ぽぴれあの大学入試数学解説ブログ

2014年度東大数学113点のぽぴれあちゃんが受験数学を解いてイキるためのブログです

1996年度 東工大後期数学 やってみた

受験数学マニアには有名な、何故か1問しか問題が無い年です。
1問しか無いのですからさぞかし難しいのだろうと受験生時代も興味を持って解いていた気がします。が、10年前のことなのですっかり忘れています。


直交する円という新概念を引っ提げた2つの円がテーマの問題。最終的に回転体の求積までやらせてきますが、まあ順番にやっていきましょう。それにしても東工大回転体好きね。

(1)
まず円C_θの正体を掴みたいところです。円というのは中心と半径がわかれば決定できるというのはもはや小学生でも知っている基本です。

とりあえず図を描いて色々やってみましょう。数学で大事なのは試行錯誤です。解法暗記じゃありません。

とりあえずQが第1象限にあるとして、直交する接線がテーマですから接線と、それに直交する直線を描いてみます。何かに気付かないでしょうか?

そう、接線に直交する2直線が円の中心で交わっているのです。冷静に考えてみればこれは当たり前で、そもそも中心から接点に引いた直線は接線と垂直なのでした。
ということは逆に考えると、円Cの接線の交点が円C_θの中心であることがわかります。

円Cの点Pにおける接線は当然x=1、点Qにおける接線はcosθ・x+sinθ・y=1です。
これらの交点ですからx=1を代入してやればそれでOKで、(1、(1-cosθ)/sinθ)となります……としてもいいのですが、もっと簡単な方法があります。



円C_θの中心をO_θとして、三角形OPO_θと三角形OQO_θを考えてみましょう。円の半径ですからOP=OQ、PO_θ=QO_θなので、三辺相等によりこの2つの三角形は合同です。つまり角POO_θ=θ/2であり、O_θの座標は(1、tan(θ/2))であるとわかります。
(1-cosθ)/sinθとtan(θ/2)、扱いやすそうなのはどちらでしょうか。当然後者ですね。
ところで(1-cosθ)/sinθ=tan(θ/2)という関係式って皆さん知ってましたか? 僕は正直知らなかったです。
この形に気付かないと(1)の答えが汚くなりますし、(2)の軌跡を出す時点で手詰まってしまいます。初等幾何って大事ですね。
なお、半径は(1,0)を通っているのでそのまんまtan(θ/2)です。

中心と半径が分かりました。それでは面積を求めましょうか。



この紫で塗った領域の面積を求めたいです。円C_θの半径をO_θとおくとして、この葉っぱ型の領域の面積は
(扇形OPQ)-(三角形OPQ)+(扇形O_θPQ)-(三角形O_θPQ)
で求められます。分からない人は線分PQを引いてみましょう。
これらの面積を求めるには、扇形の中心角が必要です。扇形OPQの中心角は当然θで、四角形OPO_θQに注目すると、角P=角Q=90°であることから、扇形O_θPQの中心角はπ-θであることがわかります。

これで必要な情報が全て求まったのであとは簡単です。中心角θの扇形の面積はr^2×θ÷2、三角形の面積は2辺の積×sinθ÷2なのでこれに代入するだけです。

(2)
C_θのほうの円弧PQの中点の軌跡を求めます。今回いろいろな座標がパラメータ表示されていますから、これも軌跡をパラメータ表示して、xとyの関係式を作る方針でよいでしょう。

もし(1)で初等幾何的アプローチに気付いていないならば、OA_θ↑=OO_θ↑+O_θA_θ↑であることを利用し、O_θA_θ↑を求めることになるでしょう。
ただ、初等幾何ルートを取った者はもっと簡単に求めることができます。

当たり前ですがA_θは線分OO_θ上にあります。そしてOO_θ=1/cos(θ/2)、A_θO_θ=tan(θ/2)であることがわかっているため、

このようにA_θの座標のパラメータ表示が一瞬で出てきます。

当たり前ですがまだ終わりではありません。xとyの関係式をここから導く必要があります。
もし、tan(θ/2)のところを(1-cosθ)/sinθの形にしているままここまで辿り着いてしまうと、ここでxとyの関係式を出すのに苦労します。まあ三角関数にはtan(θ/2)=tとおくと有理関数に出来るという必殺技があるのでそれさえ知ってればなんとでもなるのですが、やはり作業量が違いすぎます。

こちらの形なら楽勝で、面倒なのでθ/2=φとおくと、x=1-sinφなのでsinφ=1-x、つまりtanφ=(1-x)/√(2x-x^2)となるため、y=x(1-x)/√(2x-x^2)となります。定義域は0<φ<π/2から0<x<1です。

(3)
ここまで出来たらボーナス問題です。π∫y^2dxを計算するのみです。
有理関数の積分は、

分子より分母のほうが次数がでかくなるように割り算

必要なら部分分数分解

logやtan置換などを駆使して求める

で求められるのは常識で、こういう決まり切った手順こそパターン化すべきです。
これはそう難しくないのですぐにできるでしょう。


以上。
正直1問しかないので解答の巧拙もかなり重要な気がします。
60分もあれば解ける人が大半でしょうが、道中が汚いと評価が下がるかもね。知らんけど。

典型解法に安易に飛びつくと作業量的に痛い目を見るという問題は個人的に好き。