ぽぴれあの大学入試数学解説ブログ

2014年度東大数学113点のぽぴれあちゃんが受験数学を解いてイキるためのブログです

定数分離は1次式を残したほうがいい場合がある 【1997年度東大数学 第2問】

文字定数を含む方程式の解の個数を調べるために、定数分離というテクニックを使うことがある。最近だとまさに東大2024の第4問(2)で定数分離を用いる典型的な問題が出た。

(方程式)=aの形にしたあと、y=(方程式) と y=aのグラフを描き、共有点の個数が解の個数になるということでグラフさえ描ければ楽勝で解の個数を求めることができるという強いテクニックだ。

さて、そんな強力な定数分離だが、実は定数を分離しきらなくてもいい場合というのがある。それはどういう場合だろうか?

今回は1997年度東大数学第2問がおあつらえ向きだったので簡単に説明してみる。

この問題は、2次関数という分野で最強の難易度を誇る問題として有名だ。
2次関数として処理するならD<0で1/(2n+1)<a<2n+1という十分条件を出したあと、a≧2n+1が条件を満たさないことと、0<a≦1/(2n+1)が条件を満たすことを別途考えなければならない。 (a>0が必要なのはm=0代入で割とすぐ分かる)

しかし、見方を変えてこの問題を定数分離を用いて解くと比較的簡単に解ける。

こうするのだ。

不等式から分かる通り、整数のmについて、この放物線が直線より上にあればよいということになる。そしていつもは定数aに応じて直線が上下に動いていくのだが、今回はaに応じて直線の傾きが変わるのだ。
まずy<0の部分は-1<m<0であるためここで交わろうが関係なく、またa≦0だとm=-1で不等式が満たされないことが自明であるためa>0が必要で、このあと直線の傾きを0から増やしていく際に放物線に接するまでずっと条件が満たされるということがわかる (そもそも交わらないため) 。

では放物線に接するaとは何だろうか? 判別式D=0を解くとa=1/(2n+1)、2n+1と出てくるが、1/(2n+1)のほうはy<0で接する場合であるため、関係なく、a=2n+1のときに接するためこれより傾くと直線が放物線の上側に来る時が訪れてしまうということになる。
そして、a=2n+1のときの接点は(n、n^2+n)であることに気付くと、a≧2n+1の場合はm=nで条件を満たさず不適であることがすぐわかる。

よって、答えは0<a<2n+1と出た。

実はやっていることは2次関数の問題として考えた時と一緒で、あくまで今回はそれをグラフで視覚的に捉えたにすぎない。ただし、式だけで処理したときに0<a<1/(2n+1)のときは-1<m<0の範囲でしか不等式が崩れないため適するという本問最大のポイントの分かりやすさに天地の差がある。やはりグラフは強い。

さて、もう気付いたと思うが今回定数を分離しきっていない。やろうと思えばこうすることもできた。


定数は分離せよという掟(?)に忠実に則るとこうなる。だがこうすると解くことは非常に困難になることはなんとなくわかるかと思う。何故ならこれは難しい微分をしないと書けないからだ。
そもそも定数分離をする動機は何かというと、曲線が動くと交点が分かりづらすぎるからである。なのでいつもはy=aという超分かりやすい直線にしてから動かすのだ。
しかしy=(1次式)×aもまた直線なのだ。これは定点を通りつつ傾きが変わることになるので接する条件を考えなければならないという面倒さはあるが、様子を追うこと自体は容易なので、相方の方程式部分の形によってはこちらを採用したほうが楽ということが往々にしてある。

そしてこの「定数を分離しきらず、1次式部分を残したままグラフを描く」というパターンは文系はみんな気付くが、理系は気付かない人も多い。何故なら文系はそもそも微分ができないのでこうするしか解く方法が無いのだが、理系はあらゆるグラフを微分で描けてしまうから最悪それで押し切ってしまえるためである。

今回はグラフがキモすぎるのでさすがにみんな気付くだろうが、たとえば
x^2-2ax+2a+3=0
というのを
x^2+3=2(x-1)a
ではなく
(x^2+3)/(2x-2)=a
にして微分してグラフ描く人は大勢いる。まあこれくらいなら別にそれでもいいんだけど。

ここから得られる教訓に以下がある。

使える手法が増えると以前に学んだことを忘れてしまう事態に陥りがちである

皆さんは中学受験の算数の問題を解くときに、三角関数やベクトルに頼ろうとして逆に解法が分からないという経験はないだろうか? これも武器を増やした結果、幼い頃に学んだ考え方を忘れてしまったということだ。
もちろんそれを克服するのは簡単ではなく、時間の限られた高校生に要求するのは無理筋かもしれない。しかし機械的な処理に疑問を抱き一歩立ち止まって考えることができるようになれば、またひとつ強くなれるのかもしれない。知らんけど。

超個人的! 高校数学難易度tier表

個人の感想なので注意

 

S:整数、図形と方程式、数列、積分

A:幾何、ベクトル、場合の数&確率、極限

B:集合と命題、いろいろな式、積分Ⅱ、微分Ⅲ、複素数平面、2次曲線

C:2次関数、指数対数、三角関数微分Ⅱ、統計


「数と式」「式と証明」「複素数と方程式」は全部ひっくるめて「いろいろな式」に入れてる扱いでよろしく。数Ⅰの三角比も三角関数に入れてる扱いで。
微積は文理でやる範囲違うので分けてます。
図形と方程式は一部ベクトルに吸収されたりもしますが、軌跡領域とかいう大物のせいでSランクです。
2次関数は解の配置とか、定義域や係数に文字定数を含む場合のmax,minとかで最後まで独立分野として成り立ってるので分けています。

 

ちなみに僕は整数、確率、数列あたりが得意で2次曲線、ベクトル、統計あたりが苦手なので僕自身の得意度とは関係ない (はず)

2024年度京都府立医科大学 第3問 やってみた

2024年度入試の最難関という噂が流れてきたのでやってみました。

日本で最も入るのが難しい学部は医学部というのは今や常識で、当然単科医大は医学部しかないため、理科一類とかいう非医学部を含むどこぞのFラン大学よりも難しいに決まっています。

というわけで問題は適当にggってもらって。僕がかかった時間は30分です。

(1)
図を描きましょう。半径1の円に内接する五角形A1A2A3A4A5があり、条件は以下である。

・△A1A2Bは正三角形 (BはA1A4とA2A5の交点)
・△A3A2=A3A4

とりあえず適当に図を描いてみると……

問題の要求はA3Bの長さを求めることです。皆さんこの図を見てわかりますか? ぼくはわかりません。

まずどういう風にアプローチするかを決めねばいけません。図形問題といえば座標設定やベクトル等色々ありますが、今回これらは使いづらそうです。何故そう感じるのかというと、図形上のあらゆる点を表すのにパラメータを何個設定すればいいのかわかったものではなく、どう考えても計算が面倒だからです。

例えば円の中心を原点として、A1(1,0)とおくとして、まずA2~A5をどう置けばいいのでしょうか。A2(cosα、sinα)、A3(cosβ、sinβ)…という風に角のパラメータを4つも置いていき、2つの条件から関係式を出す… そんなことは試みるまでもなく面倒すぎてやってられません。ベクトルでも同じような事態に陥りそうです。

というわけでここは初等幾何&三角比の出番です。これらのメリットは図形の観察により特殊性を見出し、複雑な計算を避けられることにあります。反面、補助線を引いて相似な図形を見つける等の作業が行われるので補助線が見えなければそのまま詰んで虚空を眺めることになるというデメリットがあります。
また、幾何って角度を追いかけるのがメインになることが多いのですが、今回は特に正三角形と二等辺三角形という角度に対する強い制約がありますからいかにも幾何と相性がよさそうです。

というわけで、図形を観察してみて新発見を探していくのですが、とりあえず図が悪かったので書き直します。条件A3A2=A3A4を起点に図を描くと…

まずこうなる。点A3をてっぺんに描くと、A2とA4が同じ高さのところに来るはず。
そして、条件に合うように点A1を打とうと考えた時、A1A2Bが正三角形という条件から角A2A1A4=60°という隠された条件が見えてくるはずだ。そして…

ではA2A1A4=60°となるA1はどこに打てるかを考えると、そもそも円周角の定理によって、A2A1A4の角度はどこにA1を打とうが不変であるということに気付く。ではその一定値を決めるのは何かというと、角A2A3A4だ。これが120°であればいい。
ということは、△A3A2A4は120°、30°、30°の二等辺三角形で、直線A2A4は線分OA3の垂直二等分線であるという事実までが判明する。

つまり、座標でいうと円の中心をOとし、A3(0,1)、A4(√3/2、1/2)、A2(-√3/2、1/2)までが簡単に置けて、そして点A5は点A1を定めるとA1A2A5=60°となるように勝手に決められるため、A1を動かせば図形全体が決まる (自由度が1という言い方をする) ことまで辿り着けるはずだ。ここまで来ればパラメータ1個で処理可能なので、座標によるアプローチでもそう大変ではない。

このように幾何的な見方で図形を観察することによって一気に簡単になることが、特に円絡みの問題では多かったりする。初等幾何の主役は円であったことを思い出せばこのことはなんとなく納得がいくと思う。


このあとは座標に引き継いでもいいのだが、せっかくなので図形の観察を続けてみよう。

円周角の定理から、角A5も60°になるので△A4A5Bも正三角形になる。
そもそも求めたいのはA3Bの長さなのだが、問題文の訊き方からしてこれは一定値で、しかもBとOが一致するシチュエーションがあるため答えは1であるだろうという予想がつくかと思う。これを示すにはどうすればいいのだろうか?

答えが1固定ということと、頭の中でA1を色々な位置に取ってみる試みをしてみれば、点Bの軌跡はA3を中心とする半径1の円周の一部を描くということがイメージできるはずだ。
これは点A2、O、B、A4は同一円周上にあるということを意味する。同一円周上にあるという証明は

・座標流 → 中心との距離が一定であることを示す
・幾何流 → 円周角に該当する角が等しいことを示す

なので、A3が中心であるということも併せると今回は弦A2A4に対する2つの円周角である、角A2OA4と角A2BA4が等しく120°であるということを示せばいい ……ってそれは図から自明だ。

このように、答えの予想さえついてしまえば、たとえそれが根拠ない勝手な決めつけであったとしても、天下り的に根拠を後から見つけることができることもある。ちなみに僕は数オリ勢でもなんでもないのでこの問題に20分かかった。正直この問題が一番難しい。

(2)
初等幾何の強力なお供、それは正弦定理、余弦定理だ。
これは幾何の延長戦上にあるようなものだし、そもそも正弦定理なんて公式そのものに外接円と書いてあるので絶大な威力を誇るに決まっている。

色々な三角形について考えてみると、△A2A4Bがおあつらえ向きだ。余弦定理で一発。

(3)
五角形A1A2A3A4A5の面積は、5つの三角形に分割して△A2A3A4+△A2BA4+△A1A2B+△A4A5B+△A1BA5となる。もう辺の長さもすべての三角形が120°の角を持つことも判明しているから、1/2・absinθの繰り返しで出せる。

整理すると面積Sは√3/4・((a+b)^2+1)となる。式の形から、Sが最大になることはa+bが最大となることと同値なので、(2)で出したb=(√(12-3a^2)-a)/2という答えを利用して、(√(12-3a^2)+a)の最大を考えてやればよい。適当に微分してください。

a=1のとき面積5√3/4と出るはず。


以上。
(1)がこの方針で出来さえすれば、(2)と(3)はサービス問題と化しますが、この問題は正直言って(1)が一番難しいので部分点を稼ぐという戦略が通用しづらく、非常に難易度が高いと思います。しかも解いてるうちは(1)さえ解ければあとは一瞬って分からないわけですからね。こんなのは後からだからいくらでも言えるもので、実際には(1)に20分もかかるのなら(3)まで終わらせるには50分くらいかかるのでは? と考えるのも自然。

僕はかなり完答主義なんですが、やっぱり(1)から解けないと焦るw

1996年度 東大後期数学 やってみた

モチベがあるうちに駆け抜けておきたい。

第1問 難易度:D****


これは厳密には初見ではなく、僕が高3の頃に場合の数の基本を忘れないために個別に取り組んでいた問題です。10分で終わったから1回しか解いてないけど。
いかにも場合の数の基本を集めましたみたいな問題で、標準参考書の例題に載っていても違和感がない見た目をしています。
場合の数の数え上げにおいてはものを区別する、しないが重要だと普段から耳が痛くなるほど聞かされているでしょうが、まさにその基本がちゃんとできているかを試してくるある意味で東大らしい問題と言えるでしょう。

で、そんなめっちゃ基本的なことを問われているはずなのに、難易度がDと書かれているのは数学教育の敗北か???

(1) 3^n
(2) ボールの区別がつかない場合、それぞれのハコに入っている個数だけを考えることになりますから

このように、ボールを1列に並べておいて、その間にどのハコに入れるかを表す仕切りを挿入すると考える、という考え方をするのでした。いわゆる重複組み合わせです。

これはn個のボールと2個の仕切りの並べ方になるから、(n+2)_C_2通りとなります。

正直東大とか関係なく、ここまではできてもらわないと結構困ります。間違えた人は教科書の勉強でもしておいてください。

(3)
ハコに区別が無い場合、とりあえず区別して入れたとしておいて、あとから重複度で割るのが基本でした。
例えば

上の2つの場合は、ハコにA,B,Cという名前がついていたら別の入れ方になりますが、ハコから名前が無くなると同じ入れ方になるのです。
ハコの名前の付け方は6通りあるため、答えは3^n/6通りだ!

はい。そんなわけないですね。そもそもこれ整数じゃないので間違ってるに決まっています。
というのも名前がついていてもなお区別できない状況というのが存在するのです。それは1個のハコに全てのボールが入っている場合です。

これは、BとCを入れ替えた場合を考えると、ハコに名前がついていようが同じ入れ方ですね。ということはこの3通りについては (Aに全部、Bに全部、Cに全部の3通り) 別枠で考えてやる必要があります。

全入れが1通りに圧縮されて、それ以外の3^n-3通りは1/6に圧縮されるため、答えは(3^n+3)/6通りです。

(4)
なんでここに来てnが6の倍数という制約がついているのかというと、これはどうも一般のnについて場合の数を求めることができないかららしいです。

ボールにもハコにも区別が無いので、個数の組み合わせが何通りあるかを考えます。(3)と同じようにハコに区別があるとしてから後から区別を取っ払ってやるというようにするのですが、例えばボールが12個あるとして

(3個、4個、5個) → 名前の付け方は6通り
(3個、3個、6個) → 名前の付け方は3通り
(4個、4個、4個) → 名前の付け方は1通り

と、同じ個数のハコが何個あるかによって名前の付け方が何通りあるかが変わってくるので結構厄介です。
それでは各場合について何通りあるかを見ていきましょうか。

(i) 3箱とも同じ数。
(2m、2m、2m) だけなので1通り。ハコに区別があるとしても同じです。

(ii) 3箱中2箱が同じ数
(0、0、6m)、(1、1、6m-2)、……、(3m、3m、0) の3m+1通りがあるはずです! …と言いたいところですが途中で(2m、2m、2m)を通過するのをうっかり忘れてしまいがちです。というわけで3m通り。ハコに区別があるとするならば9m通りですね。

(iii) 3箱とも数が違う
これは直接考えるには難しすぎます。ここでハコを区別した場合の(2)の答えを拝借して余事象を考えます。(i)、(ii)はハコに区別があるとしたならば合計9m+1通りで、また(2)の答えはn=6mに置き換えたら(3m+1)(6m+1)通りとなります。
このことから、3箱とも数が違う場合はハコの区別があるとしたとき(3m+1)(6m+1)-(9m+1)=18m^2通りとなるはずです。
ならば区別をなくすと3m^2通りになりますね。

というわけで答えは3m^2+3m+1通りで、n=6mを使って書き換えると(n^2+6n+12)/12通りとなります。




第2問 難易度:D***

かかった時間:76分20秒

等面四面体は直方体に埋め込めというマニアック定石を知っていれば10分で終わります。が、あまりにも受験技巧が過ぎるのでこれを知らないものとして解くとどうなるか? というのを今回はやってみました。

(1)
とりあえず四面体を組み立てて、線分PQはここの長さです。

こんなものは万能計量ツール「ベクトル」を使えばなんとかなるというのは高校2年生くらいの頃から耳が痛くなるほど言われていることです。

3辺をそれぞれ1次独立な3つの基本ベクトルとして設定して、内積余弦定理から求まるので…

はいできた。

(2)
正直僕がベクトル苦手で外積がどうとかよくわからないので、原始的な方法である「底面積×高さ÷3」に頼ることにします。

恐らく(1)は誘導だと思うので、三角形PBCを作って四面体の体積を二等分し、高さを頑張って出すことにします。ちなみに内積計算によりBC⊥PQがわかるため、底面積は簡単に求まるはず。
OP⊥PQなので高さはa/2だろ! と思った人は不正解です。高さというのは点Oから平面PBCに下ろした垂線の長さのことを指し、点Oから直線PQに下ろした垂線の長さではないからです。一緒じゃないの? という人は下図参照。

というわけで三次元ってのはなかなか厄介なのです。困りましたね。
それでは垂線の長さをどうやって求めればいいのか? とりあえず足をHとおくと、ここで受験数学使わないランキング1位の無名定理「三垂線の定理」からHP⊥PQが分かります。マジで初めて使ったわこんな定理。そして平面PBC上にあってPQに垂直な直線として既に直線BCがあるため、BC//HPがわかります。ということは…?

OH↑=OP↑+tBC↑

なる実数tが存在することを意味します!
tを決定するためには、垂直条件を適当に持ってくればよいでしょう。平面PBC上のベクトルならなんでもいいです。一番簡単そうなのがBC↑っぽいのでそれで。

tが求まれば、高さも求まります。

ここまで終われば体積が求まりますが、正直言ってめちゃくちゃ疲れました…。簡単にやってそうですが、すぐ思いつく方法は未知数が2個以上あって死ぬほど面倒だったので、未知数を1個にして計算を楽にする工夫 (三垂線の定理の利用) を思いつくまでに1時間以上かかってます。

ここから得られる教訓は以下。

等面四面体は直方体に埋め込める ←覚えろ!!



第3問 難易度:C***

かかった時間:21分35秒

まさかの微分方程式。この時代は学習指導要領にあったらしい。
指定暴力団鉄緑会でも一応微分方程式はやったんだけど、やってることの意味が全く分からなくてこの回の復習テストが6点だったのは覚えています。100点満点です。ゴミ。

問題文に書かれていることをそのまままとめるとこうです。高3当時の僕だと恐らくここから何がどのパラメータに依存して変化するのかっていうのが分からずに手も足も出ないと思います。
だって、それまで例えばxに依存する関数は「f(x)」などという形でxに依存しますよということが明示されてきたのに、いきなり「Vはhに依存します」って言われてもわからんわっていう感じです。こんなんでも鉄緑SA行けるんやな。

これだとまだ微分方程式を立てたといえませんから、Vとhの間の関係式を導いてやります。
ところで石油タンクのサイズ感すら与えられてないので勝手に底面の半径r、高さLとでも置いておいて、断面積は2L√(2hr-h^2)になる。当然これは体積Vを微分したものであるため、dV/dt=2L√(2hr-h^2)・dh/dtが成り立ちます。
つまり微分方程式はこうなる。

移行してこんな感じ

両辺積分して

初期条件 (って言うんかなこの場合) として、t=0のときにh=2r、t=60 (分) のときにh=rとなると言われているため、C=0、k=-Lr^(3/2)/45と出てきます。
あとは、h=0になるtを具体的に求めてやると、t=120√2と出てきます。

60分後からの経過時間が問われているので、120√2-60の整数部分である109分 (1時間49分) が答えとなります。

これが難しいのかどうかはぶっちゃけ知らない。



1995年度 東大後期数学 やってみた

なかなかまとまった時間が取れない……

第1問 難易度:D****

かかった時間:29分35秒

パスカルの三角形に関する問題です。n=12程度ならひたすら書き出せば求まりそうなものですが、今回はそういうごり押しはせずにちゃんとやっていきます。

(1)
まずパスカルの三角形って皆さん見たことありますかね。定義式は組み合わせの記号Cを使って書かれていますが……

各数字は、このように左上の数字と右上の数字の和になっています。
これって漸化式でやってることそのまんまなので、この超基本的性質を追っていけば漸化式がすぐさま立てられそうです。

図のように色分けしてみればもはや一目瞭然です。(実際の試験では色分けできませんが……) 
もうこれで漸化式が出てきてしまいました。以上! (1)完ッ!!

……はい嘘です。これはまだ予想による決めつけにすぎないので、ちゃんと証明しないといけません。どうするか。

これは各々の定義式に戻ってしまえばいいです。パスカルの三角形の性質よりn_C_m+n_C_(m+1)=(n+1)_C_(m+1)が成り立つので、これを用いて等式が成り立ちますねってことを半分天下り的に言ってしまえばOK。
なおパスカルの三角形の性質は使って減点になることは無いと思います。つーか問題文に堂々と背景知識が書いてあって、使っちゃダメだったら意味不明だろっていうね。

(2)
漸化式がかなりシンプルなので簡単に解けそうですが、そう簡単にはいかないのが難しいところ。そもそも二項係数から直接求められるのではというのは今回はやめて、素直に誘導に乗ってやります。

関係式を使ってQとRを消去すると、次のような4項間漸化式が出てきます。

3項間はみんな解けるでしょうが、4項間なんて見たことないという人も多いのでは。それではこれを解くにはどうすればいいのか?

特性方程式x^3-3x^2+3x-2=(x-2)(x^2-x+1)=0を解くと、x=2、-ω-ω^2と出てきます。もちろんωというのは1の3乗根のうち1じゃないもののことです。
嫌な予感がしてきましたが、話を続けます。特性解2を利用して例えば以下のように変形できる。

これで数列P_(n+1)-2P_nというかたまりができたので、さらに変形して

こうなる。なお、この変形には特性解だけでなく、ωに関する基本関係式ω^2+ω+1=0も活用しています。

ちょっと係数が虚数なのと横に長いってだけでこれはただの3項間漸化式と同じです。これを解くと

こういうのが出てきます。
もう1回同じようなことをすればP_nが具体的に出てきそうですが、今回はちょっと違う方法でやってみた。
特性方程式のx^2-x+1の部分を利用した変形により

こうなり、数列P_(n+2)-P_(n+1)+P_n=2^nというのが容易に出てきます (簡単にP_0=P_1=P_2=1がわかる)
そして、これとP_(n+1)-2P_nをうまく足し引きすればP_nだけが残ってくれるのでこれで解決します。具体的には


こういうこと。
1つ求まってしまえばこっちのもの。(1)の漸化式から残りも求めてしまいましょう。
ω^3=1を利用してできるだけ整理すると、こうなるはず

(3)
ボーナス問題。n=12を代入しましょう。P_12=1366、Q_12=1365、R_12=1365になります。

なお、僕はこうやったのですが、P_n=2^n-Q_nとかを使ってmod3で場合分けしたらめっちゃ簡単だったらしいね。



第2問 難易度:C***

かかった時間:19分10秒

「与えられた平面」とか書いてるから、一瞬空間図形の問題かと思いましたが、そういうわけではなくて一安心。それにしても後期って問題文の書き方がなんか独特だなあ。

(1)

条件から、3点A,B,CはP,Qを中心とする半径1の円の周または内部にあることは容易にわかり、面積を最大にするには頂点は周上にあることが必要であることを示したい。

自明だろとしか思えませんが、これを証明するにはどうすればいいのだろうか?

方針としては、頂点が円周上に無い場合に、もっと大きな面積を持つ三角形が作れるということを示せばよさそうです。しかしそれを一体どう表現して論証すればいいのだ…? 計算するだけだった大問1よりこういうやつのほうが難しいな…。

いま、点Aが円周上に無いと仮定しましょう。するとどこかに辺BCがあるのですが、イメージとしてはこのような感じである。

 

要は、辺BCを底辺としたときの三角形の高さが、円周上にある時よりも短いから面積が小さいよねというお話。
というわけで、点Aから辺BCに下ろした垂線の延長戦が円と交わる点をA'とし、△A'BC>△ABCを示せればよいのではなかろうか?
もちろん点B、Cについても同様となる。

(2)
点が3つあるのだから、いずれか2つの点は同一円周上にある (鳩ノ巣論法) 。対称性より今回はそれを円周E上に点A、Bがあると考えたというわけです。これ自体は何も難しいことは無いごくごく自然の発想です。

それでは垂線の長さpを固定するとはどういうことだろうか? 垂線の長さがpとなるときの弦ABの動きを追ってみよう。すると…



弦ABの中点は、点Pを中心とした半径pの円周上をぐるぐる回るということが分かるはずです。
弦ABの長さは固定ですから、三角形の面積を最大にするためにはやはり高さが最大となるように点Cを定めることを考えればよさそうです。そのような点Cは何かと言いますと、これは点Qを通りABに垂直な直線と円周Fとの交点 (遠いほう) となります。
何故ならば円と直線の基本的な位置関係の性質により、まず円周上の点と直線との距離の最大・最小は中心を通る垂線と円との交点であるから。

そしてそれを最大とするA,B,Cの配置ですが、これはまずABの中点 (Mとでもしましょう) と点Cとの距離は、折れ線MP+PQ+QC=2+p以下であり、さらに点Cと直線ABとの距離以上であることも明らかである。

すなわち (高さ)≦MC≦2+p が成立し、(高さ)≦2+pの等号がAB⊥PQのときに成り立つため、これで示されるというわけです。

(3)
高さ2+pはもう分かったので、底辺の長さが分かれば面積が求まります。その長さは三平方の定理から2√(1-p^2)とすぐ求まります。
つまり面積は(2+p)√(1-p^2)であり、あとはpを動かして最大値を求めろと言っているので微分するだけです。ここまで来たらさすがに簡単です。

根号を含む式の微分はめんどくさいので、中に入れて中身の整式のmax、minを調べましょう。
あとは流れで。




第3問 難易度:C****


かかった時間:17分13秒

ゲーム系確率の問題。Aは公開情報無しでカードを出すのに対し、BはAのカードを見てから後出しができるので、明らかにB有利のクソゲーです。

(1)
どっちから出しても同じに決まってるとしか思えないのですが、こういう感覚ってゲーマーだから持ってるものなのかな…。
3分ほど考えて、2人が持っているカードの数字a,b,c,dについて、a>b>c>dであるとしてAとBがそれぞれ何を持っているかで対戦の行方をシミュレートすることにします。

Aが持っているカードが
(i) aとb
相手のカードのほうが弱いため負けるわけないので、どう出そうが2点です。

(ii) cとd
逆に勝てるカードが無いため、どう出そうが0点です。

(iii) aとd
必勝と必敗が1枚ずつなので、どう出そうが1点です。

(iv) bとc
さっきの逆で、B君が必勝と必敗の組み合わせを持っているのでどう出そうが1点です。

(v) aとc
ようやく考える余地が出てきました。B君の手持ちはbとdです。
A君がaを出したとしましょう。B君はどうせ負けるので、2枚目で勝つ確率を上げるために弱いほうのdを提出するはずです。
すると、2枚目はA君のcとB君のbがぶつかるため、1勝1敗で1点です。

ではA君がcを出したら…? B君は喜んでbをぶつけてA君は負けますが、2枚目でA君のaとB君のdがぶつかってA君が勝つため、やはり1勝1敗で1点です。

(vi) bとd
さっきと同じように考えます。B君の手持ちはaとc。
A君がまずbを出すと、B君がaを出します。次はA君のdとB君のcがぶつかるため2連敗。
A君がまずdを出すと、B君はどうせ勝てるのでより弱いcを提出するはず。すると次はA君のbとB君のaがぶつかるためやっぱり2連敗です。
この状況ではA君は0点が確定しているのです。

以上のことを考えれば、A君はどうカードを出そうが関係ないということがわかります。

(2)
先ほど6通りの場合を考えましたが、これらのパターンはそれぞれいかほどの確率で起こるのでしょうか?
これはa,b,c,dの4枚のカードをA君とB君に無作為に振り分けることを考えると分かりますが、全て等確率の1/6ずつです。

そしてそれぞれのパターンにおけるA君の得点をまとめると

a,b:2点
c,d:0点
a,d:1点
b,c:1点
a,c:1点
b,d:0点

となるため、期待値は5/6点となります。

(3)
A君があまりに不利すぎるためか、なんとA君は合計が14になるという条件付きで配牌を選べるというのです。その場合の期待値を求めたいのですが、これはこれまでに考えた6パターンがそれぞれどれくらいの確率で起こるかを調べればよいです。

……と言いたいところですが、実は調べるのは1つだけでいいです。何故か?
それは合計14という対称性に由来します。例えば5と9を選んだとして、A君の手持ちの両方より強いカード (10~13) と弱いカード (1~4) は同数存在します。これはどういうことなのかというと、つまりB君が2枚ともA君より強いカードを選ぶ確率 (c,dパターン) と、2枚ともA君より弱いカードを選ぶ確率 (a,bパターン) が同じであることを意味します。
a,bは2点、c,dは0点でしたが、これらが等確率で起きることから期待値計算するときにこれらパターンの部分は期待値1として算出されるはずです。
そして得点表を眺めるとa,d、b,c、a,cの3パターンが1点なので、b,d以外の5パターンについての期待値は各々がどんな確率だったとしても1であることがわかります。全体の期待値はb,dパターンが起こる確率にのみ依存するということがわかるのです。もちろんこれは0点なので、この確率が高いほど期待値が下がります。

具体的にはb,dパターンが起こる確率をpとすると期待値は1-pになります。
それではpを求めましょう。

これは、B君が11枚のカードから2枚を選んだ時 (55通り) 、A君より強いカード1枚と、A君の2枚のカードの間の数のカード1枚を引く確率であるから…

A君が
1と13:0×11 /55
2と12:1×9 /55
3と11:2×7 /55
4と10:3×5 /55
5と9:4×3 /55
6と8:5×1 /55

となります。
pの最小はもちろん1と13のときの0、最大は4と10のときの3/11。よって期待値最大は1 (Aが1と13) 、最小は8/11 (Aが4と10) になります。

6パターンを調べる大変な問題かと思いきや、実は1パターンを調べるだけでよいという、ゲーム性に気付けるかどうかの問題でした。僕はゲーム系確率はクソ得意なのでこの手の問題は基本瞬殺です。




入試数学で一番大事なのは「標準的な問題を素早く正確に解く能力」

前回こんな記事を書いた。

この記事は長ったらしく色々なことを書いたが、結局言いたかったことは「150分の試験のように見えて、実は最初の60分で大勢が決している」ということだ。

「解けそうな問題にこだわっていたらなかなか解けず、いつの間にか50分ほど経過していて茫然自失になった」

誰もがよくある経験ではないだろうか?
本番でこれが起きたら目も当てられない。だからこそ多少のことでは物怖じしないメンタルと、どのような状況になっても立て直し最低限度の得点を確保する場慣れが必要である。
まだ1秒も取り組んでいない問題があるうちから1問に50分もかけるなどあってはならない。僕は計算ミスだろうが、もう少しで終わりそうだろうがなんだろうが10分弱取り組んで進展がみられなければ切り上げて次の問題に行っていた。

正直、入試数学の点数を左右するのは多少の数学力の優劣よりも、タイムマネジメント能力のほうだと僕は本気で思ってる。

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さて、ところで皆さんは「東大数学で100点over」と聞くとどんな人を想像するだろうか? 発想力が卓越しているとか、数学のセンスがあるとか、いわゆる大数D問題を簡単に解いてしまうとかそういうのを想像しているのかもしれないが、実際のところは満遍なく演習しているので詰む分野が無くて、処理速度が超早い。
例えば今年の京大を3完している人たちの答案を集めたとして、解けた3問は

1 2 3 とか
2 3 4 とか
1 2 4 とか
2 4 5 とか
1 4 6 とか

……まあ、色々な3問の取り方がある。今年は割と難易度が横並びだったこともあり、誰もが取っていない捨て問題というのは無いはずだ。

ということは1 2 3 4 5 6は全て普通の受験生が解けるレベルの問題ということになる。ならば全部取れる。6完だ。
京大190点、東大100点取る人間というのはこういうことであり、決して「誰もが解けないような難問をすらすらと解ける」というわけではない。あくまで問題の難易度は普通なのだから、何ら特別な思考はしていない。ただ、異様に速いし苦手な分野が無いだけ。

ということで、ひたすら難しい問題ばかり演習するのではなく、むしろ簡単な問題を素早く解ける能力のほうが重要だったりする。100点取る人だって、大数D問題には30~40分かかったりする。そのような問題には手を付けるなと一般的には言われているのだが、解くのが早すぎてそれまでの5問が100分で終わっていれば他にやることがなく40分くらいかけてこの問題に取り組んだほうが点数が上がるのだから取り組むというただそれだけの話なのだ。

当たり前のことだが、入試数学は解けそうなものから順に解いていくのが普通であるため標準的な問題を全て片付けないと難問への挑戦権すら得られない。難問の演習ばかりをいくら積み重ねたところで、標準的な問題を解くだけで時間がいっぱいになってしまうのならその成果は実ってくれないのだ。そして最後の1問に取り組む時間が30分や40分もあればいくら東大の問題とはいえ、10分くらい試行錯誤する時間はあるのでマニアックな解法暗記なんかする必要もなく、その場で考えればいいということになる。

というわけで、標準レベルの問題を出来るだけ早く解けるように&解法が分からないということがないようにするのが先決。
まずは今年の東大の問題を6(2)以外全部解けるようにしましょう。まだスピードは気にしなくていい。最初は250分とかかかってもいい。その代わりわからなくても答えを見ずに、降参なら降参で参考書とかで似たような問題の取り扱いを復習しつつ日を改めて再チャレンジ。
あとは思い出したころにもう1度5.5問セットでやってみる。どうせ今年の問題は東大受験生レベルなら見て1分で方針が立つものばかりなのだから「見たことある問題は方針がすぐ立つので~」などはどうでもいい。何度もこのセットの計算練習をして徐々にスピードを上げていき最終的にこれを150分に収まるようにするのだ。

それくらいのスピードを身に着けたら1995,2002,2017の3弱制限時間120分で解く訓練もいいかもしれない。正直この18問の中で解けない問題があったらそれは明確な弱点だ。簡単なセットは弱点を浮かび上がらせるためにも効果的だ。

あとはそれなりのセットで演習しましょう。2014もかなり典型寄りなので速度練習にはもってこいです。

厳しい訓練だと思うが、これが出来ればあなたも数学で非常に大きなアドバンテージが得られるようになるのかもしれない。責任は持ちません。

東大入試の数学立ち回り方 サンプルn=1

数学の試験はめちゃくちゃ点数が安定しないとよく言われ、上振れをお祈りするのではなく、下振れを回避すること (or 下振れても合格できる点を確保すること) が重要だとよく言われます。
そのため数学を武器にすることは避けるべきだといわれますが、一定以上の実力があれば数学でアドバンテージを安定して取ること自体は可能です。ただし、アドバンテージの度合いや点数そのものが安定するとは言ってません。
どういうことかというと、例えば難化したらそりゃ僕だって点数は下がります。ただしその場合ふつうはほかのみんなも下がるので、差をつけることには成功しているわけです。ここがほかの教科と異なる数学特有の現象で、いまいち認識しづらいところ。

それでは、安定して差をつけるためにはどのようにすればいいのだろうか?


まずやってはいけないことを列挙してみよう。

・目標点数を厳密に決める
・東大数学は1問25分という計画を立てる
・最高の出来を安定させようとする

1つずつ見ていきましょう。

①目標点数を厳密に決める。
目標点数を決めるのは当たり前だろという反論があると思います。そりゃそうです。僕だって受験生当時は最低90点を目標にしてましたし、あわよくば120点が取れれば最高だとも思ってました。

しかし、特に東大入試の数学は年度によって難易度差が激しすぎます。極端な例でいうと、2023年度の数学で70点取れたらめちゃくちゃアドですが、2017年度で70点だとむしろビハインドです。つまり問題の難易度によってとるべき点数は変わるということです。
例えば目標点数60点の人がいたとして、劇的に難化して60点が取れなさそうな回や、逆に簡単すぎて60点だとビハインドになるような回を引いてしまった場合、目標点数に拘りすぎると本来取れていた点数が取れなくなってしまいます。
というわけで事前に立てる目標はあくまで目安で、真の目標点数は試験中に定めるのが安定化のコツその1です。これは点数そのものの安定化ではない。ボリューム層との「点差」の安定化です。

②1問25分という計画を立てる
正直そもそも1問25分とか言ってるやつがエアプ甚だしいです。大真面目にこんなこと言ってるアホがいたらもうその人に東大対策なんて聞かないほうがいいと僕は本気で思います。
まず問題演習で数学でアドをとるためにいわゆるC上位やD問題を25分で解こうとする人がたまにいるのですが、あんなの25分で解けるわけないです。例えばBBCCCDみたいなセットで6完する人がいるとして、1問ごとにかける時間は15-15-25-25-30-40とかです。当たり前ですが難しい問題にはそれなりの時間がかかるわけです。

いや6完するような人間は外れ値だろといわれそうなので、では2完くらいの人のことを考えると、これは2問解けばいいんだから、1問45分くらいかけてよくて残り60分でほかの取れそうな小問をかき集めていくという感じになりますよね。そもそも解かない問題がある人間のほうが多いのですから、25分で終わらせようという前提そのものがおかしいわけです。
英語や理科は分量が多かろうがなんだろうが、捨て問というのはあまり発生せず、とりあえず解答欄を埋めることはすることが多いですが、数学というのは手を付けてはいけない問題というのがあって、解かない問題があることが前提ですから単純な割り算で時間配分が決まるということにはならないのです。

③最高の出来を安定させようとする
もちろん最高の出来とは私にとっては6完です。しかし僕は5完は実力、6完は運ということを常に念頭に入れていました。6完は上振れで取るものなのです。
これは1問あたりにかけられる時間を考えてみればわかります。さっきはそういう単純化はよくないと言ったばかりですが、これは今から述べる事実がぼやけてしまうからという危険性も込みです。

例年易しめの問題が2問あるとして、40分で2完できる人がここから6完するには1問あたり何分かけられるだろう。
10分は見直しに使うとして、100分を4で割り、1問あたり平均25分ですね。
では40分2完から5完するには?
100分を3で割り、1問あたり平均33分です。

なんと! 1問にかけられる時間が平均して8分も違うのです! しかも残り4問の中にも難易度の傾斜があるでしょうから、5完狙いと6完狙いとで、以降1問あたりにかけられる時間の差はどんどん広がっていきます!
例えばその後100分で4問解き終わったとしたら、6完したいなら40分で2問という無理ゲーですが、5完なら1問を40分かけてのんびり取り組めばよく、幾分か心の余裕が出てきます。試験が終盤に近付くにつれ、「最終的に何完を目指すのか」によるその後の時間計画が著しく違うことがわかるでしょう。

これが先ほど②で挙げたような単純な割り算勘定で見積もってしまうと、6完は1問25分、5完は1問30分という計画になり、そんなに大差なのか…? という印象が先行してしまい、正しい判断ができなくなってしまいます。


以上のことから導いた、僕が東大数学の出来を安定させるための必勝戦法がこちらです。

60分経過時点での出来×2=目標点数 とする!

これが本質です。本当にこれだけで秋模試以降点数も順位も急激に安定しました。高3の10月以降も150分6問を解くタイプのテストを20回くらいは受けてきましたが、90点を切ったのは1回あったかどうかだった気がします。その中でも大きなイベントである冠模試は102,90,115で本試は113でした。

つまり、まず何も考えずに60分間取り組んでみる。そしてその時点での出来が

3完以上なら → 6完を目標に取り組み
2完半なら → 5完を目標に取り組み、1問は捨てる。欲は出さない。
2完なら → 4完を目標にし、崩れないことを最優先。60分2完の時点でもう負け。挽回は狙わない。

と目標を定め、後半の90分に取り組むのです。
もちろん、60分時点で2完でも、その後順調に問題を解くことができ、110分時点4完になったということも考えられます。そしたらまたその時に「残り40分だからもう1完狙えるか…」と計画を上向きに修正するのみです。
60分時点で最低ラインを定め、それを下回らないことを最優先にし、以降の目標修正は順調に行った場合の上向きの修正のみ。

これを意識すれば、僕は5完が安定しました。
なぜ60分経過時点なのかというと、とりあえず問題を見ないことには難易度感がわからず、60分もたてば大体わかっているから。そして以降の得点計画により、1問にかけられる時間が大きく変化する節目のタイミングであるから。もう1つはまだ90分もありいくらでも調子の修正が効くタイミングで「何問捨てるか」を決意することによるメンタル安定化の処世術という面も大きいです。


……とか言って、これは僕の場合なので「そもそも60分で2完できねーよ!」という方もいるかもしれません。そういう人は自分なりにこの考え方をアレンジしてみてください。


さて、これを取り入れて最も重要な「2014年度本試験」でどのように立ち回ってみたかを (10年前なのでうろ覚えですが) 振り返ってみます。皆様のご参考になればと思います。

--開始--

まず1に取り組む。ちなみに僕は1から順番に解きます。基本どうせ全部やるので。
ただし走り出しで空間の三角形なのになぜか1/2・absinΘで求めようとしてしまい、5分くらい詰まる。ちょっと冷静さを欠いていると自覚があったので飛ばして2へ。

2に取り組む。aが含まれててめんどくさいが、(2)を出した時点で(3)が問題になってなさ過ぎて焦る。これは(2)間違えてる…?
ここで小テクニック「置き完」を使います。

---置き完とは---
何分か取り組めば完答できる問題をあえて途中のまま放置しておき、その問題を完答するために要する時間を予約しつつ気分を変えてほかの問題に取り組むテクニック。

今回(3)は簡単すぎて3分もあれば答案が書けます。ただし(2)が間違えていたら(3)も書き直しになるため、その場合(3)を書いた時間が無駄になります。
今回(3)が区分求積チックな形になっていたことに若干心が惑わされたのもあり、後々(2)を丁寧に見直すことにしたので、見直して間違いがないことを確認したあとに(3)を書けば済む話です。

というわけで2の見直しに10分かかることを想定し、2(3)を飛ばして3に入る (この時点で20分程度)

3に取り組み、3(2)までを解く。
3(3)は積分計算で面倒そうだ。これを解くのに(2)までの見直し含めて (式が間違ってると積分が合うわけないので、ここまでの見直しは必須) 15分程度かかるため、15分予約して4に移る。めんどくさい計算は後回しにして、頭がまだフレッシュなうちに他の問題を考える。

4。(1)からわからない。10分経過。あきらめて5へ。

5。(3)まで書き終わる。この時点で確か試験開始から55分くらいだと思う。(4)は鳩ノ巣論法っぽいというところまではわかったが、ちょっと頭がごちゃごちゃして整理がつかなくなったので、一旦頭の整理も兼ねて10分置いて6へ。

6。典型問題すぎて逆に焦る。これもしかしてみんな80点くらい取るセットなのでは…!? 2次方程式が出てきたところで場合分けがめんどくさいなと感じる。とはいえ20分かければいけそうだ。

ところで60分が経過した。なんと完答している問題が1問もなく、この時点で0完である。60分時点での出来×2に則ればめちゃくちゃ危機的状況だし、実際60分時点で0完なんて今まで1度もなかったので死ぬほど冷汗が出たが、ここで焦りを消して状況をよく整理してみた。

1:白紙
2:あと10分で完答可
3:あと15分で完答可
4:白紙
5:あと10分で完答可
6:あと20分で完答可

答案だけ見れば確かに0完である。しかしよく見るとあと55分あれば4完が確定しているのだ。ということは今の状況は実質115分4完で、35分余っている。その35分で何ができるか?
もちろん、1か4のうち解けなかったほうに取り組むことができる。少々変則的だが回は60分経過時点で「最終的に5完する」ということで計画が固まった。
最初1に取り組んだときは「とにかくスタートダッシュを切らないと」という焦りもあったのか思考が固定化されていたように思えたが、35分もかけていいというのなら冷静に取り組める。
答案用紙は全然埋まっていないのに、再び1番に取り組むときの自分に焦りは不思議となかった。落ち着いた精神が功を奏したのか、20秒で方針が浮かび、10分程度で答案が書き終わる。 最初の10分詰んだのはなんだったんだwと拍子抜けしてしまった。

さて、これで75分1完だが、実質5完である。正直今回よく考えたら発想がいるような問題がなさそうで、合格者平均点が80点くらいだと思って結構怖かったのだが、ここまでの出来が芳しくない以上もう4番は白紙でもいいと腹を括っていた。一気に不合格の可能性が高まってしまったが2日目の理科に賭けるのみだ。というわけであとは空いている穴を埋める作業だ。
途中何度か4番に寄って考えるも名案は思い付かず。1番があっさりすぎたおかげで時間が余りまくったので、この余った時間で4番…… ではなく論証不足で引かれそうなところをチェックして減点を徹底的に避ける方針にシフトした。

それでも最終的に15分余ったので、最後の望みを賭けて4番に最終チャレンジ。すると他の雑念がすべて消えたからなのか(1)の解き方をようやく閃き、累計30分程度かけてようやく4(1)を攻略。この時点で残り5分。

4(2)、4(3)は典型問題すぎて逆に方針自体は一瞬で立つので、あとは書ききれるかどうかの勝負。しかし5分で間に合うわけもなく、(2)を書き終わった時点で無情にもチャイムが鳴った。(3)でワンチャン1点くらい貰えないかなと「f(x)-x」と「中間値の定理」と殴り書きして数学の試験は終わった。

正直最初の躓きによるミスを広げることなく、さらにリカバリーするために全力を出し切ったので各問題最終的に何を書いたかまでは全く覚えていない。しかしふたを開けてみると113点と書いてあったので、どうやら非常に上手くやれたようだ。
本当に一歩間違えれば数学で爆死して負け組の烙印を押されていた未来もあったということを考えると、本当に東大数学特化の試験対策作戦を考えていてよかったと感じた。150分の試験とはいえ勝負は最初の60分で決まっている。
正直スタートダッシュが切れなかったのは戦略ミスもあったのかもしれない。しかし再序盤のミスはいくらでも巻き返しが効く。この時のためにその巻き返し方を考えていたことが勝因だったのかなと思う。

というわけで参考になるかどうか知りませんが、本番って想定外のことが起こりまくるから本当に怖いねってことで締めさせていただきます。