ぽぴれあの大学入試数学解説ブログ

2014年度東大数学113点のぽぴれあちゃんが受験数学を解いてイキるためのブログです

1990年度 東工大後期数学 やってみた

大学受験界には東大なんぞよりもよっぽど数学が重要な最難関大学があります。その名は東京工業大学

この大学の配点は数学300、英語150、化学150、物理150の750点満点です。明らかに数学が最重要科目であり、そこに疑いの目を向ける人はいないでしょう。数学を完全に捨てて東工大に受かるなんて有り得ないことです。このありえなさは東大英語30点台とか数学10点台とかそういうのでも合格できる!とかいうお話とは比べ物になりません。数学ができないと東工大に入る権利が無いと言っても言い過ぎでは無いのです。いくら苦手でも300点中せめて100点くらいは取っておかないとお話になりません。

というわけで東工大の数学の解説って実は需要あるんじゃねーのかなという表向きの理由を掲げつつ個人的な趣味で東工大後期の数学を解いていこうと思います。
ちなみになんで後期なのかと言いますと、前期だと全部の分量が多すぎてどこからやればいいのかわからない (2023からやるとその辺に解説が無限に落ちてるし…) というのと、後期入試というのは一般的に重厚な問題が出題されやすくなかなか苦戦しそうだと感じたからという個人的チャレンジ精神です。
あと2問しかないから記事書くの楽だよねっていうのもあります。

後期という特別なシチュエーション(?)で出題された難問に触れあうことで少しでも受験生 (でココ見てる人いるのか?) の助けになれればと思います。

記念すべき初回は1990年の問題から行きましょう。
それではどうぞ。

第1問

(x+1)(x-2)=1+5xという方程式を解けない人はいないでしょう。x=3±2√3です。
しかし今回xの値としてこれらは不適切です。というのも(x+1)(x-2)にこれを代入すると16±10√3となりますが、小数第1位を四捨五入すると33ないしは-1といった整数値となり、1+5xと等しくならないからです。

まず1つ目に気付くべきことは「小数第1位を四捨五入したもの」というのは整数になるということです。そのため1+5xも整数である必要があり、xの候補は0.2刻みで現れるということがわかります。
2つ目は四捨五入して等しくなるということは、そもそも真値が近いところにあるということですね。四捨五入しても値は0.5以下しか変わりませんから、真値の差が0.5以下であることが必要ということがわかり、これだけでxの候補はかなり絞れそうです。

xの候補がかなり少なそうなので、全部しらみつぶしに調べ上げてしまうのがよさそうです。他にいい方法も思いつかないので、あれこれ考えている暇があったらとりあえず手を動かしてみます。

真値の差が0.5以下なので

-0.5≦(x+1)(x-2)-(1+5x)≦0.5

が必要条件です。
実は1+5xが整数値であることがもうわかっているため、差が0.5未満なら四捨五入して同じところに丸まってくれるのが確定しているので適切に等号を外してやれば必要十分条件にできるのですが、めんどくさいのでやりません。 (正負で等号つくほう変わるんで)

この不等式を解くのですが、2個の不等式にバラして別々に解の公式とかで√含みの範囲を求めるよりも…

-0.5≦x^2-6x-3≦0.5

-0.5≦(x-3)^2-12≦0.5

11.5≦(x-3)^2≦12.5

としたほうが分かりやすくて良いです。そもそも解の公式自体が平方完成から導出するものでしたから、原点回帰したとも言えます。公式などの源にある発想を常に大事にしていきましょう。

11.5~12.5の範囲になるように|x-3|の値にあたりをつけていきます。大体3.5あたりかな…
0.2刻みなので調べるものが少ないのが助かります。

(3.2)^2=10.24 ×
(3.4)^2=11.56 ○
(3.6)^2=12.96 ×

x-3=±3.4が必要ということで、xの候補は6.4と-0.4の2つに絞られました。
等号成立していないので十分性も担保されているのですが、議論に抜けが無いかが不安なので一応実際に計算して確認するのが安定でしょうか。

x=6.4のとき
7.4×4.4=32.56 → 33
1+5×6.4 = 33
一致

x=-0.4のとき
0.6×(-2.4)=-1.44 → -1
1+5×(-0.4) = -1
一致

どちらも一致するため、答えはx=6.4、-0.4です。
道中、敢えてx=n/5とせずに小数で話を進めました。四捨五入の話をしているのですから、分数よりも小数のままで考えたほうがわかりやすそうです。




第2問

重そうな問題です。
第1問をさっさと片付けてこちらに時間を割きたいところです。なお制限時間は2問60分だったらしいです。45分くらいで解ければよいでしょう。

(1)
(12/23追記 思いっきりミスってたので修正しました。)
親切にも帰納法で示せと書いてあるので方針に迷いはありません。次の多項式を表すのも、加法定理を用いれば簡単そうなのでこんな問題一瞬で片付けて当たり前と思うかもしれませんが、途中で重大な罠があります。僕もうっかりしてて引っかかりましたw
n≧2と書いてあることに注意です。
重大な罠というのは最高次の係数が打ち消し合って0にならないことを示す必要があるということです。条件にP(x)、Q(x)の次数まで指定されているため、もし最高位の係数が0になってしまうと次数が1下がって話が破綻してしまうのです。
これを示すにはかなり苦労します。式の形的に (Pk(x)のk-1次係数)×2k≠(Qk(x)のk次係数)であれば0にならないので、これをそのまま帰納法の仮定に持ち込んで示してしまいます。
ただそのまま入れると面倒です。異符号であることだけを言っておけばそれでOKなのでそうします。

(2)
受験数学のメタ戦略として、前の小問が次の小問の誘導になっているのでそれを利用するというものがあります。今回だと(3)のΣ計算が本当にやりたいことなんだけど、一からそれをやるのはキツすぎるので(1),(2)で誘導をつけているという感じですね。

さてさて、この問題ですが(1)と同様に帰納法で示そうとしても漸化式にPk(x)だけでなくQk(x)まで出てくるので処理しきれなさそうに見えます。ここは(1)の誘導に乗るという前提 (メタ戦略) で考えるのと、αkがsinの形であらわされているのでsinの形に合わせればどうにかなるのでは?という考えのもと、ひとまずx→sin^2θと置き換えてみて、αkも具体的に表示してみましょう。

よっぽど勘が悪くなければ、θ=kπ/2nのときにPn(sin^2θ)=0となり、これがどうやらこの問題を解く鍵になりそうだということがわかります。
というわけで(1)のPn(x)についての式を活用してみることを考えてみます。θ=kπ/2nを代入してみると…。

もうお判りでしょうか。左辺が0になるのは常識です。ということは右辺も0になるのですが、sin(kπ/n)は1≦k≦n-1の範囲においては0にならないため、Pn(なんたら)の部分が0になるということがわかります。で、このなんたらっていう数は1/αkを指します。
これは言い換えると、Pn(x)=0はx=1/αk (1≦k≦n-1)を解に持つことを意味します。
(1)でPn(x)はn-1次式だということがわかっていて、今その解がn-1個出てきたので因数定理より

の形で表せることがわかります。
係数に(-1)^(n-1)・Παkを掛けて変形してやると (係数はとりあえずb_nとでも置くとして) 問題文に出てきた形


の形に表示できることが分かります。
最後に係数b_nが常に1であることを示せば証明完了です。
式からPn(0)=b_nとなることがわかるため、Pn(x)に関する式にx=0を代入してやってb_nを特定する方法がありそうです。

(一番簡単そうなのは(1)で出した漸化式にx=0を代入してみることです。


漸化式にx=0を代入すると上のような式が出てきます。
P2(0)=Q2(0)=1であり、恒等的にPn(0)=Qn(0)=1となることが簡単な帰納法によりわかります。これでb_n=1が示されて、晴れてPnが問題文の通りに因数分解ができることが示されました。

以上。最初は結論ありきで逆算してどういう考え方をすればいいのかを突き止めました。少しずるいという感覚があるかもしれませんが、せっかく結論を提示してくれているのですから、そこから逆算して天下り的に考えるのも有効なテクニックです。

(3)
まあ(2)を使いそうです。(2)の因数分解形からΣαkを見つけ出しましょう。
とりあえず展開してやると、xの1次の係数が-Σαkになるということがわかるはずです。つまりPn(x)の1次の係数を特定してやればよさそうです。
(2)で帰納法の活用を諦めたように、(1)で導出した漸化式はPn(x)、Qn(x)全体の形を導くには複雑すぎてやってられません。しかしある1つの係数を求める程度なら何とかなりそうに思えます。何故なら1次の係数は、前の多項式項の1次、0次(定数項)にしか依存しないからです。定数項が1で固定なのは(2)で議論した通りですから、実質1次の項だけを追っていればいいことになります。これくらいならなんとかなるでしょう。

漸化式を活かすため、帰納法の出番です。よく「nというのが出てきたら帰納法だ!」とか意味の分からないパターンマッチングをしている自称数強がいますが、帰納法の出番が来るのは漸化式が立った時です。手法の使いどころを間違えないようにしましょう。

まずP,Qに関する漸化式は以下の通りです。

これについて今回は1次の係数だけを考えればよく、具体的には下のような話の流れになります。

要は新しく1次の係数を表す数列p_k、q_kを置いて、それについて連立漸化式を立てればよいということです。
これらの漸化式は具体的に解くことができますが、今回は始めからp_kの一般項を教えてくれていますから、帰納法で示してやるほうが簡単で良いです。
q_kを求める必要がありますが、下の漸化式をそのまま解いてもいいですし、上にp_kを代入して天下り的にq_kを求めて帰納法で示すとやってもいいです。
もちろん漸化式を連立させてq_kのほうを消してしまってp_kに関する3項間漸化式にして、k,k+1→k+2の形の帰納法に持ち込んでもいいですが、そちらのほうが計算が大変そうなのでやめておきます。ちなみにマイナス忘れないように気をつけましょう。


いくらなんでも解答長すぎです。実際どれだけの解答用紙があったかは知りませんが、さすがにB5用紙4枚分は無いと思いますw
あとこれ書くのに40分くらいかかったのでそういう意味でも非実戦的です。

(1)はとりあえず帰納法でノンストップでいけそうなので、いきなり解答を書き始めたのはいいものの「最高位の係数が0にならないことを帰納法で示す必要がある」ことに気付いて答案書き直しになる人も多かったのではないか (あるいは僕みたいに気付かないか) と思います。後々書き直しが発生すると書いた時間が無駄になるので、簡素な表現を普段から心がけたほうがよさそうです。
それでもB5用紙3ページ分にはなりそうですし、答案を書くのに20~30分はかかりそうです。示すべきことや方針を与えてくれているのは制限時間に対するバランス調整なのかもしれませんが、試験時間が60分だったらしいことを考えると完答はかなり難しいのではないでしょうか。
書かないと数学的にさすがに論理飛躍な部分以外 (細かい式変形や文言など) は飛ばし飛ばしで書いていくのが実戦的だなあという結論になるわけです。
時間無制限だと普通に解ける問題ですが、実際には時間制約が厳しいため難易度はC上位レベルだと思います。

というわけで今回はこれで終わりです。まだ気が向いたらどんどんやっていこうかと思います。