ぽぴれあの大学入試数学解説ブログ

2014年度東大数学113点のぽぴれあちゃんが受験数学を解いてイキるためのブログです

2024年度京都府立医科大学 第3問 やってみた

2024年度入試の最難関という噂が流れてきたのでやってみました。

日本で最も入るのが難しい学部は医学部というのは今や常識で、当然単科医大は医学部しかないため、理科一類とかいう非医学部を含むどこぞのFラン大学よりも難しいに決まっています。

というわけで問題は適当にggってもらって。僕がかかった時間は30分です。

(1)
図を描きましょう。半径1の円に内接する五角形A1A2A3A4A5があり、条件は以下である。

・△A1A2Bは正三角形 (BはA1A4とA2A5の交点)
・△A3A2=A3A4

とりあえず適当に図を描いてみると……

問題の要求はA3Bの長さを求めることです。皆さんこの図を見てわかりますか? ぼくはわかりません。

まずどういう風にアプローチするかを決めねばいけません。図形問題といえば座標設定やベクトル等色々ありますが、今回これらは使いづらそうです。何故そう感じるのかというと、図形上のあらゆる点を表すのにパラメータを何個設定すればいいのかわかったものではなく、どう考えても計算が面倒だからです。

例えば円の中心を原点として、A1(1,0)とおくとして、まずA2~A5をどう置けばいいのでしょうか。A2(cosα、sinα)、A3(cosβ、sinβ)…という風に角のパラメータを4つも置いていき、2つの条件から関係式を出す… そんなことは試みるまでもなく面倒すぎてやってられません。ベクトルでも同じような事態に陥りそうです。

というわけでここは初等幾何&三角比の出番です。これらのメリットは図形の観察により特殊性を見出し、複雑な計算を避けられることにあります。反面、補助線を引いて相似な図形を見つける等の作業が行われるので補助線が見えなければそのまま詰んで虚空を眺めることになるというデメリットがあります。
また、幾何って角度を追いかけるのがメインになることが多いのですが、今回は特に正三角形と二等辺三角形という角度に対する強い制約がありますからいかにも幾何と相性がよさそうです。

というわけで、図形を観察してみて新発見を探していくのですが、とりあえず図が悪かったので書き直します。条件A3A2=A3A4を起点に図を描くと…

まずこうなる。点A3をてっぺんに描くと、A2とA4が同じ高さのところに来るはず。
そして、条件に合うように点A1を打とうと考えた時、A1A2Bが正三角形という条件から角A2A1A4=60°という隠された条件が見えてくるはずだ。そして…

ではA2A1A4=60°となるA1はどこに打てるかを考えると、そもそも円周角の定理によって、A2A1A4の角度はどこにA1を打とうが不変であるということに気付く。ではその一定値を決めるのは何かというと、角A2A3A4だ。これが120°であればいい。
ということは、△A3A2A4は120°、30°、30°の二等辺三角形で、直線A2A4は線分OA3の垂直二等分線であるという事実までが判明する。

つまり、座標でいうと円の中心をOとし、A3(0,1)、A4(√3/2、1/2)、A2(-√3/2、1/2)までが簡単に置けて、そして点A5は点A1を定めるとA1A2A5=60°となるように勝手に決められるため、A1を動かせば図形全体が決まる (自由度が1という言い方をする) ことまで辿り着けるはずだ。ここまで来ればパラメータ1個で処理可能なので、座標によるアプローチでもそう大変ではない。

このように幾何的な見方で図形を観察することによって一気に簡単になることが、特に円絡みの問題では多かったりする。初等幾何の主役は円であったことを思い出せばこのことはなんとなく納得がいくと思う。


このあとは座標に引き継いでもいいのだが、せっかくなので図形の観察を続けてみよう。

円周角の定理から、角A5も60°になるので△A4A5Bも正三角形になる。
そもそも求めたいのはA3Bの長さなのだが、問題文の訊き方からしてこれは一定値で、しかもBとOが一致するシチュエーションがあるため答えは1であるだろうという予想がつくかと思う。これを示すにはどうすればいいのだろうか?

答えが1固定ということと、頭の中でA1を色々な位置に取ってみる試みをしてみれば、点Bの軌跡はA3を中心とする半径1の円周の一部を描くということがイメージできるはずだ。
これは点A2、O、B、A4は同一円周上にあるということを意味する。同一円周上にあるという証明は

・座標流 → 中心との距離が一定であることを示す
・幾何流 → 円周角に該当する角が等しいことを示す

なので、A3が中心であるということも併せると今回は弦A2A4に対する2つの円周角である、角A2OA4と角A2BA4が等しく120°であるということを示せばいい ……ってそれは図から自明だ。

このように、答えの予想さえついてしまえば、たとえそれが根拠ない勝手な決めつけであったとしても、天下り的に根拠を後から見つけることができることもある。ちなみに僕は数オリ勢でもなんでもないのでこの問題に20分かかった。正直この問題が一番難しい。

(2)
初等幾何の強力なお供、それは正弦定理、余弦定理だ。
これは幾何の延長戦上にあるようなものだし、そもそも正弦定理なんて公式そのものに外接円と書いてあるので絶大な威力を誇るに決まっている。

色々な三角形について考えてみると、△A2A4Bがおあつらえ向きだ。余弦定理で一発。

(3)
五角形A1A2A3A4A5の面積は、5つの三角形に分割して△A2A3A4+△A2BA4+△A1A2B+△A4A5B+△A1BA5となる。もう辺の長さもすべての三角形が120°の角を持つことも判明しているから、1/2・absinθの繰り返しで出せる。

整理すると面積Sは√3/4・((a+b)^2+1)となる。式の形から、Sが最大になることはa+bが最大となることと同値なので、(2)で出したb=(√(12-3a^2)-a)/2という答えを利用して、(√(12-3a^2)+a)の最大を考えてやればよい。適当に微分してください。

a=1のとき面積5√3/4と出るはず。


以上。
(1)がこの方針で出来さえすれば、(2)と(3)はサービス問題と化しますが、この問題は正直言って(1)が一番難しいので部分点を稼ぐという戦略が通用しづらく、非常に難易度が高いと思います。しかも解いてるうちは(1)さえ解ければあとは一瞬って分からないわけですからね。こんなのは後からだからいくらでも言えるもので、実際には(1)に20分もかかるのなら(3)まで終わらせるには50分くらいかかるのでは? と考えるのも自然。

僕はかなり完答主義なんですが、やっぱり(1)から解けないと焦るw