ぽぴれあの大学入試数学解説ブログ

2014年度東大数学113点のぽぴれあちゃんが受験数学を解いてイキるためのブログです

マスターオブ積分Ⅲ【東大2019-1、2014-3、2021-3】

今回は計算問題のお話。

東大・京大レベルとなると数学といえば文章題がほとんど。問題の要求からどのようなアプローチをすればいいのか? ということをまず考え、自分が既に知っている手法を当てはめたり、思いつかなければ試行錯誤によってとるべき道筋を導き出し、計算や論証を駆使しつつ解答へと至っていく。そういうものだというイメージがあるでしょう。逆に単純な計算問題なんて簡単なものは出ない……?

いいえ、計算力が非常に重要な分野がありますね。たとえば数Ⅲの積分を用いた求積です。軸に平行な面で立体を切断し、断面積を考えてそれを積分るっていうアレです。しかしこれも確かに計算が重要であることは間違いないのですが、断面積を考えるという段階に一定の難易度があり、ただ「計算するだけ」とは言えないような…? さすがは旧帝大。そう簡単に計算だけで点数をくれるわけではないようです。

!?

2019年東大数学第1問。
本当にただ計算するだけというシンプルすぎる問題。それまで東大数学=難しいというイメージを持っていた一般民衆に対しこのシンプルな問題は絶大なインパクトを与えました。
この問題を見た大人たちが「東大ゆとり化wwwww」とか「これが日本最高峰の大学wwwwww」とか色々言いたい放題言ってたのは皆さんの記憶にも新しいでしょう。

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ちなみにただ計算するだけなのでさぞかし簡単なのかと思うかもしれませんが、実は難易度的には2018年度の第1問のほうがよっぽど簡単だったりしますw


パッと見て簡単ですが実際簡単です。東大受験生で解けなかったら恥ずかしいレベルです。
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まあそんなことは置いといて、では実際試験場で「さあ数学を解くぞ」となってページを捲って真っ先に目に飛び込んできたのがこの問題だった時あなたはどう思うでしょうか。

おそらく安堵するでしょう。まず第1問から取り掛かるのは自然なことだと思うのですが、その第1問がただ計算するだけという問題。
さすがに何か罠があるのでは?と一瞬身構えることはあるかもしれませんが、ひとまず手も足も出ないという最悪の事態は免れたと感じることでしょう。

で、まあ計算すると思うんですが答えが出ました。あなたはここで何を思うでしょうか。
恐らくめちゃくちゃ怖いんじゃないかと思います。答えはπ/8+5√2/2-35/12なんですけど、あなたはこれが合ってるって確信を持って言えるでしょうか?

東大数学は大問6個構成で120点満点。個別の配点は公表されていませんが、1問20点であると考えるのが自然で、どこの予備校もそういう想定で考えています。
実は第3問と第6問は解答用紙のスペースが2倍あり、作業量が多い問題が出やすいという傾向があるため大問1,2,4,5が18点、大問3,6が24点とかなんじゃないかという説もあります。実際計算するだけの問題と死ぬほど難しい問題とが同じ20点なのか?と言われると怪しいので、もしかしたらこの問題の配点は15点くらいしか無いのかもしれませんが、ここで重要なのは仮にそうだとしても15点って結構デカイよねっていう話です。

この問題が仮に15点満点だったとして、答えを間違えた者にどれだけの部分点が与えられるでしょうか?
計算せよというシンプルな問いなのですから、答えを合わせることそのものに大きな比重が置かれているということは容易に想像がつくでしょう。数学は答えそのものよりも、途中経過や論証が重要!とはよく言いますが、ただ計算するだけの問題で論証がそこまで重視されているとは到底思えないので答えを外したらいくら途中の計算経過を丁寧に書いていようが、10点くらい引かれても文句は言えません。

化学で計算がややこしくて値を間違えたとか、英語でリスニングが聴き取りづらくて3問ほど飛ばしたとかそういうやらかしをしても失点は精々3点とか6点とかそんなんです。それがこの問題で答えを合わせられないともしかしたら10点とかそんなレベルで点数が吹き飛ぶかもしれないのです。当然受験生は試験時間中、この事実に嫌でも気付いてしまいます。

この問題を「簡単すぎw」と断じる人はメンタルの影響を無視しているものだと思います。この問題は見るからに絶対落とすわけにはいかない問題です。合格するような受験生はこんなもん満点取るに決まってるとは誰もが直感するところです。それではあなたは定積分計算を100回中100回合わせられるのでしょうか。
この問題はそりゃ家でゆっくり解けばめちゃくちゃ簡単なんですが、東大側はこの問題を出題することによりむしろ受験生のメンタルを試しに来ているのではないかと僕は感じてしまいます。なんせ誇張抜きにこの定積分計算には人生が賭かっているのですから。

……というわけで、計算問題は非常にメンタルが試される、計算力が人生を左右するということがなんとなく分かったかと思います。重要なのは計算速度もそうなんですが、死ぬ気で計算を合わせることです。計算ミスを減らすための工夫は最大限に行いましょう。

それではどのようにして計算ミスを防げばいいのだろうか?


①丁寧に項を分ける

当たり前ですがまず積分するために被積分関数を展開します。
この時に横着せずに1つずつ丁寧に展開すること。そしてこういう簡単な展開でも本当に合っているのか1度確認すること。

こんなところまでいちいち確認してたら時間足りなくなるだろ! という声があるかもしれない。なるほど一理ある。
しかしそれに対する僕の意見はこうだ。
「どうせここで確認せずに5分短縮しても、最後の5分で出来ることなんて見直しくらいしかないんだから、一からまた計算し直すくらいなら今それを逐一やっておけ」

見直しをするのは自分の出した答えに自信がないからだ。いちいち丁寧に確認していて、最終的に出した答えがさすがに間違っていないだろうと確信が持てているのなら、もう一切その問題については見なくてもいいはずだ。
日頃からこのように丁寧な見直しを行い、1発で自信を持って正答させる癖をつけておこう。うっかり変なとこに2乗つけてたりとかは、よくある。

②1つ1つ積分する
∫[0→1]x^2dx=1/3なのはもはやノータイムで出せるレベルの常識なので、さすがにそれを丁寧に計算しろとまでは言わないが、例えば最初の2項について

こう一気に書くのもいいが、

よく間違えるようなら、こういう風に1個ずつ分けて丁寧に書いてもいい。
遅くはなるが、うっかり間違えるよりよっぽどマシ。丁寧にやりすぎて逆に間違えるというのもあるかもしれないので、そこは自分なりに調整していこう。
計算なんて自分がやりやすいようにやればいい。

ただ、4項全部一気に計算するのだけはやめておいたほうがいいと思います。流石に頭こんがらがるからね。

それでは第3項。

部分積分で次数を下げていくのだが、第2項の結果が使えるため計算がショートカットできる。1項ずつ分けて考える効果が出ているのが分かるだろうか。
僕は計算よくミスるので、脇に(1+x^2)^(-1/2)の微分結果を書いておかないと途中の係数を間違えそうになる。

最後に第4項。


∫[0→1]1/(1+x^2)dx=π/4ってノータイムで即答できるレベルの常識なんですけど、こういうのってどこまで過程書けばええんやろうな。
ちなみに計算用紙に書くノリで書いてるので、実際の答案でこんな感じで書いたら変かもね。

あとは出てきた項を全部足し算しましょう。何足せばいいんだっけってならないように、最終的に出てきた数値を四角で囲むとか星印つけておくとかそういうのでわかりやすくしときましょう。 (計算用紙なのでそういうのは好きにやっとけばいいです)

こんくらい丁寧にやっとけばミスらんでしょう!

大事なのは本番ではない、演習の段階でも死んでもミスらないという意識です。ミスったら頭を撃ち抜かれて死ぬみたいな緊張感をもって日々の演習に取り組みましょう (?)


なお、計算問題と言えばこの問題が話題ですが、実は東大にはたびたび計算するだけの問題が出題されています。

2021年第3問。


(1)は出来ないと恥ずかしいです。教科書の例題レベルです。
わざわざ「ただ1つ存在することを示し」とあるので、「xの値についてyの値がただ一つ定まるため、交点の数は方程式を解いて出てきたx座標の数に等しい」とでも一言書いておくと丁寧かなと思います。

(2)は次を計算せよという問題で、これもただの計算問題です。

有理関数なので用いる候補に挙がるテクニックは限定されますが、計算量は見た目通り非常に多くヘビーな問題です。

また、僕が受験した2014年度の第3問も計算問題でした。

これの(1)と(2)はやっぱりできないと恥ずかしい問題で、本番は(3)の計算問題です。


さっきまでと比べると楽そうに見えるかもしれませんが、実際には結構面倒です。

ざっと2問挙げてみましたが皆さんできるでしょうか?

思い出のある2014-3からやりましょう。
まず√(2次式)の形が出てきたら三角関数置換を行うというのは常識です。ほかにも円の一部分を疑うということもあります。
2次式の部分を平方完成すると-(u+1)^2+3となるため、u+1=√3sinθと置くとうまくいきそうです。積分区間を見ると意味深に-1-√3~-1+√3であることからも、この方針で合っていそうで安心です。

うっかり間違えないように、先にu+1でまとめてから置換しました。√(1-sin^2θ)は正確にはcosθではなく|cosθ|ですが、積分区間的に絶対値が外れるので略 (実際には書いたほうがいいかもね) 。

あとはこれを計算すればよい。もちろん、1項ずつ計算しよう。

分けてみれば一つ一つは大したことがない。実は2個目は奇関数なので計算せずとも0であることがわかりますが、幸いにも微分形が横にくっついている形で原始関数が一瞬で求まるため気付かずとも大きなロスにはなりません。なので焦ることはないでしょう。

1個目は2倍角でsin2θの2乗にし、3個目ともども半角公式で次数下げをする典型的な形なので慣れた人間なら恐らくもう大丈夫。1/2がガンガン出てくるので係数を間違えないように。(9/8+3/2)πで21π/8と出てきます。

ちなみに大数評価Cだけど25ヶ年評価は堂々のA。まあそりゃ計算自体は非常に基本的といえばそうだけどさ……。

次に2021年度第3問。

全体についている2乗がパワフルすぎます。実戦なら見た目がいかつすぎるのでそもそもこの式が本当に合っているのか??? というのが気になって2分くらい再計算してそうですw
しかしどうやらこれを計算するしかなさそうなのでやるしかありません。

ひとまず2乗をバラして3項に分けよう。

僕は本番でこうなったらここからの想定時間20分と考えます。いやホントに試験終了ギリギリなら頑張って10分くらいで終わらせるんですが、それくらいの超スピードだとどうせ間違えそうなので本当は20分欲しい。

とりあえずダントツで楽なのが3つ目で、

実戦だとひとまずここをまず終わらせる人が多いかと思いますが、これ以降の計算が重すぎてどうせごちゃごちゃしてくるので、最後に何足すんだっけ… というのを見落とさないように四角で囲むとかなんとかして目印つけときましょう。

さて1個目と2個目が大変です。とりあえず1個目から行きましょう。
有理関数の積分は以下の手順を取ればよいことが知られています。

①次数が(分子)≧(分母)ならば、割り算により分子を軽くする
②必要ならば部分分数分解により和の形にする
③あとは1つずつ処理。特に使うのは
1/(2次式)→tan置換 (arctan)
f'(x)/f(x)型→log(f(x))

大変だが、有理関数はすべてこれで積分できるので頑張りましょう。
1つ目からいきます。これは部分分数分解が必要でしょう。

そもそも部分分数分解のやり方を知らんという人も多そうなので簡単に説明しておくと
①分母が1次式のとき、分子は定数
②分母が2次式のとき、分子は1次式
③分母が累乗のとき、1乗から順番に項を作っていくが、分子はそのまま

特に累乗のとき、分母につられて分子の次数も増やしてしまいそうになるが、そのままです。
この原則で行くと今回分子はax+bとcx+dで置くべきな気がしますが、分子はx^2だけで奇数乗の項がないため、どうせa=c=0になることがわかっていたため定数としました。別に1次式で置いてもいいです。


簡単な係数比較によって

となります。次なる課題はこれの積分です。まだ終わらないのかよ……。
x=√3tanθと置換することにより…

これで計算できたので、あとは係数を掛けて足し引きしてやると、√3π/12-1/4となるらしい。

まだ終わらんらしい。ラスト、2項目のこれ。

ひとまず、分子が重いので次数下げをします。さらに1次の項と定数項で分けてやると……

f'(x)/f(x)の形と、さっき計算したやつが出てきました。ようやく終われるらしいです。
ここでミスって∫[-3→1]1dx=-2とかするとすべてが終わるので油断しないように。

これで全て出そろいました。印つけた
√3π/12-1/4
-1+1/8・log3+√3π/8
1/12

全部足して答えは5√3π/24+(log3)/8-7/6となります。

誰が合うんだこんなもん。