ぽぴれあの大学入試数学解説ブログ

2014年度東大数学113点のぽぴれあちゃんが受験数学を解いてイキるためのブログです

2020年度東大数学第1問 解説

これ。


まず問題文の言っている意味が難解ですが、要はある実数pがあり

①x>pを満たす任意の実数xについて不等式が3つとも満たされる
②逆にx≦pの範囲に不等式が3つとも満たされるxは一切存在しない。

ということを言っています。

ポイントは、右側はずっと不等式が満たされ、左側は一瞬たりとも全てが満たされてはならないということ。

今簡単に言いましたが、ここの読み取りが第一のハードルです。

不等式を3つ眺めると、どれも2次関数に見えます。
2次関数ということはこの形。

おや?
2次>0の形ならものすごく左側 (x→-∞) に行くと+∞に吹っ飛んでいくので、いづれ不等式を満たす時が来てしまいそうです。
そして2次<0の形なら、ものすごく右側 (x→+∞) に行くと-∞に吹っ飛んでいくので、いづれ不等式が満たされなくなる時が来てしまいそうです。

いずれも、問題文が示す条件に反してしまいますね。
そう、2次関数は軸に対し対称であるため、右側はずっと大きく、左側はずっと小さいなんてことはありません。軸+100が条件を満たすなら、軸-100も条件を満たす、あるいはその逆でないとおかしいわけです。

ではどうすればいいのか? 答えは簡単。2次の係数が>0でも<0でも都合が悪いというのなら、=0にして直線にするほかありません。

というわけで、(1)(2)はここまでの議論でなんとなく、書けばよいことは掴めます。

こういう掴みどころが無さそうな問題を考える時に、よく「x=0、x=1などのわかりやすい値を代入する」という手段を取ることがあると思いますが、明日から「x→∞、x→-∞を考えてみる」という択を頭の中に追加しましょう。

そして=0がわかったということは、定数項が0であるものが存在し、例えばax^2+bx>0とするとこれは原点を通るため、p=0が必要になるということがわかるため(3)が終わります (もちろんa,b=0もあり得るので場合分けして全パターン潰しましょう) 。


なーんだ、これで終わりじゃないか。見掛け倒しだな。東大Fランか???

解答を書きましょう。

……

…………

どう書けばいいんだコレ!?

そう。この問題の解答を書くことはなかなか難しいのです。
言うまでもなく、この問題のテーマは論証
高校数学は算術だと揶揄されることがあり、微積などの計算をきちんと合わせることができることが重視されているという風潮があります。非常に抽象的な問いに対して不備なく論理を組み立てることができるかを試しているこの問題は、数学に対する歪んだ認識が蔓延している現状に対する東大からの警告なのかもしれません。それは25年前に公式暗記数学に対する警鐘と言われる加法定理の証明を出題した時と同様に…。

大学生以上なら極限というものに対してさらなる知識と理解が得られるため、解答を書くことは容易でしょう。しかし数Ⅲを初めて精々1,2年の一般的高校生にとってこの問題の解答を書くことはそう簡単ではないと予想します。

(1) a,b,c<0だと上に凸の放物線となり、x→∞で-∞に発散するため、十分大きなxに対して<0となるため矛盾
(2) a,b,c>0だと下に凸の放物線となり、x→-∞で-∞に発散するため、十分 (負の方向に) 大きなx (<p) に対して>0となるため矛盾

こういう風なことを書けばよいのですが、+∞に発散する→十分大きなxに対して>0が成り立つという言い換えすら初学者レベルには厳しい。そもそも発散というのがどういうことなのかがよく分かっていない人だっています。そんなバカなと思うかもしれませんが、私も数Ⅲを初めて半年くらいの頃は不定形というのがどういうもので、どういうパターンがあるのかすらよくわかっていなかったのですから、不思議な話ではありません。

というかそれ以前の問題として、まず背理法を使うんだという考えにすら至らないという事態すら考えられます。問題文の意味不明さに敬遠してそもそも飛ばして二度と戻ってこなかった人もいるでしょう。

結局こういうのって慣れの問題なんですよね。難しい求積問題とかばっかり解いていて、こういうものに足元を掬われて取れる20点を吹き飛ばしてしまう方がよほど重罪だと思いました。

以上。