ぽぴれあの大学入試数学解説ブログ

2014年度東大数学113点のぽぴれあちゃんが受験数学を解いてイキるためのブログです

2021年東大数学の第1問をやってみた

今日こんなツイートを見つけました

 

僕はキモいので28歳になっても受験数学に興味津々だったりするんですが、過去6年間の東大数学で最も簡単だった大問を集めてみたらしいです。
2023だけ威圧感が違うのでやっぱりこの年は難しかったんだなということがよくわかりますね。

さて、問題番号をよく見てみると大問1が圧倒的に多いことに気付くと思います。実は東大数学の大問1は簡単めな問題が出る頻度が高いということがよく知られています。 (盲信しすぎると本番で1番詰んだ時にメンタルが死ぬので傾向程度に受け止めておくのがいいです)

しかし大問1以外の問題がエントリーされている年度がありますね。2021と2023です。
2023は正直全部ムズイのと問題知ってるのでいいとして、2021の1番ってどんなんだったんだろう? というのが気になるのはキモいオタクとして当然の発想ですね。


というわけで見てみた


まあ、パッと見の印象では難しくもないが簡単でもないのかなといった感じ。
とはいえ1番なので、いきなり重そうな問題ではなく問題文の主張自体は容易に理解できます。


(1)
-x^2=x^2+ax+bつまり2x^2+ax+b=0が-1<x<0と0<x<1にそれぞれ解を持ちます。
f(-1)>0、f(0)<0、f(1)>0で終わりです。
さすがにこっちは問題ないでしょう。

何故かD>0を毎回入れたがる人がたまにいますが、2次の係数が正なんだから<0の点がある時点で解の存在は既に保証されています。

(2)

で、(a,b)はこの範囲を動き回る (境界は除く) のですが、ではこの条件下で放物線が動き回る範囲はどうなるの? というのが(2)で求めたいこと。

この問題の難しいところはaやbというのが動いたとき、放物線がどう動くのかをイメージすることが難しいということ。
例えば……

y=x^2+3x+4

この放物線を出されて係数の「3」と「4」という数字にどういう意味があるのかを答えられるだろうか。
「4」のほうはたとえば「y切片」と即答できる人も多いだろう。では「3」とは一体…?
もちろん「軸がx=-3/2」ということや、「x=0での接線の傾きが3」などを挙げられる人はいるだろうが、どちらもそこまでわかりやすい指標かと言われるとそうではない。

これらのことを知っていたとして、ではたとえば(a,b)が(-2,0)から(0,-2)を直線的に動くと放物線はどのような動きを見せるのかを即答できるだろうか? おそらく無理だろう。
y切片や軸がわかったところで放物線は決定できないので、そんなところを追っていても非常にわかりづらい。(a.b)の動きを直接追っていても、それによって放物線がどういう動きを見せるのかをイメージするのが難しいのだ。

ではどこに注目すればいいのだろうか?

まず放物線 (今回の場合2次関数) を決定するためには何を知ればいいのだろうかというところから話は始まる。
焦点や準線というところまで高度な話ではない。今回は単純な2次関数なのでもっと簡単なレベルの話で、2次の係数頂点が決まれば放物線は決まる。
何故なら2次の係数が同じ放物線はすべて平行移動によって得られたものであり、どれだけ平行移動したかが頂点の位置によって定まるからだ。今回2次の係数は1で固定なので、頂点の位置さえ分かれば放物線は一意に決まる。

そして頂点の動きを追えば放物線がどのような動きをするのかをイメージすることはたやすい。2次の係数が1として、頂点が(-2,0)から(0,-2)を直線的に動くと放物線はどのような動きを見せるのかを即答できるだろうか? 余裕でいけるでしょう。


さて頂点の座標は知っての通り(-a/2、b-a^2/4)である。(a,b)の動きではなく、(-a/2、b-a^2/4)の動きを追ってみよう。
変換が面倒かと思いきや今回に関しては全然そうではなく、x座標はaを-1/2倍するだけだから単純だし、y座標もbからx^2を引けばいい。xを固定してyの範囲を求めていく手法 (順像法、ファクシミリの原理と呼ばれるアレ) をやれば割と一瞬で求められる。

要はx=x'と固定でもしてやればa=-2x'で、(1)にてまずa<0のときは-a-2<b<0とわかっているわけだから、
つまり-2x'-2-x'^2<y<-x'^2だよね。a>0のときも同様にすればいいよね。で図を描いたら

境界含まず。図をペイントで描いてるから雑だけど原点通ってます。

こうなる。これが頂点が動き回る領域だ。求めているのは放物線自体が通る領域なので、ここから放物線を伸ばせばいい。

とはいってもいきなりすべての領域で考えるのは難しいので、まずは一部だけを見てイメージを掴んでみよう。
たとえば(-1、1)から(1、1)まで青い線に沿って放物線を動かしてみよう。

するとこうなる。



放物線がここを連続的に動いてるわけだから、通る領域はこうだ。

さて、ここで出てきたのはあくまで十分条件であるため、これからすべての領域について考えていく必要がある。ゴリゴリ数値計算していってもいいが、せっかくなのでもう少し見通しを立ててみよう。領域の概形をなんとなくつかみたいからね。

とりあえず、こういうの境界線上の点に関わるところが重要っぽいのでy=x^2上の適当な点で考えてみると…。

緑で描いた放物線のようになる。
原点を通っていて、既に塗っているところに完全に含まれているのがわかるだろうか。
何故原点を通るのかというと、そもそもこの境界線は「-1<x<0、0<x<1に解を持つ」という条件によって生成された境界線だからだ。ということは境界線上はそれぞれx=-1、0、1を解を持つ場合になっているということが感覚で分かると思う。
y=-x^2との交点なのだから、x=-1、0、1ということはすなわち(-1,-1)、(0,0)、(1,-1)だ。
これが境界線のy=-x^2-2x-2、y=-x^2、y=-x^2+2x-2にそれぞれ対応している。
というわけで境界線y=-x^2上を頂点に持つ2次の係数1の放物線は原点を通るというわけだ。
さらに放物線の(接線の)傾きは、頂点から離れるほど急になるため、原点での傾きは頂点(-1,-1)の場合のそれよりも緩やかであるため、既に塗られた領域をはみ出ることはない。

賢明な読者はもっと凄いことに気付いたと思うが、そもそも-1<y<-x^2の領域を頂点にする場合は既に塗られた領域を一切はみ出さない。何故ならそれより上のy=-x^2上の点が頂点の場合ですらはみ出さないため、-1<y<-x^2といえばそれより下なので上方向にははみ出しようがないからだ。もちろん2次の係数が固定なので左右方向に領域を脱出することもない。下方向は、2次の係数正の放物線が頂点より下に行かないので自明。

なんと、頂点の領域のうち-1<y<-x^2の部分をこれで網羅してしまったことになる。
では、残りの領域は?

というわけでまた特徴的な点を考えてみよう。
明らかに特異な点(0,-2)について考えてみると…




(0,-2)を通り2次の係数が1の放物線y=x^2-2は(-1,-1)や(1,1)を通る。 (緑の放物線)
ここから頂点を(0,-1)まで移動していくと、緑の放物線より上側がすべて塗られることになる (黄色い領域) 。
それ以外の頂点領域について同じように考えると、境界上に頂点があればその放物線は(-1,-1)か(1,1)を通り、そこでは傾き0の放物線による領域境界(?)があるから、既に塗られている領域からはみ出すことはない。当然内部についても同様となる。

これですべての頂点の領域について議論が済んだことになる。
そうなれば最終的な答えはこうだ。



境界含まず。
図が全然放物線っぽくないのは許してw

以上。


正直、うまぶろうとして余計なんかわかりづらくなった点が否めないですが、僕はこの問題が出てきたら間違いなくこう解きます。何故なら「まともにやったら計算がめんどくさそう」だからです。
僕は計算が嫌いすぎて物理とか早々に挫折したタイプなので、まず複雑な計算を経由しないやり方を常に考えています。その結果「なんやこれキモ」ってなる解法になることも多いです。
でもそれでいいんです。間違ったことさえ書いてなければOKなんですからね。いや、まあここまでに間違ったことを書いてる可能性が無いとは言わないですが……。

こういうのってどうやって思いつくの? って聞かれることもあるんですが、試行錯誤してたらなんかたまたま思いついたみたいな感じが強いです。大事なのは試行錯誤です。
東大数学で試行錯誤する時間なんてあるわけないだろ! って意見もありますが、ゆーて10分くらいはできます。


さて、ここまで書いた感想として言わせていただくと、別にそこまで簡単じゃなかったねという結論でした。少なくとも5番より簡単ということはありません。

ちなみにこういうセット内での問題難易度の議論をすると「1番と5番とでは5番のほうが簡単なんだから1番から解くのは戦略として間違ってる」とか意味不明なことを言ってる人がたまにいます。
それに対する私の意見はこうです。

実力がある人ならどうせ両方解くんだからどっちからやったって同じ。
無い人でもそもそもすべての問題をある程度の時間を割いて考えるんだからどこから解いたって同じこと。詰んでから他の問題やればいい。

150分もあるのに10分考えることがそんなに重大なロスなんだろうか。それとも1度手を付けた問題は完答するまで他の問題に行ってはいけないという縛りプレイでもしているのだろうか。そもそも50点とかしか取れない程度の実力で、問題パッと見ただけで難易度の序列がつけられるのだろうか。
大事なのは「どの問題から解くか」じゃなくて、「少し考えてみてどの辺で自分の実力では太刀打ちできないと判断するか」とか「できそうだけどめんどくさいから頭を整理するために保留して他の問題に行く」とか、そういうことだと僕は思います。

ていうかそもそも簡単そうな問題って何なんでしょうか。例えば

これって問題文が意味不明なわりにそんなに難しくなくて

これってめっちゃ単純に見えて結構大変なんだけど、一瞥しただけでそれが分かると言うことでしょうか。僕は実際に手を動かしてからじゃないと分からないので知らない世界です。



なんか変な主張になっちゃいましたが、とりあえずこれで終わり。また暇ならなんか書くかもね。