ぽぴれあの大学入試数学解説ブログ

2014年度東大数学113点のぽぴれあちゃんが受験数学を解いてイキるためのブログです

京大数学2024 やってみた

解法暗記勢を殺しに来てるから難しいんじゃないかな。

第1問

かかった時間:12分22秒

(1)のほうが難しい。
この手の色塗り問題は1度は経験した人が多いと思うが、大昔過ぎて忘れていたという人も多いはず。

6か所塗るなら2回以上使う色が出てくるが、隣り合ってはいけないので対面に塗るしかない。ということは2,2,1,1か2,2,2,0しかない。

(i) 2,2,2,0の場合
3面を違う色で塗る確率が3/4×2/4=3/8。それぞれの対面が同じ色ということで1/4ずつなので(1/4)^3を掛けて3/512。

(ii) 2,2,1,1の場合
2,2,2,0の場合から任意の1面を選んで違う色に変えればいいと考える。その面を3色のうちどれにするかで3倍になるので9/512。

(i)、(ii)より3/128。

他にも、
・まず隣り合う3色を決めてから (3/8) 残りの3色の組み合わせを数え上げる (64通り中4通り)
・全部区別しちゃって全体4^6通りから条件を満たす場合の数を気合で数え上げる

などがある。

(2)
100万色くらい用意して塗ることを考えれば滅多に同じ色が塗られないので極限は1?と予想がつく。
確率というものが1以下なのは自明なので、下からはさむものを適当に決めればいい。
これは全部違うものが塗られる確率などが挙げられるが、僕はパッと思いついたのが隣り合う面が違う色×6C2。まあとりあえずp_nより低くて1に収束するものならなんでもいい。
模範解答通りのものを持ってくる必要はどこにもない。

もちろんp_nを実際に求めても問題ないが、極限なので厳密なp_n自体は求めなくてもいいという感覚は持っておきたい (第5問では求めさせられるが…) 。

第2問

かかった時間:7分6秒

z=a+biとして
(a,b)=(4,3)+1.5(cosα+sinα)+t(cosβ+sinβ)で|t|≦2だから半径2.5の円-半径0.5の円になって面積6π。

複素数平面未履修勢だから定石はよく知らんのでノーコメント。

第3問

かかった時間:13分59秒

「ねじれの位置」とかいう、中学校以来3年ぶりに聞く言葉をどう処理するかが全て。

ねじれの位置 ⇔ 2直線が同一平面上にない

4点が同一平面上にないと同値になるので、たとえばPQベクトルとPXベクトルの和でPYベクトルが表せないなどの方針が考えられる。

直感的には中点連結定理からPQ//OBがまずわかり、定義からX,Yが平面OBC上にあるのが明らかなのでQYとPXが同一平面上にあるためにはXY//PQつまりXY//OBのときのx=yなのだろう (つまり答えは逆のx≠y) ということで予想がつけられるが、幾何的に厳密に証明するのは大変。
(そもそも ねじれの位置 ⇔ 4点が同一平面上にない すら自明ではない)

論証の厳密性が怪しいくらいならカッコつけずに「平行でない&交わらない」の定義をそのままベクトルで処理したほうがいい。


第4問

かかった時間:16分30秒

コラッツ予想が題材。a_nが偶数の時の漸化式はなんと使わないので無視してよいw

(1)
最悪1~15まで書き出せば解答できるので落としてはならない。

(2)
むしろ(1)をゴリ押した人のほうが解けるかもしれない。a_kまでが奇数であるような最小のa_0は1,3,7,15と推移していくので「もしかして2^(k+1)-1?」という予想が立てられる。
それをどう示せばいいんだよという話になってくるが、さらに考えてみると「a_0+1が2で割り切れる回数=a_kが偶数になる最小のk」という事実に辿り着ける。
ここまで示すべき命題が明快になればできるはず。

いきなりa_(n+1)+1=3/2・(a_n+1)は気付けると秒殺できるが、なかなか盲点なので気付きにくい。模範解答はどうせこう書いてあるけど、実験→予想→論証のアプローチができるようになっておきたい。


第5問

かかった時間:22分13秒

性格が悪い問題。
まず40点と書いてあるので、5か6をどちらかは取りたいと感じる人は多いと思うが、パッと見で積分するだけでよさそうな5と、なんだかよくわからない6との2択なら多分多くの人が5に取り組むだろう。しかしこの5は本年最難関の問題である。

(1)で「xでの積分だったらめっちゃ簡単なのに!!」と涙を飲んだ受験生数知れず。
というか(2)だけならxで積分してはさみうちすれば秒殺なので、むしろ(1)が邪魔である。
そして(1)を解いてから(2)を考えると、S_aの形に気を取られてこの秒殺ルートに気付きづらいという罠が張ってある。

(1)
そもそも双曲線関数というテーマ自体、上位層とそれ以外とで経験値差がありすぎるので知識問題に片足突っ込んでる。
逆関数を求めてyについて積分するルートを取った場合、逆関数を求めることも、それを積分することも経験が無いと非常にハードルが高い。そもそも2つの関数が似ているので、プラスマイナス間違えて値が定数になってしまったとかそういう事故が多発する (1敗) 。

(2)
S_aの形がキモすぎるのでまっすぐ行くとしんどい。というか普通の層にこれを処理しきるのは無理である。
logx/x→0を利用して (※証明が要るかも) 、√含みの式の逆有理化も駆使して何とか整理できるが、京大らしからぬ作業量の多さに手が止まってしまった人も多そう。
最初に述べたように(2)だけ出題されていたほうが正答率が高かったかもしれない。

第6問

かかった時間:15分2秒

k桁の数は10^(k-1)≦n<10^kの範囲にあるので、これで常用対数をとればlognの整数部分がそのまま桁数-1になるのだ! という常用対数で桁数を求める問題の原理が理解できていれば、LnもNnもだいたい求めることができるため、はさみうちの原理で終わりという人によっては典型的な問題。

というか10の累乗ではさめるかどうかしかポイントが無いので、逆に書くことがない。


おわりに:
最上位層 (東大数学5完安定レベル) って京大数学は30~60分くらい時間が余るのが普通なので、彼らの感覚を真に受けてはいけないし、逆にこの辺の層が難易度を語ってはいけないと思います。なので僕も難易度についてはノーコメントで。

東大数学2024 やってみた

今年も遂にこの季節がやってきた。
2日目が終わり、受験生を煽っても良くなったまあそろそろ好き勝手書いてもいいだろうということで好き勝手に書きます。

総合的に見て、2012よりは難しいが2014よりは簡単。2017並みとか言ってるエアプがなんかいたけどさすがにそこまで簡単ではない。

第1問

かかった時間:14分19秒

まずxy平面上のというワードを見落とし、P(X,Y,Z)とでも置いてしまうとこの世の終わり。
方針は内積を用いて存在条件を絞るというのは誰でも分かると思う。浮かばない人はさすがに勉強不足なので本番補正がどうとか言ってないで勉強してください。

条件は2つあるが、片方を引っ張り出すと例えばこういう式が出てくる。
もちろん分子に√を持ってきて2乗するのだが、ここでまず負の数が絡む不等式を2乗すると符号が変わってしまうという怖さがあるため、先に

まず両辺のマイナスを外して不等号の向きを変えてやり、正の数同士の比較とすることで事故を減らすのがケアレスミスを防ぐテクニックの1つだ。
そしてまあこれを2乗するのだが、2乗して不等号がそのまま同値性を保つ条件として y≧0 があることに気をつけなければならない。これを見落として、最終的な領域にy<0の部分が含まれている答案をTwitterで3個くらい観測した。家でのんびり解いてる大人ですらこの程度なのでまあ平均的受験生なんて結構間違えてるよ。

この罠にさえかからなければ簡単な問題。

第2問

かかった時間:12分19秒

1992年度東工大後期で見たぞこれw と思いきや分母が2乗だった。

(1)
tanαを求めさせる問題があり、具体値が求まるんだからπ/8かπ/12なのだろうというメタ読みをしたクレバーな方もいたかもしれない。

絶対値がついている関数は中身の正負で場合分けするのは大原則。当然、積分区間がxで分かれることになる。
あとは微分してやると∫1/(1+t^2)dtが残ってくるのだが、これの積分Arctanを知っているかどうかで見た瞬間分かるかそうでないかがハッキリ分かれてくる。
まあ、有名すぎるので知らないほうに問題があるといえばそうかもしれない。

(2)
半角公式使うとか、直角二等辺三角形書いて角の2等分定理を使うとかで適当に出してください。

(3)
f'(x)=0なるxがもう求まっているので、あとは端点と停留点の数値を計算し、比較をするのみ。
f(0)とf(1)はさすがに出せないと恥ずかしいので、問題はf(tanα)を正確に出せるかどうか。
あとf(0)=log2/2で、f(1)=π/4-log2/2になるのだが、ここでf(0)とf(1)の大小比較に与えられた0.69<log2<0.7を使うことになる。そう考えるとπの評価もしないといけないのだが、値が違いすぎるのでπ>3程度の評価でOK。どうしても不安なら適当に正六角形でも書いとけ。

引っかかりやすい罠があった第1問と違い特に詰まりそうなポイントが見当たらないし、計算も煩雑ではない (まあArctan知らないとめんどくさいけど) ためこの問題は間違えようがないので、正直大数評価Aでもおかしくないと思っている。

第3問

かかった時間:28分37秒

(1)
解けない人は日本語の勉強でもしておいてください

(2)
2つの点が同じ漸化式で表されるということで等しいことがいえる。確かにこの問題を解くためだけならそれでよい。
ただし力のある人ならば、(3)を見据えて少し実験してみるとnが奇数か偶数かで、行く可能性のある点が綺麗に4:4で分かれることに気付くはずだし、そうなるとnが偶数の時に辿り着くもう2つの点である点(-1,2)にいる確率と点(1,-2)にいる確率もそれぞれ等しいということがなんとなく予想がつくはずで、(3)にスムーズに繋げることができる。
(2)をホントに答えを出すだけで終わらせてしまうとこれらの情報を得るための思考作業がすべて(3)に取り組むタイミングに偏ってしまい、完答のハードルがむしろ上がってしまう。

最初から部分点狙いではなく完答を意識して、(3)を解くためにどのような情報が必要か? まで考えつつ状況を順次捉えていくことでスムーズに次に繋げることができる。
強者は目先の小問の解答のみにはこだわらないものなのだ。

(3)
とりあえずnが奇数の時に0なのは自明なので、nが偶数だけを考えればよく、また求める確率をP_nとしたとして、点(-1,2)にいる確率をQ_nとしたときに確率P_(n+2)とQ_(n+2)をP_nとQ_nで表せそうだということに行き着ければしめたもの。
結構大変だが、最終的に以下の連立漸化式に行き着く。


ただし注意しなければいけないのは、P_nやQ_nは同確率の2点のうちの片方だけの確率であるから普段と違いPn+Qn=1/2である。
また、n=0のときは初期位置の関係で(2,1)にいる確率と(-2,-1)にいる確率が全然等しくないため、初期条件としてはP_2=5/18とP_4=41/162を使わなければならないことに注意が必要だ。
なかなか罠が仕掛けられているため、連立漸化式を解くこと自体は容易ではあるものの、完答に至るのは少々厳しい。当たり前だが答えが出たらn=2、4で実験しよう。

第4問

かかった時間:21分32秒

計算するだけの問題で、そこまでダルくもない。第3問のほうがよっぽどダルい。

(1)
接点+単位法線ベクトル×半径=円の中心であることを利用し、

これを解けばよい。r(t)のほうが先に出るが、問題文よく見たら2乗しろと書いてあった。整式で揃えるためか。めんどくさいなw
なお、法線の傾きが√2/tではなく√2としてしまうミスはありがち。というか僕がミスったw 定義域外とはいえ簡単に検算できるt=0,4で予想と違う半径や中心が出たためおかしいということに気付いて事なきを得る。

(2)
要は円の中心と(3,a)のと距離が半径と一致する… すなわち(c(t)-3)^2+a^2=r(t)^2となるtの個数を求めよということであるため、定数分離して微分してグラフを描く問題だなということは分かるはず。
6次の項が消えて4次式となるため、微分して因数分解できればおk。僕は3t^3/2の微分を3t^2にしてて因数分解できずに「単調増加? いやさすがにおかしいだろ」となっていたw


第5問

かかった時間:11分31秒

回転体の断面積=(最も遠い点)^2-(最も近い点)^2なのは大常識で、ではそれらの点はどこであるのかを突き止めるため、辺AD、辺AB、辺BDのx=tにおける座標を求めればよい。

要はx=tによって
辺BAはt:1-tに内分されるから(t,1-t,0)
辺CAも同じで(t.0,1-t)。ただしこちらは1/2≦t≦1
辺BDは(0,1,0)と(1/2,0,1/2)を結んでいるため2t:1-2tに内分されるから(t、1-2t、t)となる。こちらは0≦t≦1/2。

つまり断面は



こうなる。
一番遠い点までの距離は自明に1-tだが、一番近い点は線分が縮んでいくと本当に垂線が線分と交わるかが怪しいところ。
実際、1-2t≦tとなるt≦1/3では最近点が端点の(1-2t、t)となる。

あとは積分するだけ。∫(1-t)^2dtはわざわざ展開せずに-(1-t)^3/3にしたほうが計算が楽です。

第6問

かかった時間:31分39秒

唯一難しい。

(1)
x(x^2+10x+20)と因数分解出来て、x=±1もしくはx^2+10x+20=±1が必要。ちなみにnは自然数ではなく整数なので、マイナスもあり。

f(1)=31、f(-1)=-11
そして、x^2+10x+20=-1の解x=-3,-7がともに-素数であるため、f(-3)=3、f(-7)=7となり、答えはn=1,-3,-7

(2)
これが結構難しい。個人的には10段階評価で難易度★9 (捨て問に片足突っ込んでる) 。

まず、解の候補は(1)で述べたように、x=±1もしくは、x^2+ax+b=±1の4つの解の全6個。しかし最大6個とはならず、どんなに多くても3個になるということを示せ、と。
(1)の解がちょうど3個なので誘導になっているのかもしれない…?

以下、思考時間20分&答案を書く時間7分で至った流れを列挙してみる。

まず、候補を絞りたい。x=±1のどちらもあり得ないことを示すのか? ((1)では片方が負になって不適だった) と思ったが、これは例えばf(x)=x^3+7x^2+3xとかで簡単に両方満たしてしまう。ここは同時に起きるらしい。ならばこの状況で2次方程式のほうが素数の整数解を持たないことを示す???? なんか無理そう。没。

次に2つの2次方程式x^2+ax+b=1とx^2+ax+b=-1の両方が素数解を持つことはないということを示すという方針に至るのに時間はかからなかった。
冷静に考えたら、この2つの方程式の解がすべて素数ならその時点で4つあるわけで、まずはここを潰すのが先決だったのだ。

さて。x^2+ax+b=1の解の1つをp、x^2+ax+b=-1の解の1つをqとおこう。当然、pとqは素数でないとf(x)が素数にならない。qのほうにマイナスが付くことに注意。

ということは次の連立方程式が成り立つはずだ。

お、これいけるんじゃないか?

とりあえず両辺足して0にしてみたがうまくいかず。そこで両辺引いてbを消してみたら…。

お、いいぞ。

pと-qが素数より、p-q≠0が明らかなのでこれで割ってやると

もう勝ち。左辺が明らかに整数であるため、p-qが±1、±2が必要であり、p-q≧4より矛盾するのだ。
ということで、2つの2次方程式がともに素数解を持つことは無いことが示された。


さて、これにて解の最大数は4となった。しかしここからが苦労した。何とかしてもう1つの可能性を潰さねばならない。ここまでの答案を書きながら考えるも、正直ここで10分くらい詰まってしまった。

4つの候補というのは±1と、2次方程式の2解である。ここで(1)の解がそういえば3つだったなということに気付き、これらの解を観察してみると!

f(1)=31 素数
f(-3)=3、f(-7)=7 2次方程式の2解。素数
f(-1)=-11 素数っぽいが負の数なのでアウト。

これだ!!!

そう。ここからわかることは以下である。
まず、1つが合成数になるので矛盾という方針で行くことはできない。何故なら(1)での例は素数ではないが、マイナス素数ではあるためここに反例が生じてしまっているからだ。
では何故(1)の例では4つ目の解が潰れているのだろう? それは当然この数値が負であるからだ。つまり少なくとも1つ負の数があることを示すというのが目指すべき方向性であるということを(1)は教えてくれている。やはり(1)は誘導であったのだ。

ならば示すべき命題は以下だ。

2次方程式が2つの同符号の解を持つ⇒f(1)とf(-1)のどちらかが負になる

これを言うことができれば解の候補が必然的に1個消滅し、最大数が3となり証明が完了する!

正直、ここに気付いたときの脳汁の出方が半端なかった。この瞬間のために我々は受験数学を解いていると言っても過言ではない。

方針が定まったところで証明していこう。

まず、x^2+ax+b=1の場合を考えよう。2解を素数p、qとするとこれらは素数で、解と係数の関係よりp+q=-a、pq=b-1となる。つまりaは負の数であり、bは正の数である。
しかしf(-1)=-1+a-b<0が明らかなので矛盾する…。

続いてx^2+ax+b=-1の場合。このとき2解は-p、-qとおけてp+q=a、pq=b+1である。
この場合はf(-1)=-1+a-b=p+q-pq=p(1-q)+q≦2(1-q)+q=2-q≦0となる。
負の数ではなく≦0という結果になり、当初の命題とは多少ズレてしまったが、いずれにせよf(-1)は正の素数にはなりえない。

以上より、2次方程式素数解を2つ持つとき、f(-1)が潰れるため解の最大数は3となる……。


正直かなり難しかった。しかしその分解けた時の達成感がひとしおである。

ところで他の解答を見てみたら、ぼくの方針は駿台と同じであった。各予備校で方針が割れていたのが面白い。

それよりも河合塾様が放物線が4格子点を通らないという条件に書き換えることで秒殺できるという別解を紹介していた。やはりプロは格が違う。ぼくはまだこの域には行けていない。いつか行ける日は来るのだろうか…。

個人的難易度は
1 ★3
2 (1) ★3 (2) ★1 (3) ★3
3 (1) ★1 (2) ★3 (3) ★6
4 (1) ★4 (2) ★5
5 ★5
6 (1) ★3 (2) ★9

大阪公立大学 2024年度第2問 やってみた

寝ようと思ったらネットの知り合いからこの問題を解けって言われた

これの2番。


軽く解いてみようと思ったら難しすぎてびっくりした。慣れてないせいなのか1時間かかった。間違いなく今日取り組んだ東大京東工大全17問よりも難しいw

(1)
x^2が虚数 or x^2が負の実数のときにxが虚数になる。当たり前だが重解だとダメである。

よって逆にx^2が0以上の実数解を持つという条件の余事象を考えて、最後に重解を考えてやろう。解の配置問題だ。
定数項が正なのでf(0)>0であるから、条件は軸≧0とD≧0だ。つまりb≦0かつb^2-4c^2≧0で、b≦0だとb-2cが常に負になるため、b+2c≦0という条件に書き換えられる。すなわちb≦-2c

これの逆なので、b>0またはb>-2c。ただし重解持っちゃダメなのでb^2-4c^2≠0つまりb≠2cかつb≠-2cであり、要はここ。

赤がx^2が虚数の場合の領域で、青がx^2が負の数を持つ場合の領域。
境界は含まない。
この見分けがつけられない人は (例:ぼく) 、このあとの問題で詰むことになる。

(2)
最難関。

2重根号を外すためには、√(x+2√y)の形にして、足してx、掛けてyの形にするのが大原則。b^2-4c^2を因数分解するとb+2cとb-2cになる。あとは虚数であることに気を付け、√(b^2-4c^2)=√(4c^2-b^2)iになっていることに気をつければ2重根号を外すことができる。

なお、(1)で出したように√(2c-b)が実数かどうかで話が変わってくるため、

このように解答するのが丁寧だろうか。

なお、2重根号の外し方を知らなくても、こういう因数分解で解くこともできるが、試験場でこれを思いついた人はいるのだろうか。

あくまで別解として。

(3)
xが(実部)+(虚部)の形になっているか、純虚数であるかの2パターンがあることに気付いたかと思う。僕は30分くらい気付かなくて、「え? 常に同一円周上にあるだろ?」と思っていたw

(実部)+(虚部)の形の場合に4点は長方形を作るため同一円周上にあり、純虚数の場合は虚軸上に並ぶため一直線となる。
というわけで同一円周上にある条件は(1)の赤い部分である。

(4)
同一直線上にあるため、(1)の青い部分についての話となる。
解を書き出すと(±√(b-2c)±√(b+2c)/2)iとなり、それらがこのように並んでいるのだ


あとは適当に解いてやると、c=3b/10と出てくる。


感想:東大京大ばっかりやってるとこの手の問題が解けなくなってきてしまうなぁ

東大京大東工大2024 解いてみたメモ

とりあえずかかった時間

東工大
1 15分18秒
2 20分00秒
3 50分24秒
4 49分44秒
5 13分22秒

2時間28分48秒

今年は人間が解くことを想定していないレベルの問題は無し。
4は二項定理の扱いに慣れていないと厳しいが、漸化式を立てる方針でも可能。僕はそうやった。

東大
1 14分19秒
2 12分19秒
3 28分37秒
4 21分32秒
5 11分31秒
6 31分39秒

1時間59分47秒

簡単になったって言われてるけど去年がバケモンすぎただけ。
個人的にはまさに2014に近いと思ってる。いわゆる捨て問レベルの問題が無い&オーソドックスな手法を行使するだけなので一定以上の実力がある人にはメチャクチャ簡単に見えるタイプのセット。なので上位層は5完半か6完してると思うが、ボーダーライン層の得点は案外上がらないんじゃないかなって気がしている。
2014と同様に計算量自体はエグいので、問題を一目見た時の印象と実際の完答難易度は大違い。プレッシャーがかかる試験場で解くと尚更。
2013と2014はボーダーラインの得点は大差がなく、合格最低点はむしろ2013よりも下がった (実は国語の採点基準が突然厳しくなって平均15点程度下がったからという背景があるw) が、今年もそうなっても何らおかしくないと僕は思っている。

手を動かしてない人間共がこぞって簡単とか煽ってるが、方針が立っただけで完答できるのなら苦労はない。

ただ、「上位層は」これ5完半か6完するので、受験生がTwitterを見るのは精神衛生上よろしくないと思う。

京大
1 12分22秒
2 7分6秒
3 13分59秒
4 16分30秒
5 22分13秒
6 15分2秒

1時間27分12秒

正直今回めちゃくちゃ難しいと思います。

京大は東大と違って作業量自体は多くなく、やり方が見えたら一瞬で答案が書き終わることがほとんどですし、そもそも京大の難しさは「一から全部組み立てて答案を作成すること」にあるためえげつないくらい経験年数の差が出ます。
例えば受験生は「ねじれの位置」という言葉を聞くと戸惑うが、それの意味を熟知している本職受験数学の人間が戸惑うわけないので、そこで大差が出るのは当たり前。さらに知っての通り、やりたいことが頭の中でわかっていたとしてもそれを答案にちゃんと書くのにも訓練がいるのです。その域に到達するのに何年かかるんだっていうね。受験生って高校数学3年しかやってないんだぞ。

東大はまだ受験生のほうが瞬発力・計算力でベテランを上回ることがあるが、京大に関しては受験生と経験豊富な大人とではまるで勝負にならないので、自分が解けるからって簡単という分析は間違っている。正直3完できたら平均的合格点を上回っているのではないか? と思います。

受験数学テクニックその1 「正四面体の対辺は垂直」

正四面体の対辺は垂直である。

雑に描いた図からはとても想像できないが、事実である。
恐らく空間ベクトルの問題演習で1度は示したことがあるんじゃないだろうか?
内積を使えば非常に簡単に示せる。

実はこの特性を用いた座標の置き方がある。
それがこちら!!

1辺の長さが1の正四面体をこのように座標を設定して置くことができる。
疑うのならすべての辺の長さを計算してみるといい。1になるはずだ。

この視点が活かされるのはどういう場面だろうか?
例えば次のような問題がめちゃくちゃ簡単に解けるようになる。

2014年度 首都大学東京 後期


一辺が√2になったので、√2倍に相似拡大してみよう。また、頂点の名前も問題文に合うように書き直す。Oが原点じゃないのがキモいがまあ仕方ない。


それでは問題を解いていこう。

(1)
図より自明。1。

(2)
Pの座標が(t,0,0)であることは明らかで、MN (x軸) とPQが直交するのでQのx座標もtであることは明らかである。
すなわちOC上の点Qの座標は(t、-t/√2、-(1-t)/√2)であり、その距離は√(t^2-t+1/2)となる。 (y,z座標はt:1-tに内分と考えたら一瞬で出る)

(3)
π∫(t^2-t+1/2)dtを0~1まで積分すればよい。π/3

以上。かかった時間3分。

どちらかというと、対辺が垂直であるという性質というより、辺の中点M、Nがテーマとなった時に威力を発揮する方法だったりする。

なお、この方法はめちゃくちゃテクニカルなくせに使える機会がほとんどないため、このように一発ネタとして紹介してみんなを驚かせるくらいの用途にしか使えない。

1994年度 東大後期数学 やってみた

しばらく放置していましたが、ようやく重い腰を上げて再開です。

第1問 難易度:C*****

かかった時間:49分42秒

新たな記号がいきなり定義されているのでわかりづらいですが、いわゆるn進数みたいなものを階乗で定義している、いわば階乗進数というものがテーマの問題です。

(1)
2進数で喩えると 111111…11 = 100000…00 - 1 であることを示せと言われているようなものです。そう聞くと自明だろって気がしますが、(1)と(2)はこの階乗進数というものを本当に位取り記数法の一種として扱ってよいのかを判断するための設問ですから、ちゃんと証明してやらないといけません。

これは左辺と右辺をバラしてやって

この等式が成り立つことと同値です。
帰納法で示してもいいのですが、階差表現に気付けると非常に楽です。すなわち

こういうこと。
これの総和を取れば(m+1)!-1になることは容易に納得できるでしょう。

(2)
一意性と完全性を示せという問題。階乗進数っていう話が見えてる人にとっては、(1)で繰り上がりを示した時点でもはや当たり前のことのように思えますが、そうであるからこそ逆にどのように示せばいいのかが難しいです。僕は今回これを考えるのに非常に苦労しました。

やっぱり帰納法が簡単なのかなと思い、桁数に関する帰納法を試みてみる。
帰納法の仮定をどう使うかを考えた時にすぐ思いつくのは…

こういう風に分離して、「1~m!-1までを一意で表せると仮定したら、m!~(m+1)!-1が一意で表せる」を帰納法で示すというのが一番簡単な気がします。ただし最高位の数字は0でないものとするという制約があるので、ここではa_(m-1)=0を許容するような便宜上の表記であるとかそういう注釈を入れなければいけない。つまり10進法で言うと、0000120とかそういう表現をここでは許容しますがそれは120と同じなので一意性を崩しませんよみたいなことを書かなければいけないのですが、僕の言語化能力が低く、どう書けばいいのかがよくわかりませんw
あと分離したほうが全部0ってのもあるのでね。これの注釈を書くのがめんどくさすぎます。

まあそれは置いといて、これならa_m×m!+(0~m!-1)となりますから、a_mを1≦a_m≦mで動かすと網羅できることになります。

……なんかこれを曖昧さを排除して記述することが僕の日本語力では無理そうなので、渋々別の方法で行きたいと思います。

一意性を示すためには、要は2通りで表示できると仮定したら矛盾するということを言えばよいのです。この発想はこの手の問題ではよくやるので馴染みが深い人も多いでしょう。

こういう風に2通りで表示できるとして…

これの各項の係数がすべて0でないと矛盾することを言えばよろしいです。
なお、両方桁数が同じということすら自明でないため、桁数が違ったら矛盾するということも言わねばなりません。不等式評価すればいける。
これは、初めて0でなくなるところを(a_k-b_k)・k!として、これはk!の倍数になるのだが、(1)よりk-1桁のフルビットでもk!-1なので届かず矛盾ということで示せます。フルビットが最大値なのはさすがに自明でいいと思います。

これで一意性は示せたので、続いて完全性 (全部網羅されていること) を示しましょう。色々やり方はありますが、せっかく(1)で繰り上がりを示したのですから、整数kが表示できるとして、その表示を下の位から見ていって初めてa_i≠iになるところを考えると、iを+1してそれより下をすべて0にしたものはk+1となるということで帰納法で示すのが綺麗か? と思ったので僕はそうしました。

示すべきことがかなり自明寄りなので、自分の力量と相談してきちんと書けるような方向性で検討しないと物凄く失点するタイプの問題だと思います。

(3)
最後は具体的な表示を求めてきますが、要求されているのは割り算です。n!は言うまでもなく[1,0,0,0,…,0]nで表示されるのですが、これを5で割るとどうなりますかということを問うている。

割りましょう。

さて、商を立てたいところですが、どんな数字が立つのかがこのままだとなんかよくわかりません。
筆算の基本を思い返してみると、そういえば繰り下がりのある引き算では、23-7とかは3から7が引けないので10の位から1を借りてきて、10+(13-7)=10+6=16とするというテクニックがありました。

同じことをしてみると解決しそうです。すなわち、(n-1)!の位に商が立ちそうなのだがよくわからないため、n!の位から借りてくる。
当然、n!というのはn×(n-1)!なため、借りてきた結果はこうなる。


こ… これならできる!!

さて商は立つとはいえ、当たり前ですが各位の数字は整数しか許されないためnを5で割った余りによって場合分けが生じます。
まず最も簡単な、nが5の倍数の場合。

なんだこれw まあ、今はとりあえず計算するための殴り書きみたいなもんなので表記が数学的に非常に怪しいことには目をつぶりましょう。

nが5で割ると1余る数の場合。

商を立てて繰り下がるたびに、また1個下の位に数字を貸してやって商を立てていく。これを繰り返せばすべて解決しそうです。どんどん行きましょう。

nが5で割ると2余る数の場合。

どうやら単純に並ぶわけではないようだ。
しかしやるべきことは単純そうです。このままあと2つ割り算すれば終わりですね。
nが5で割ると3余る数の場合。

はいストップ! みんな注目!
余り見てください。今までのように「とりあえず(n-3)/5に係数かけたやつが商なんだろ」ってノリでやったら余りが6と出てきました。5で割っているんだから6余るっていうのは誤りです。ならば商はさらに+1されなければなりません。すなわち…

こうじゃないといけないってわけなんですよね。これに気付かないと商が[(n-3)/5, 3(n-3)/5, 6(n-3)/5, 6(n-3)/5, 0, …, 0]になって間違えます。

それに気をつけつつ、最後はnが5で割って4余る数の場合。

よし。答えは出揃った。終わり!
さて、答案を書きましょう……。

……

…………?

え、この意味不明な筆算書くの?

これはこれで面白いかとは思いますが、答案に書くのならもうちょっとまともな文章にしたいところです。

まともな文章にするために、割り算の商と余りの関係を式にしちゃいましょう。例えばn≡4 (mod5) なら
n!/5=(n-4)/5×(n-1)!+4×(n-1)!/5
4×(n-1)!/5=(4n-6)/5×(n-2)!+2×(n-2)!/5
……
4(n-4)×(n-4)!/5=4(n-4)/5×(n-4)!

であるから、n!/5=(n-4)/5×(n-1)!+(4n-6)/5×(n-2)!+…+4(n-4)/5×(n-4)!となるので表示は…

という風に書くということです。
あとは(2)より一意性が示せたんだから、1個見つけたらそれが答えですみたいなことを言ってやれば終わり。

略解なら簡単に書けるのにきちんと答案にするのは難しいなーって感じました。というかこういうのって実際どこまで記述を省略してもいいの?

あまりに長すぎて書いてて嫌になってきました。これは記事用なので丁寧に書きましたが、殴り書き答案ですら書くのに30分くらいかかってます。
やむを得ず記述を省略しているところがありますがこれで減点されたらもう知らんって感じです。(3)は各項が整数かつ0≦a_k≦kを満たすことはさすがに断っておかないといけないと感じたためいちいち書いています。
いつもこれくらい丁寧に書くんですけど、受験生の時は模試のたびに毎回論証不足扱いで合計10点くらい引かれてたんだよな…。東大模試で120点満点取る人って解ける解けない以前にどういう答案書いてるんだろう。

なお、(2)で階乗進数の加法を自明として使ってしまっているのでここで減点される可能性があります。ただもう書き直したり書き方の方針を変えるだけの気力がなく断念。つーか結局これどこまでを自明にしていいんだ?



第2問 難易度:C******

かかった時間:46分8秒

図形を転がす問題は中学受験では飽きるほどやりましたが、大学受験で扱うのはなかなか珍しい? いや、サイクロイドとかでやるか…。

(1)

円を1周させると、円が転がる距離は図の青線で示した部分。つまり4l-8です。
図形を転がすと、転がった距離と同じ周長に相当する分だけ図形が回転するというのは常識で、ある点Pがちょうど同じ位置に戻ってきたということは円周2πの整数倍の距離を転がったことに他なりません。

すなわち4l-8=2nπとなり、l=2+nπ/2が答えとなります。 (n≧1、nは整数)

(2)
最小とあるのでl=2+π/2で考えることになりました。さて、円上のある点Pが動く軌跡の長さの範囲を求めよという問題なのですが、当然まずはPの動きを追わねばなりません。
スタート地点の円の中心を原点にした座標をとって、P(cosθ、sinθ)とおけば軌跡の長さはθの関数で表せる… というところまでは一定以上の経験があれば誰もが思いつくところでしょう。その関数とは何か? というのを導くことがまずやるべきことです。

ひとまず左下→右下に向かう際の軌跡の長さをL(θ)としましょう。以降は向きを変えてるだけなので対称性から簡単に求まります。
具体的には今回は正方形の一辺の長さを円がちょうど1周するようにとっている (最小とはそういうこと) ので、右下に到達した時点で円は90°回転しているはず。続いて90°傾いた壁を登るため、さらに+90°されて最初の位置から実質180°回転させた位置からスタート。右下→右上の軌跡の長さはL(θ+π)であるといえるでしょう。

L(θ)が明らかに2π周期であることに気を付けると、全体の軌跡の長さは2(L(θ)+L(θ+π))である。まあ、とりあえずL(θ)の正体を突き止めることが先決です。

L(θ)を得るにはまずPの動きを追わねばなりません。円が距離tだけ転がると、円周の長さtに相当する分だけ回転する… 半径1で長さ=ラジアン角なのですなわちPの座標は
P(t+cos(θ-t)、sin(θ-t))とかけるはずです。
軌跡の長さがテーマなのですが、まずそもそも曲線の長さって皆さん知ってますかね? これは数Ⅲの積分という単元の最後の最後でようやく登場するので恐らく知っている人は少ないのではないでしょうか。

折れ線の長さの極限と解釈すれば覚えやすいはず。とりあえずこれ計算してください。積分区間は0~π/2です。

√(1+sinx)型の積分は、π/2ずらしてcosにして半角公式で√外すのが僕の好み。
角がなんかややこしくてこのままだと絶対ミスりそうなので、適当に置換してやったほうがよさそうなのでそうします。

ほら。こっちのほうが間違えなさそうでしょ。
で、絶対値を外すためには途中でcosの正負が切り替わるかどうか… すなわち積分区間が-π/2を跨ぐかどうかで場合分けが必要そうです。
すなわち0≦θ≦3π/2と3π/2<θ<2πで場合分けが必要。ここで「え? πじゃなくて3π/2が境界なの?」と戸惑って3度見くらいしました。

まあ間違いが僕には見つからなかったので進めるか…。境界さえ気をつければ定積分は簡単すぎるのですぐに計算できるでしょう。sin(π/4-θ/2)=(cos(θ/2)-sin(θ/2))/√2とかしなきゃいけないけど。ちなみに僕はこういうの加法定理にあてはめないとわからない。

計算していくとこうなるはず。

なんか怖いからθ=3π/2で検算。あってた。
で、求めるべきは2(L(θ)+L(θ+π))ですからこれの範囲を求めるわけですが、とりあえず明らかに周期πなので0≦θ<πの範囲で考えてよく、さらに区間が変わる変わらないで場合分けが行われるので、0≦θ≦π/2とπ/2<θ<πの2つの場合を考えることになります。

合成でまとめられます。αの値がヤバいことになってますが、sinα>1/√2なのでπ/4<α<π/2となり、0≦θ≦π/2の範囲でθ/2+α=π/2になるθが存在します。なので最大値4√(4-2√2)となり、最小値は端点を代入して4となります。もちろんこれは連続関数なのでこの間の値を連続的にとるはず。

さっきとαが違いますけど、0<α<π/4なのでθ/2+α=π/2になるθが以下略で、最小値8-4√(4-2√2)、最大値4。

忘れずに2倍して、軌跡の長さをLとおくと
16-8√(4-2√2)≦L≦8√(4-2√2)
と出ます。ふー、疲れた…。

それにしても、+8が出る出ないの図形的意味ってなんなんだろうな。



第3問 難易度:D******

かかった時間:47分18秒

およそ前期では見ないような一風変わった設定の問題が出てきました。後期っぽくなってきましたね。

(1)
これは簡単そう。第1工程→第2工程→検査という流れで、検査によって合格、1に戻る、2に戻るの3択になる。日曜日はお休みらしいので6日以内に合格すればよいのですが、パターンは限られているので全部書き出しちゃいましょう。


まずもっとも単純なのはストレート合格パターン。
2つ目は1回目の検査で第1工程に欠陥が見つかり、次に合格してギリギリ間に合うパターン。
3つ目は1回目の検査で第2工程に欠陥が見つかり、次に合格して間に合うパターン。もう1度第2工程に欠陥があると土曜日に第2工程やり直しとなり、検査が来週に持ち越しになるのでアウト。
というわけでこの3パターンしかありません。

それぞれ確率を計算してやると、まずAは欠陥無しなので(1-p)の欠陥無しパターンを2連続通過。(1-p)^2。
Bは第1工程に欠陥ありなので確率p。次は2連続通過で(1-p)^2。掛けてp(1-p)^2。
Cは第1工程通過、第2工程アウトなのでp(1-p)。次は通過なので(1-p)。掛けてp(1-p)^2。

全部合わせると(2p+1)(1-p)^2となります。

この問題は大丈夫でしょう。

(2)
次はP(n)を求める問題。(3)は計算すればなんとかなりそうなので、明らかにこの小問が一番重そうです。
一般のnについて求めるのですからまず思いつくのは確率漸化式です。というわけで漸化式を立てるべく状況を掴むため、(1)で作った表を眺めつつn週間の工事を考えてみると、どうも第2工程で詰まった場合、月曜日に検査か第2工程のどちらをやるかが不明なような…?
何が言いたいかというと、(1)でのCパターンで金曜日に合格できなかったとすると、次は土曜日に第2工程、月曜に検査となります。それに対しBパターンにおいてもし土曜日に第2工程に戻されたとすると、以降は月曜に第2工程、火曜に検査となり1日ずれるわけです。
つまりP(n+1)をP(n)で表そうとしたときに、n週目終了時の状況が「第1工程で詰んでる」、「第2工程で詰んでて月曜が第2工程」、「第2工程で詰んでて月曜が検査」とn週目終了時に3パターン考えられて、終わっている確率Pnに加えてQn、Rn、Snの4つを用意しなければならない…?

嫌すぎ。

瞬時に別判断、別ルート。

状況を整理しましょう。
まずこの工事が完了するかどうかは「検査」が決めます。というわけでこの検査に注目します。
ストレート合格は言うまでもなく3日です。しかし検査の結果第1工程不合格になるともう1度やり直しになり、次の検査は3日後です。つまり基本3日で終わるが不合格になると+3日と考えられる。
同じように考えると第2工程不合格の場合は次の検査は2日後なので、+2日と考える。
ならば第1工程でx浪、第2工程でy浪とすると工事完了までの日数は3x+2y+3日となるはずです。
すなわちP(n)というのは、3x+2y+3≦6nとなる確率を表しているのだ。なるほど、直接求めればいいのか。

ということで3x+2y+3≦6n、x,y≧0を満たす格子点の数を数えればよいことになる? いや、違うな。格子点の数そのものを求めるのではない。それぞれの(x,y)についてそれが起きる確率を総和しなければならないのです。難しくないかコレ…?

(1)に適用しつつ考えます。まず3x+2y+3≦6を満たす0以上の整数x,yの組は(x,y)=(0,0)、(1,0)、(0,1)の3組あります。それぞれがA、B、Cのパターンに該当します。
そして(x,y)=(0,0)となる確率は(1-p)^2、(x,y)=(1,0)、(0,1)となる確率がp(1-p)^2となったのでした。全部足してP(1)=(2p+1)(1-p)^2。ふむ。
ここで気付くべきは、(1-p)^2というのが必ず後ろにくっついているという点。というのもこれはよくよく考えれば当たり前で、検査で何回戻されようが必ず欠陥を通過する(1-p)の抽選を2回くぐり抜ければ合格となり、欠陥が出る確率pを引くと戻されるのです。
つまり戻される数の合計x+y=kに対し、確率はp^k・(1-p)^2となるのです。これの総和を求めればP(n)が求まります。

……なんか話がややこしくなってきたな。

図にするとこういう感じ。

3x+2y+3≦6n、x,y≧0を満たす範囲の格子点に対し、x+y=kの直線上にあるものがそれぞれp^k・(1-p)^2という確率を持っているため、これを全て足し合わせろということ。
当然、x+y=kと境界線3x+2y+3=6nが交わるか否かで話が変わってくるので、0≦k≦2n-1と、2n≦k≦3n-2とで場合分けが行われることが予想されます。ダルすぎない?

そうは言っても他にいい方法も思いつかないのでやるしかない。

まず、2n≦k≦3n-2とかいう範囲がn=1だと存在しないので、以降はn≧2であるものとします。
まず簡単そうな0≦k≦2n-1から。これは(0,k)から(k,0)まで全てOKなので格子点がk+1個あります。すなわち確率の総和は(k+1)(1-p)^2・p^kであり、これを0≦k≦2n-1でΣをとる。とりあえず(1-p)^2はどうせ固定で出てくるのであとで掛けるとしてどっかに行ってもらって、(k+1)・p^kの総和を求めましょう。

おお、この形の総和を求める問題なら見慣れているぞ。
この手のものは公比を掛けたものとの差を取ってやれば等比数列が出てくるため、それで総和が出せたのでした。すなわち

こういうこと。この調子でもう片方もやってみよう。

2n≦k≦3n-2においては、x+y=kと3x+2y+3=6nとの交点までの格子点しか数えないので、まずこの交点を求める必要があります。その交点は(6n-2k-3、-6n+3k+3)であるため、(0,k)から(6n-2k-3、-6n+3k+3)までの6n-2k-2個の格子点があることになります。
つまり確率の総和は(6n-2k-2)(1-p)^2・p^kとなります。頑張ってこれのΣを取りましょう。

また(1-p)^2にはどっか行ってもらって、総和は

うーん…? なんかよくわからないな。とりあえず2p^2nで括ってやるか。

これならさっきと同じでいけそうです。

よし出た。あとは(1-p)(Sn+Tn)を計算してやると、答えがこのように出るはず。

これはn=1の時も成立。p=0,1で検算すると確率が1と0になる(自明) ので合ってそう。
やっと終わった……。

(3)
まだあるのかよ…。

p=1/2を代入すると1-P(n)は次のようになります。


これが1/1000を下回る最小のnを求めろと言っています。
n=1から順に代入でもいいんですが、さすがにちょっとセンスが無いのでちょっと式変形。

3-2(1/2)^nの部分って2以上なので、とりあえず(1/4)^n<1/2000じゃないとお話になりません。この時点でn≦5が全部アウトです。
で、n=6だと(1/4)^6=1/4096なんですが、3-以下略の部分が明らかに3未満なので、掛けても1/1000を下回るのは自明です。
というわけで答えは6です。終わり。

答案も大雑把に評価したものを書いとけばいいので3分で書き終わります。わざわざ1/8の5乗は…? とかチマチマ計算して具体値を出すより圧倒的に簡単です。

というわけで最後はおまけ問題でした。

2020年度東大数学第1問 解説

これ。


まず問題文の言っている意味が難解ですが、要はある実数pがあり

①x>pを満たす任意の実数xについて不等式が3つとも満たされる
②逆にx≦pの範囲に不等式が3つとも満たされるxは一切存在しない。

ということを言っています。

ポイントは、右側はずっと不等式が満たされ、左側は一瞬たりとも全てが満たされてはならないということ。

今簡単に言いましたが、ここの読み取りが第一のハードルです。

不等式を3つ眺めると、どれも2次関数に見えます。
2次関数ということはこの形。

おや?
2次>0の形ならものすごく左側 (x→-∞) に行くと+∞に吹っ飛んでいくので、いづれ不等式を満たす時が来てしまいそうです。
そして2次<0の形なら、ものすごく右側 (x→+∞) に行くと-∞に吹っ飛んでいくので、いづれ不等式が満たされなくなる時が来てしまいそうです。

いずれも、問題文が示す条件に反してしまいますね。
そう、2次関数は軸に対し対称であるため、右側はずっと大きく、左側はずっと小さいなんてことはありません。軸+100が条件を満たすなら、軸-100も条件を満たす、あるいはその逆でないとおかしいわけです。

ではどうすればいいのか? 答えは簡単。2次の係数が>0でも<0でも都合が悪いというのなら、=0にして直線にするほかありません。

というわけで、(1)(2)はここまでの議論でなんとなく、書けばよいことは掴めます。

こういう掴みどころが無さそうな問題を考える時に、よく「x=0、x=1などのわかりやすい値を代入する」という手段を取ることがあると思いますが、明日から「x→∞、x→-∞を考えてみる」という択を頭の中に追加しましょう。

そして=0がわかったということは、定数項が0であるものが存在し、例えばax^2+bx>0とするとこれは原点を通るため、p=0が必要になるということがわかるため(3)が終わります (もちろんa,b=0もあり得るので場合分けして全パターン潰しましょう) 。


なーんだ、これで終わりじゃないか。見掛け倒しだな。東大Fランか???

解答を書きましょう。

……

…………

どう書けばいいんだコレ!?

そう。この問題の解答を書くことはなかなか難しいのです。
言うまでもなく、この問題のテーマは論証
高校数学は算術だと揶揄されることがあり、微積などの計算をきちんと合わせることができることが重視されているという風潮があります。非常に抽象的な問いに対して不備なく論理を組み立てることができるかを試しているこの問題は、数学に対する歪んだ認識が蔓延している現状に対する東大からの警告なのかもしれません。それは25年前に公式暗記数学に対する警鐘と言われる加法定理の証明を出題した時と同様に…。

大学生以上なら極限というものに対してさらなる知識と理解が得られるため、解答を書くことは容易でしょう。しかし数Ⅲを初めて精々1,2年の一般的高校生にとってこの問題の解答を書くことはそう簡単ではないと予想します。

(1) a,b,c<0だと上に凸の放物線となり、x→∞で-∞に発散するため、十分大きなxに対して<0となるため矛盾
(2) a,b,c>0だと下に凸の放物線となり、x→-∞で-∞に発散するため、十分 (負の方向に) 大きなx (<p) に対して>0となるため矛盾

こういう風なことを書けばよいのですが、+∞に発散する→十分大きなxに対して>0が成り立つという言い換えすら初学者レベルには厳しい。そもそも発散というのがどういうことなのかがよく分かっていない人だっています。そんなバカなと思うかもしれませんが、私も数Ⅲを初めて半年くらいの頃は不定形というのがどういうもので、どういうパターンがあるのかすらよくわかっていなかったのですから、不思議な話ではありません。

というかそれ以前の問題として、まず背理法を使うんだという考えにすら至らないという事態すら考えられます。問題文の意味不明さに敬遠してそもそも飛ばして二度と戻ってこなかった人もいるでしょう。

結局こういうのって慣れの問題なんですよね。難しい求積問題とかばっかり解いていて、こういうものに足元を掬われて取れる20点を吹き飛ばしてしまう方がよほど重罪だと思いました。

以上。