ぽぴれあの大学入試数学解説ブログ

2014年度東大数学113点のぽぴれあちゃんが受験数学を解いてイキるためのブログです

1993年度 東工大後期数学 やってみた

実は今日からとある塾で働くことになりました。今後こういう記事を増やしていって、2年後くらいには受験生の間で有名なブログになったらいいなとか考えてます。じゃあめんどくさがらずにちゃんとした答案書けよっていうね。

第1問

ありがちなテーマなので、今ならもしかしたら答えを覚えちゃってる人もいるかもしれません。†暗記数学†ってそういうこと!?

まず体積を求めるためには断面積を積分するというのは常識です。回転体の場合は違うことしてたなあと思う人もいるかもしれませんが、回転体の場合は断面積がπ×(軸から最も遠い点)^2になるためπ∫{f(x)}^2dxという公式が導かれるというだけでやってることは同じです。

というわけで、断面積を求めましょう。とりあえず座標系がないと議論がしづらくて仕方がないので座標を設定するのですが、このあとの「回転軸に垂直な平面で立体を切断する」という手順を考えた際に

・立方体をまっすぐ置くか
・回転軸を座標軸と重なるように置くか

は悩ましいところです。

今回は回転軸を座標軸と重ねてしまうと立方体の各頂点の座標を算出するのがあまりにも面倒すぎて見通しが悪そうなので、立方体をまっすぐ置いちゃうことにします。

はい。
軸が斜めを向いているのが気になります。もしかしたら慣れていないとこれで積分が実行できずに詰む人もいるかもしれません。じゃあ今からできるようになりましょう。

とりあえず求積問題の基本である「軸に垂直な断面で切断」を行うために、軸に垂直な断面の式を出します。これは法線ベクトルが(1,1,1)の平面を指すため、

x+y+z=k

とおけます。とりあえず便宜上kというのを置きましたが、あとでこの軸に沿って積分をするのですから適切な変数を置かねばなりません。
とりあえずこれをt軸とでも呼ぶとして、微小の変化量dtは、普段この直交座標系で考えてるx,y,zの微小変化量dx,dy,dzらとは異なります。斜め向いてるからです。その方向は(1,1,1)ですから、xの√3倍の変化量になるということです。
ということで

x+y+z=√3t (0≦t≦√3)

と置いてやるとあとあと楽そうです。要はパラメータtの変化量と、平面を動かしたときの軸上の動いた量 (長さ) とが一致するようにしたということです。

ではこの平面で切断した際の断面を求めてみましょう。
対称性から0≦t≦√3/2か√3/2≦t≦√3のどちらかのみを考えて最後に2倍してやればいいです。
図の奥のほうが描きやすいので、今回は√3/2≦t≦√3の範囲で考えましょう。

まず最初のうちは三角形が出てくることは容易にわかるでしょう。しかしいずれ


このように辺の端っこに到達して三角形じゃなくなってしまいます。
この場合、切断面が(0,1,1)や(1,1,0)、(1,0,1)を通っていることからt=2/√3であるとわかります。2/√3≦t≦√3において切断面が三角形になることがわかりました。

続いて√3/2≦t≦2/√3の場合です。これは六角形となります。



切断面が求まったので、あとは軸から最も遠い点までの距離を求めてやればよいです。
まず簡単なほうから行きましょう。

2/√3≦t≦√3の場合なのですが、実はこれ、三角錐をそのまま回転させたものになっており、通過領域が円錐になります。円錐の体積はわざわざ面倒な積分計算なぞしなくても半径^2×高さ×1/3で求まるのでこれに気付くと少し楽になります。

底面はx+y+z=2における切断面ですから、中心が(2/3、2/3、2/3)で半径は(1,1,0)とかとの距離なので√(2/3)、高さは(1,1,1)との距離で√(1/3)なので、体積は2√3π/27です。

続いて√3/2≦t≦2/√3の場合です。六角形を図にするとこんな感じ。

全部の角度が120度で、軸を中心とした円周上に6頂点が全部乗っている感じ。
軸 (重心) から一番遠い点は各頂点です。平面x+y+z=√3t上の軸(t/√3、t/√3、t/√3)と、適当な1頂点たとえば(1、√3t-1、0)との距離の2乗は2t^2-2√3t+2です。つまり回せば面積(2t^2-2√3t+2)πの円が現れます。これを積分してやればOKです。


円錐2√3π/27と合わせて√3π/6、対称性より2倍して求める答えは√3π/3となります。

第2問

今の高校生は習わないらしい、行列の問題です。
行列というのは線形代数でものすごく使う超重要分野なのですが、正直高校範囲で習う行列は2次正方行列の扱いに習熟させることを目的としており、それ以降の発展的内容を扱わない (1次変換は辛うじてやる) ため、ぶっちゃけ成分計算という「作業」に終始しているような感がありました。

これは2012年度東大の入試問題です。仰々しい見た目をしていますが、実は指示に従って成分計算を行うだけで解けてしまう、何の面白みも無い問題です。
大数評価Cですし巷では難問と評価されているようですが、ぶっちゃけ詰まりようがないので簡単な部類です。見た目の威圧感と6問目にあるってだけで正答率が低いタイプの問題です。
この問題を解くのに数学的背景や線形代数に対する深い造詣など一切不要ですし、あっても何の役にも立ちません。
このようにあまりに単純な「操作」に終始してしまうため、この行列という単元を学んだ先に何があるかがあまりピンと来ないという状況でした。そういった背景もあって行列が廃止されたのかもしれません。
逆に当時は複素数平面が高校範囲に無かったのですが、おかげで「虚数」ってのが何のために開発されたんだ? 数学者の自己満か?? というところで認識が止まっている人もいたのではないでしょうか。知らんけど。

そんなことは置いといて本題に戻りましょう。

(1)
元・高校範囲では基本的に2次正方行列しか扱わないのですが、行列のn乗を求める時は

・対角行列と三角行列は公式があるので帰納法
・それ以外はケーリー・ハミルトンで次数下げor対角化 (誘導付き)

以上です。
今回は三角行列なので帰納法で示せます。何なら対角成分まで同じなんですが、こういう行列は

これが成り立つことが帰納法ですぐに示せます。まあ、知らなくても(1,2)成分以外は半分自明みたいなもんですし、(1,2)成分も漸化式を立ててやれば一般項を求めることはそう難しいことではありません。

こんな漸化式が立ちます。両辺を2^nで割ってやればb_n/2^(n-1)が初項1、交差1の等差数列になるのでつまりnになり、ならばb_n=n・2^(n-1)になるということがすぐにわかります。
まだ(1,1)成分と(2,2)成分が2^nになると決めつけて予想しただけで、厳密に証明をしたわけではないため、あとはこの形になることを帰納法で示してやればOKです。

(2)
一般項が全て求まっているのですから、余りを追っていくだけです。
γ_nは0に決まっていますし、α_n、δ_nは2^nを3で割った余りであるため、2→1→2→1…をループします (証明はmodを使うと簡単) 。ということはnが2の倍数の時に1になります。
最後にβ_nは0になるタイミングを問われていますから、2^(n-1)が3の倍数になりようがないため、nが3の倍数のときなのはもはや自明みたいなものです。もはやmodを持ち込むまでもありません。
というわけで2の倍数かつ3の倍数ということで、6の倍数が必要十分条件になります。


以上。

まだまだ簡単そうに思えますが、東大後期だって最初の数年はおとなしかったもののいつの間にか無理ゲーが出てきたりしたので、東工大が本気を出してくる時が楽しみですw