等式の存在自体知らないという人も多いかと思います。
なのでg(x)を実際に求めちゃう方針でもやってみます。

これでも、y^2+2(cosy-1)≧0が微分でもしとけば簡単に示せるので、さほど苦労もなく終わっちゃいます。

第3問

びっくりするほど簡単で腰を抜かします。
え? n-1→nは長方形のタイルを詰めればおkで、(n-1を経由せずに) n-2→nは横向きに長方形2個or正方形になるから2A(n-2)+A(n-1)=A(n)ってことでしょ。問題になってなくない?

単純な3項間漸化式を解くだけです。まあ、3項間漸化式自体は確かに今の教科書でも「発展事項」の欄に載ってはいるが…。


第4問

(1)
kが偶数なら相加相乗の等号成立が約数なので完。
ただ、奇数の場合にどうにもならないのでこの方法は諦めましょう。

f(x)を微分して極小値は√Nのときなので、これに一番近い約数を調べてやればおkです。
√N=2^(k/2)なので、kが偶数なら最小値は√Nそのもので、奇数ならそれに近い2の累乗のどっちかが最小値。代入して調べてやればいいです。

(2)
N=5040で、71^2=5041。70と72が約数なので両方調べてやると、どちらでも最小値142をとります。

以上。

「こんなので微分するとかセンスないだろ!」って思うかもしれませんが、そのセンス無さそうな方法が実は近道というね。

第5問


確率が2題出題されるのは珍しい。こちらはちょっとだけ難しい。

(1)
1回ごとに進める距離が半分になるということを問題文から読み取れればOKです。
1回(1/2)^kだけ動くと、あとは戻るためにすべて反対側に(1/2)^(k+1)+(1/2)^(k+2)+……としても総和が(1/2)^k-(1/2)^nとなるため(1/2)^kに至らずにもう戻ってこれないということが分かるかと思います。背理法でこれを言えばOK。

(2)
対称性から、第1象限にいる確率は(1-(軸にいる確率))÷4で求まります。では軸にいる確率とはいかほどかと言いますと、これは(1)で軸にいるならずっと軸にいることが分かっているので、東西方向にしか進まない場合… つまり例えば1,2,5,6しか出なければx軸上にいることになります。
当然対称性からy軸も同じであるため、x軸にいる確率を単純に2倍してやれば軸にいる確率が出そうです。ただここに少し罠があって、原点を2回カウントしちゃうので、原点を除かなければなりません。
つまり(1,2,5,6だけが出る確率)を2倍し、最後に原点の(5,6しか出ない確率)を引いてやれば軸にいる確率が出るということです。
式にすると
(1-(2(2/3)^n-(1/3)^n))/4
括弧を外して
(1-2(2/3)^n+(1/3)^n)/4
が答えとなります。n=1で0になっていることを確認しておきましょう。


第6問

(1)
常識。単純にゴリゴリ成分計算しとけば示せます。

(2)
S=ab。e^x=tとでもおくとただの5t^4+6t+t^(-2)の最小値を求める問題。これ難しく見えますか? 僕は見えないと思います。


以上。どうでしたか。マジで簡単じゃねーかって思った人も多いかと思います。
正直試験場でこれが出たら面食らって「俺、問題文読み違えてないよな…?」って逆に不安になるかと思います。
ただ、こういうのが出た時って一番まずいのが凡ミスです。ざっと見た感じ、標準的な受験生が弾みで6完しても何らおかしくないように見える。こういう時に「凡ミスで取れる点数を落としてしまった」というのは通常以上に大きなビハインドを背負うことになります。
いくら数強になっても凡ミスは一定確率は起きるものです。まあこのレベルだと正直90分くらい余るでしょうから、全身全霊を賭けて一点のミスも無いように見直しに神経を使いましょう。別の意味で疲れるかもしれません。

本番でこれが出なくてよかった…。