ぽぴれあの大学入試数学解説ブログ

2014年度東大数学113点のぽぴれあちゃんが受験数学を解いてイキるためのブログです

1995年度 東大後期数学 やってみた

なかなかまとまった時間が取れない……

第1問 難易度:D****

かかった時間:29分35秒

パスカルの三角形に関する問題です。n=12程度ならひたすら書き出せば求まりそうなものですが、今回はそういうごり押しはせずにちゃんとやっていきます。

(1)
まずパスカルの三角形って皆さん見たことありますかね。定義式は組み合わせの記号Cを使って書かれていますが……

各数字は、このように左上の数字と右上の数字の和になっています。
これって漸化式でやってることそのまんまなので、この超基本的性質を追っていけば漸化式がすぐさま立てられそうです。

図のように色分けしてみればもはや一目瞭然です。(実際の試験では色分けできませんが……) 
もうこれで漸化式が出てきてしまいました。以上! (1)完ッ!!

……はい嘘です。これはまだ予想による決めつけにすぎないので、ちゃんと証明しないといけません。どうするか。

これは各々の定義式に戻ってしまえばいいです。パスカルの三角形の性質よりn_C_m+n_C_(m+1)=(n+1)_C_(m+1)が成り立つので、これを用いて等式が成り立ちますねってことを半分天下り的に言ってしまえばOK。
なおパスカルの三角形の性質は使って減点になることは無いと思います。つーか問題文に堂々と背景知識が書いてあって、使っちゃダメだったら意味不明だろっていうね。

(2)
漸化式がかなりシンプルなので簡単に解けそうですが、そう簡単にはいかないのが難しいところ。そもそも二項係数から直接求められるのではというのは今回はやめて、素直に誘導に乗ってやります。

関係式を使ってQとRを消去すると、次のような4項間漸化式が出てきます。

3項間はみんな解けるでしょうが、4項間なんて見たことないという人も多いのでは。それではこれを解くにはどうすればいいのか?

特性方程式x^3-3x^2+3x-2=(x-2)(x^2-x+1)=0を解くと、x=2、-ω-ω^2と出てきます。もちろんωというのは1の3乗根のうち1じゃないもののことです。
嫌な予感がしてきましたが、話を続けます。特性解2を利用して例えば以下のように変形できる。

これで数列P_(n+1)-2P_nというかたまりができたので、さらに変形して

こうなる。なお、この変形には特性解だけでなく、ωに関する基本関係式ω^2+ω+1=0も活用しています。

ちょっと係数が虚数なのと横に長いってだけでこれはただの3項間漸化式と同じです。これを解くと

こういうのが出てきます。
もう1回同じようなことをすればP_nが具体的に出てきそうですが、今回はちょっと違う方法でやってみた。
特性方程式のx^2-x+1の部分を利用した変形により

こうなり、数列P_(n+2)-P_(n+1)+P_n=2^nというのが容易に出てきます (簡単にP_0=P_1=P_2=1がわかる)
そして、これとP_(n+1)-2P_nをうまく足し引きすればP_nだけが残ってくれるのでこれで解決します。具体的には


こういうこと。
1つ求まってしまえばこっちのもの。(1)の漸化式から残りも求めてしまいましょう。
ω^3=1を利用してできるだけ整理すると、こうなるはず

(3)
ボーナス問題。n=12を代入しましょう。P_12=1366、Q_12=1365、R_12=1365になります。

なお、僕はこうやったのですが、P_n=2^n-Q_nとかを使ってmod3で場合分けしたらめっちゃ簡単だったらしいね。



第2問 難易度:C***

かかった時間:19分10秒

「与えられた平面」とか書いてるから、一瞬空間図形の問題かと思いましたが、そういうわけではなくて一安心。それにしても後期って問題文の書き方がなんか独特だなあ。

(1)

条件から、3点A,B,CはP,Qを中心とする半径1の円の周または内部にあることは容易にわかり、面積を最大にするには頂点は周上にあることが必要であることを示したい。

自明だろとしか思えませんが、これを証明するにはどうすればいいのだろうか?

方針としては、頂点が円周上に無い場合に、もっと大きな面積を持つ三角形が作れるということを示せばよさそうです。しかしそれを一体どう表現して論証すればいいのだ…? 計算するだけだった大問1よりこういうやつのほうが難しいな…。

いま、点Aが円周上に無いと仮定しましょう。するとどこかに辺BCがあるのですが、イメージとしてはこのような感じである。

 

要は、辺BCを底辺としたときの三角形の高さが、円周上にある時よりも短いから面積が小さいよねというお話。
というわけで、点Aから辺BCに下ろした垂線の延長戦が円と交わる点をA'とし、△A'BC>△ABCを示せればよいのではなかろうか?
もちろん点B、Cについても同様となる。

(2)
点が3つあるのだから、いずれか2つの点は同一円周上にある (鳩ノ巣論法) 。対称性より今回はそれを円周E上に点A、Bがあると考えたというわけです。これ自体は何も難しいことは無いごくごく自然の発想です。

それでは垂線の長さpを固定するとはどういうことだろうか? 垂線の長さがpとなるときの弦ABの動きを追ってみよう。すると…



弦ABの中点は、点Pを中心とした半径pの円周上をぐるぐる回るということが分かるはずです。
弦ABの長さは固定ですから、三角形の面積を最大にするためにはやはり高さが最大となるように点Cを定めることを考えればよさそうです。そのような点Cは何かと言いますと、これは点Qを通りABに垂直な直線と円周Fとの交点 (遠いほう) となります。
何故ならば円と直線の基本的な位置関係の性質により、まず円周上の点と直線との距離の最大・最小は中心を通る垂線と円との交点であるから。

そしてそれを最大とするA,B,Cの配置ですが、これはまずABの中点 (Mとでもしましょう) と点Cとの距離は、折れ線MP+PQ+QC=2+p以下であり、さらに点Cと直線ABとの距離以上であることも明らかである。

すなわち (高さ)≦MC≦2+p が成立し、(高さ)≦2+pの等号がAB⊥PQのときに成り立つため、これで示されるというわけです。

(3)
高さ2+pはもう分かったので、底辺の長さが分かれば面積が求まります。その長さは三平方の定理から2√(1-p^2)とすぐ求まります。
つまり面積は(2+p)√(1-p^2)であり、あとはpを動かして最大値を求めろと言っているので微分するだけです。ここまで来たらさすがに簡単です。

根号を含む式の微分はめんどくさいので、中に入れて中身の整式のmax、minを調べましょう。
あとは流れで。




第3問 難易度:C****


かかった時間:17分13秒

ゲーム系確率の問題。Aは公開情報無しでカードを出すのに対し、BはAのカードを見てから後出しができるので、明らかにB有利のクソゲーです。

(1)
どっちから出しても同じに決まってるとしか思えないのですが、こういう感覚ってゲーマーだから持ってるものなのかな…。
3分ほど考えて、2人が持っているカードの数字a,b,c,dについて、a>b>c>dであるとしてAとBがそれぞれ何を持っているかで対戦の行方をシミュレートすることにします。

Aが持っているカードが
(i) aとb
相手のカードのほうが弱いため負けるわけないので、どう出そうが2点です。

(ii) cとd
逆に勝てるカードが無いため、どう出そうが0点です。

(iii) aとd
必勝と必敗が1枚ずつなので、どう出そうが1点です。

(iv) bとc
さっきの逆で、B君が必勝と必敗の組み合わせを持っているのでどう出そうが1点です。

(v) aとc
ようやく考える余地が出てきました。B君の手持ちはbとdです。
A君がaを出したとしましょう。B君はどうせ負けるので、2枚目で勝つ確率を上げるために弱いほうのdを提出するはずです。
すると、2枚目はA君のcとB君のbがぶつかるため、1勝1敗で1点です。

ではA君がcを出したら…? B君は喜んでbをぶつけてA君は負けますが、2枚目でA君のaとB君のdがぶつかってA君が勝つため、やはり1勝1敗で1点です。

(vi) bとd
さっきと同じように考えます。B君の手持ちはaとc。
A君がまずbを出すと、B君がaを出します。次はA君のdとB君のcがぶつかるため2連敗。
A君がまずdを出すと、B君はどうせ勝てるのでより弱いcを提出するはず。すると次はA君のbとB君のaがぶつかるためやっぱり2連敗です。
この状況ではA君は0点が確定しているのです。

以上のことを考えれば、A君はどうカードを出そうが関係ないということがわかります。

(2)
先ほど6通りの場合を考えましたが、これらのパターンはそれぞれいかほどの確率で起こるのでしょうか?
これはa,b,c,dの4枚のカードをA君とB君に無作為に振り分けることを考えると分かりますが、全て等確率の1/6ずつです。

そしてそれぞれのパターンにおけるA君の得点をまとめると

a,b:2点
c,d:0点
a,d:1点
b,c:1点
a,c:1点
b,d:0点

となるため、期待値は5/6点となります。

(3)
A君があまりに不利すぎるためか、なんとA君は合計が14になるという条件付きで配牌を選べるというのです。その場合の期待値を求めたいのですが、これはこれまでに考えた6パターンがそれぞれどれくらいの確率で起こるかを調べればよいです。

……と言いたいところですが、実は調べるのは1つだけでいいです。何故か?
それは合計14という対称性に由来します。例えば5と9を選んだとして、A君の手持ちの両方より強いカード (10~13) と弱いカード (1~4) は同数存在します。これはどういうことなのかというと、つまりB君が2枚ともA君より強いカードを選ぶ確率 (c,dパターン) と、2枚ともA君より弱いカードを選ぶ確率 (a,bパターン) が同じであることを意味します。
a,bは2点、c,dは0点でしたが、これらが等確率で起きることから期待値計算するときにこれらパターンの部分は期待値1として算出されるはずです。
そして得点表を眺めるとa,d、b,c、a,cの3パターンが1点なので、b,d以外の5パターンについての期待値は各々がどんな確率だったとしても1であることがわかります。全体の期待値はb,dパターンが起こる確率にのみ依存するということがわかるのです。もちろんこれは0点なので、この確率が高いほど期待値が下がります。

具体的にはb,dパターンが起こる確率をpとすると期待値は1-pになります。
それではpを求めましょう。

これは、B君が11枚のカードから2枚を選んだ時 (55通り) 、A君より強いカード1枚と、A君の2枚のカードの間の数のカード1枚を引く確率であるから…

A君が
1と13:0×11 /55
2と12:1×9 /55
3と11:2×7 /55
4と10:3×5 /55
5と9:4×3 /55
6と8:5×1 /55

となります。
pの最小はもちろん1と13のときの0、最大は4と10のときの3/11。よって期待値最大は1 (Aが1と13) 、最小は8/11 (Aが4と10) になります。

6パターンを調べる大変な問題かと思いきや、実は1パターンを調べるだけでよいという、ゲーム性に気付けるかどうかの問題でした。僕はゲーム系確率はクソ得意なのでこの手の問題は基本瞬殺です。